第22話 撃ち合いってのは高所からやりたいものだ
「ごみさん」
「どうした?」
「こわいです」
「あぁ、恐怖を忘れたらすぐに死んじまうから適度に怖がっておけばいい」
そうじゃない。到着した中学校は戦場だった。いや、今までも戦場だったのだが。二階に陣取ったナーガタイプが見下ろすような形で警官隊と撃ち合っている。見た目だけはトップレスの美しい女性で見惚れそうだが、ショットガンのような散弾をばら撒き警官隊の突入を防いでいる。タメがあると吾味がいっていたのだが、一瞬両手を上に掲げて終わりだ。分かり易いことは分かり易いが…一瞬じゃないか!あれをどうやって邪魔するというのだ?とてもじゃないが立ち回りとかそういうもので何とかなるとは思えない。
「見ての通りだ、警官隊がおとりになってくれているから俺たちは裏から回るぞ」
「ぃやー…」
「よし、ついて来い」
jaではないのだが? 点ではなく面で狙ってくる相手に接近戦とか控えめに言っても無謀だ。まぁ吾味が間違っていたことは無いからえっちらおっちらついて行ってみよう。学校の周りにあまり最適な石が落ちていないのが腑に落ちない。もっとこう、綺麗な形の石とか集めて登校しなかったか? 中学ともなるとしないか。それ以前に登校がないからそんなこともしないか。もっと前に今の子供はそんなことしないのか。
「高低差が何ともしがたいな たつなかみちるが居れば空から狙って貰ったんだがな」
足手まといと言いたいのか吾味よ。俺だって好き好んで空を飛べないわけじゃない。某アニメ映画みたいに空を飛ぶなんて子供じゃなくても憧れるだろう?
「いし、なげてみる」
先程集めた中から卵くらいの大きさの石を握りしめる。
「下からだと射線がどうしたって狭くなる どうせ当たらんだろうが一回投げたら場所を変えるぞ」
言葉は時として人を傷つける。とりあえず二階のバルコニーで見え隠れする悩ましい恰好のナーガを狙う。人の形に近いためどうにも忌避感がぬぐえない。しかし、あんな格好でも人間を食うのに変わりは無い。ただの蛇だと割り切ってよっく狙って投げる。
「うおっ!」
吾味の声が響くが投げた自分が一番驚いた。振りかぶって腕を振った瞬間激しい破裂音が響き、石がバルコニーの鉄筋コンクリートごとナーガを粉砕した。
「ご、ごご、ご、ごみさ」
「落ち着け、落ち着こう そこらの銃よりも強いって言ってあったろう? ここまでとは思わなかったがな…」
恐怖、キャッチボールをしたら人死にが出る威力。というかこのロリータボディ、コントロールが異常に簡単。200mはあろう距離から投げて誤差が10cmくらい。これはプロに転向してもやっていける実力だ。“適性者を最も力が発揮できる状態に変質させて固定する”魔法以外にもしっかりと変化はあったようだ。いずれにせよ、これでもうステゴロとは言わせない。
「柿屋敷君、投石はOK出すまで禁止な、それじゃ移動だ 奴らも馬鹿じゃない、大体の射角からこっちの位置がバレる」
希望が見えたはずがいきなり禁止された。とりあえず移動しなければ。幸い連中の武器はショットガンの様に射程が短い。ライフルの射程からならば一方的に攻撃できる。
「油断するな、あいつらは弾を変えてくるぞ」
吾味が言い終わるか否かのタイミングで俺たちが身を隠していた木が衝撃で揺れる。
「そら、狙撃してきた あいつら目が悪いから余程じゃないと当たらないだろうが注意しよう」
的確に狙い撃ちされたのだがこれで目が悪いのだろうか? 尻込みする俺がじれったかったのか吾味は俺を小脇に抱えてジグザグに移動する。楽なんだがもう少し何とかしてほしい。せめて正面が見えるように持ってほしかった。結構な距離があるのだが、目の悪いはずのナーガと目が合ってかなり怖い。
「まだ石は持ってるか?」
「はい ごこくらい」
「よし、真正面から投げようか」
「ねらわれないですか?」
「撃たれる前に当てればいい」
命がある内に転職したいとナーガの狙撃で土煙を上げる地面を見ながら心底思った。
高所から狙うと視野が広いので強い(確信)
弓なんかですと威力もつきますし良いことずくめ!
問題は連絡路を断たれると干上がってしまうこと。
諸葛孔明「あっちはダメだからな!絶対にやるなよ!?」
馬幼常「ご安心下され!存じておりますとも!!」
的な。




