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ステゴロ魔法少女の受難  作者: 南部忠相
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第15話 決着

死にたくない、死にたくない、死にたくない、いや…違う

死なせたくない?…死なせたくない、死なせない!

「うらああああぁぁぁぁぁぁあああ!!」

大破した74式戦車の砲塔を掴んで人型へ放り投げる。体中がきしみ、手の皮がはがれて落ちたがやればできるものだ。これが俺の魔法ということだろう。たつなに振り上げられていた人型の拳は砲塔を叩き落すのに使われた。

「ホーリーブレイド!」

その一瞬の硬直をみちるは逃さずホーリーブレイドで人型の足を止める。

「トゥインクル☆スターライト!」

合わせるたつなは人型に全力一杯の魔法を叩き込む。まばゆい閃光の後、大爆発を起こしてたつなが放り出された。俺はその閃光に向かって飛び出していた。わかる、奴は死んでいない。まだ終わらない。バキバキと音を立てる体を引き絞って渾身の右ストレートで突っ込む。奴と目が合う。刹那、銃声が響く。

「VAAAAAAAaaa!!!」

「ぁぁぁあああああ!!」

衝突、爆発。


さす吾味。

「みんな、いきてる?」

「…俺は大丈夫だ! 足は折れてるな」

銃を置いてうつ伏せの吾味は叫ぶ。

「たつな?」

「生きてる、だいじょぶ」

ひっくり返って瓦礫に突っ込んでいたたつなが起き上がりながら答える。

「みちる」

「…結婚する」

「みんなぶじ、かった」

お腹が痛い。吾味さんのアシストが無かったら完全に腹をぶち抜かれていた。あの時奴の腕を撃ち、一瞬を稼いでくれたのだ。並大抵の腕と頭じゃ無理だ。さす吾味。

みちるの足止めが無ければたつなのトゥインクル☆スターライトも当てられなかっただろう。トゥインクル☆スターライト。これ以上は言うまい。たつなの魔法のおかげであそこまで接近できたのは誰が見ても明らかだろう。だれか一人でも、いや、一つの動作でもかけていたら死んでいた。

「いいしごと、した」

頭を失った人型はバランスを失い倒れた。再生するんじゃないかと気が気じゃなかったがようやく安心できる。

ぬるい。いや、さむい。ねむい。痛みは無くなった。

「絶対に死なせるな!走れ!」

駆け寄ってくる自衛隊の姿が頼もしい。

「目を開けて!お願い起きて!!」

たつなさんの声が心地いい。騒がしいが俺の意思とは無関係に意識が暗闇に包まれた。




「俺は帰りたいだけだった!違う!俺じゃない!俺が?違うんだ!やってない!」

真っ黒な空間に見知らぬ男が震えながらうずくまって叫んでいた。左手で顔を掻きむしり左目は潰れて血にまみれ、右手の親指を噛み指先が無い。

「違う違う!殺したいわけじゃなかった!俺が!ころ。ころす?こ、はは、ははは!殺した!俺が!どうして!?ころす!」

「だいじょうぶ?」

声をかけた俺が一番びっくりした。こんなのどうやったって声をかけるべきじゃない。ゆっくりとこちらを向く無表情な男の顔がどうしようもなく怖い。

「ひひ、ころ、ころす ころす!ころ?違う、ころ、ころして殺して!殺してくれ!コロス!俺を殺してくれ頼む俺が俺でいるうちに早く!」

わかる。いや、わかった。こいつが誰か。違う、こいつが何であったか。やらなければならないこと。こいつのために。

「じせいのく」

「妻に、愛していると」

「おもてをあげろ」

許せ、赦せ。聞いたことも無い誰かの声が、体が震える程の大合唱が黒一色だったこの空間を埋め尽くして白へと変える。苦痛に耐えながら逃げろと言ってくれた彼も、涙を流しながら声をそろえる。男は安らぎの顔を浮かべた。

「だれかが、みんなが、おまえをゆるした たましいよ、めぐれ」

俺の中の誰か。もしかしたら本来の俺か?わからないがそいつも喚いている。よくやった、と。

「ありがとう」

確かにそう聞こえた気がした。


一章はこれにて終了でございます。

二章に突入したいところですがストックが無く一旦お休みです。

気分転換に始めたお話でしたが、多くの方に読んで頂き小躍りしております。

これからもよろしくお願いします。

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