第41話 首謀者
「あの子に感謝しておいてネ☆」
見た目とそぐわない言葉遣いの女の名前は去石強子。バチコーンとでかい目でウインクする姿に初めて見た男は目を奪われるだろう美人だ。しかし、その中身を知った者達は決して近寄らない。綺麗な薔薇には何とやら。毒入りの棘に刺されたい者はいないだろう。たつなはこの女が来ることを快く思ってない。
「…それだけ?」
去石がいるときのたつなは怖い。エステルたんが来てからは特に、だ。私はできるだけ当たり障りない事を言って早く去石が居なくなるように誘導したいけれど、そうもいかない。最近のエステルたんの活躍とそれに伴って増える怪我に怒り心頭と言った状況でたつながどうしてもトゲトゲしい。それも可愛いんだけど。
「にらまないでよぅ! 例えよた・と・え!」
自衛隊が出張ってはNBKの評価が下がって研究費が貰えないなど前線で戦う人間の前で言えばこうなる。
今回のエステルたんとリンちゃんの戦闘は予想された苦戦だった。警察からの通報というのはでっちあげで、実際には自衛隊からの応援依頼だったらしい。
そう、最初から“成体のアンフィスバエナ”の出現情報が手に入っていた。それを伏せて別な案件を私たちに割り当ててから二人に出撃させたってこと。だからたつなが胸ぐらをつかんで凄んでる。
その理由もこの女の研究のためって言えばもうたつなの怒りは天井知らず。人目が無かったらたぶんトゥインクル☆スターライトでこの辺りは破壊の爆心地になっていたと思う。目撃者がいて助かった。
「みちる、帰るよ」
私も去石は嫌いだからどうなってもいいけど、死なない相手に裂く時間がもったいないから大人しく帰る。
去石は戦闘能力がないだけで“不死”の魔法が常時発動している。あいつが爆弾でも持って行って自爆したらいいのに。
「待ってたつな」
エステルたんの治療に使われる薬もあいつの能力を研究することで生み出されたものらしい。人類の為って理由で好き放題するこいつにはきっとバチが当たる。
「うん?どうしたの?」
「りんちゃんにお土産買ってこ」
「…うん、そうだね責任感じてたもんね」
非は無いのにその場にいられなかったことを自責するたつなにも何か気晴らしが必要だ。震える彼女の手を引いて買い物に出かけることにした。
たまに別な人視点です。




