第1話 壊れた平穏、現れた天敵
事の始まりは2年前、突如として空に現れたもう一つの“月”が発端だった。
現れた非常識の塊に公式見解を出せない国を尻目にメディアやネットユーザたちは某国の新兵器だの宇宙人の侵略だの好き放題に騒ぎ立てた。怪しい話は留まるところを知らず最後にはアルマゲドンだとか宗教に結び付ける者すら現れた。
否定したい行政だったが、先進国の航空宇宙局から発表された観測情報はそれを黙らせることができなかった。
「目に見えているが、月や地球に質量の影響を与えていない。」
異質な存在で有ることは疑いようがないがあらゆる研究機関が解析不能という状況。そのせいで眉唾な噂や憶測が世間に溢れ、まるで祭りでも楽しむかのようにメディアを騒がせた。
ここでようやく6つの国が出資し大規模な調査が行われることになった。国境を越えた各分野の専門家は30名、12の国から選抜された。彼らは国際宇宙センターから3班に別れて出発した。この時第三班の班長兼艦長に任命されたアメリカ空軍所属ヴァージニア・オルドリンは後の雑誌インタビューでこう語る。
計器や赤外線照射にも異常はありませんでした。いよいよ調査を始めようと接近を開始した一班・二班が霧に飲まれるように消えたんです。エンジントラブルで出遅れていた私たちは直ぐに方向転換して全力で離脱しました。命令違反ではありましたがそうしなければ私もここに居ることはなかったでしょう。
この調査船二隻の消失は爆発事故と発表されていたが、オルドリンの告発で事実が露見した。その後オルドリンは暴漢に襲われ命を落としている。また、インタビューをした記者も残りの証言の裏付け中に消息を絶った。分割されて遺された証言の断片を繋ぎ合わせて発売された雑誌は爆発的に売り上げを伸ばし“月”の噂は更に広がりを見せ収拾がつかなくなる。だが、その話が霞むような話題が持ち上がる。
怪物の出現である。
調査に参加した専門家を有していた12ヵ国で正体不明の生物が次々と発見された。それは人口密集地に度々現れ、近くにいる人間を襲い始めた。
戦力やサイズ、形は様々だが共通点は人を襲う事。おとぎ話の怪物を連想させる見た目、個体によっては20x102mm弾すら弾く頑強な体。この天敵に人類は苦戦を強いられる。世界の人口は6割にまで減少し物資は不足、抗う戦力も急激に失われていった。
この戦いはまだ続いている。
こちらが勝手に友だと思っている方からお言葉を頂き、小説家になろうにも持ってきました。
一話2000字満たないくらいなので暇なときによろしくお願いします。