第36話 新人ちゃん
「あ!姐さん!目ぇ覚ましたっすよ!!」
…知らない天井だ。このキンキン聞こえる声はあの新人。姐さんってだ… からだおんもぉぉお!首の角度すら変えられん! 前もあったがなんか久しぶりの感覚。一服盛られて以来?
「いっちゃん!」
姐さん=たつな
「お゛」
喉がひゅーひゅーいって声が出ない。風邪が治ってないってことは今回は早めに起きたってことだな。自分の成長を感じる。治るまで寝てられれば辛くなかったのに。
「む、無理しないで!ようやく熱が下がった所だから…」
たつなは俺の顔を覗き込んで心底ホッとしたような表情を浮かべた。顔を見られて安心。申し訳ないって気持ちももちろんあるが、それはそれ、これはこれ。
「見つめ合ってるところ申し訳ないっすけど自己紹介していいっすか?」
「ち、ちが!ごめん!」
「御結りん!助けに行って助けられるとか許してほしいっす!」
赤い、第一印象はそんな感じ。赤色の髪をツインテールにして少し幼い顔でにっぱり笑っている。ほぼ知らない人に覗き込まれるとちょっと気になるっす。見た目は俺よりちょっと御結のほうが上っぽい。
「23っす!よろしくおねしゃす!」
実年齢で年上だった。りんパイセンおつかれさまっす!
「う、うそ!年上!?」
たつな先輩、それは俺にも当てはまるっす。しかも何回か言ってありまっす。
「リンちゃんって呼んで欲しいっす姐さん!」
姐さんはリんちゃんの方っす。それにしてもこの部屋の最年長さんはノリが軽い。元気なのは良いが、キンキン声が今の頭痛にはつらたん。言葉が出ないから声のボリュームを下げてほしいってのも伝わらない。
「とにかくお礼が言いたいっす!二回も助けてくれてありがとうございまっす!」
二回?あの時初めて見た顔だったはずだ。気のせいじゃなかろうか? にこにこ顔が急に真顔になってちょっと焦る。
「気付く訳ないわよね 女性型の幽鬼に殺されかけた時、あなたに助けられたの 非常時とはいえ投げられた時は痛かったのよ?」
「あ゛ぅ゛」
そんな、声まで変わって! ていうかすごく喉痛い。あの人生きてた!個人情報とかあるんだろうなーと思って聞いてなかったけど、生きてた。一盃森の件もリンちゃんの件も嬉しい。いかん、目から汁が。
「ごめん!無理しないで欲しいっす!」
「それにしても、だいちゃんのサポートだったんじゃ…?」
「それが、リハビリ中に去石って人が来て、変な薬打たれたらこうなったんす 吾味さんにも驚かれたんすけどね“若返ってる”って!」
鉄球コロリン御結りんちゃん参戦。
スタミナは無いが便利そうな魔法だし、…何より飛べる。なぜ俺は?まぁ仕方ない。走って移動できる範囲で出撃した方が早く帰られると考えよう。
というか早く風邪治さないと。
新人さんの名前はお結様に頂きました。お気に入りです。
鉄球コロリン御結リン!語呂が良いんだか悪いんだか…満足してます。




