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修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~  作者: 雷然
第一章 運命は貴方を呼んでいる。
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第7話 罪人ムサイと無法島

 「罪人・ムサイ、そなたをウサギ三匹の尊い命を奪った罪、及び竜を呼び町に多大な損害をだした疑いにより島流しの刑に処する。」


 誰だムサイって宇宙軽巡洋艦みたいな名前しやがって、それとも無才か?馬鹿にしやがって。


 とか心の中でツッコミを入れている場合ではなかった。

 「すいません、昨日の話では減刑があるって聞いていたのですけど?それに竜って。俺関係ないですよ? 一歩間違えば竜によって俺も死んでたんですよ。それに俺の名前はムサイじゃありません、ムサシです!」


 「では罪人ムサシよ、貴様は竜によって軟禁をとかれ、さらに竜に効くはずもない投石をしたな?」

 「そして竜はまるでそれが合図であったかのようにいずこかへ飛び去った、目撃者が多数おるのだぞ?おかしいとは思わんか?」

 そうだそうだと他の警備員も口をそろえる。

 「少なくともあやしい男が来た後で竜が来るという状況が出来すぎているのだ、ここに町長のサインもある。この決定は(くつがえ)らん」


 たしかに客観的に考えて俺と竜を結びつけるのは仕方がない、全く俺に身に覚えがないが。

 とはいえどうしようもなさそうだ。下手に逃げたりするとアヤカに迷惑がかかるだろうし、ここは大人な対応が必要だろう。


 「解った、島流しだな。それで詳しいことを聞かせてくれ、その島には誰かが連れていってくれるのか?近いのか?人が住んでいるのか?」

 「今から行く、来れば解る。少なくとも安全に島まではつける」

 あまり詳しくは教えてくれないようだ。


 アヤカが言う。

 「島流しはあんまりよ。」

 いいんだアヤカ、島がたとえ無人島でも俺ならレベルとスキルでなんとかなるかもしれない、ここは逃げて好転する場面ではなさそうだしな。

 「アヤカさんお世話になりました。ではさようなら」


 言葉短く告げた俺は港まで連れて行かれる、手枷などはないし周りの警備員は三人だ、その上平和ボケしているのか警備員は相変わらず丸腰だ。

 逃げるのは容易かったが、そのまま船に乗ることにする。

 さらば最初の町。めざすは『島』



 島が見えてきた。俺は船に備え付けられた丸太(なんと無加工である)にしがみつくように命じられ、おとなしく従う。


 あとは丸太にしがみついていれば無事に島までつくそうだ。

 てっきり無人島かと思っていたが、何年かに一度発生する島流しの刑で罪人を送ることもあり、島には罪人が何人かいるそうだ。

 もっとも町の浅瀬に島流しにされた人間と思しき腐乱死体が流れ着くこともあり島そのものが平和だとは町では考えていないらしい。


 また島流しをした時点で刑は完了しており独力で町まで戻ってきた際にはお咎めはないらしい。今まで生きて戻ってきたものはいないが。

 そういったことを船のなかで教えてくれた。

 何しろ船の中はすることもなく暇だったので兵士達も気前良く話してくれた。



 そうして海に落とされた丸太と俺は波にさらわれて島に流れ着いた。

 下半身がビチョビチョで気持ちが悪い。


 俺の乗ってきた船はすでに反転し帆に風をうけて遠ざかりはじめた。


 振り返り視線を島に戻すとさっそく島の住人がいた。野郎ばかり五人もだ。

 

 五人はニタニタ笑いながら距離をつめてくる。

 

 「よう、若いの、どうした何をやらかした?盗みか?強姦か?それとも……」

 男が拳を振りかぶる、その拳が俺の頬を(とら)える。妙に冷静な自分がいる一方で恐怖で身体は動かなかった。

 衝撃と驚きにより尻餅をつくが痛みはほとんどなかった。ただ驚きで目じりに涙がうかぶ。

 「これか?」

 男が俺を見下して拳を見せ付ける。

 「おい! お前ら、丸太を回収しとけ」

 どいつもこいつも人相が悪かった。こいつらと比べたら俺は美少年だ。

 「おい、立て新入り。お前にも仕事がある」

 四人の男が丸太を担いで島の奥に入ってゆく、こぶし男(ゲンコツヤロー)は俺の後ろに立ち、それに続くように促す。


 ああ面倒なところへ来たな。アヤカとまたスワベ食べたいな。そんなことを考えながら俺も島の奥へと進んで行く。




 行き着いた先には(さわ)があり、洞窟があった。ここが悪党達のねぐらのようだ。

 「新入り、オレ様の名前を教えてやろう、よく聞け。我こそは偉大なる炎の化身カシム様である。この無法島ではオレ様がルールだ。なぁに心配するな。言う事を聞いてれば悪いようにはしない、ひとまず後のことはあの背の高い男に聞いておけ」

 カシムとやらが指を指す。背の高さは正直どれも似たようなものだったが丸太を降ろした男達からひとりがやってくる。あの男から詳しい話を聞くとしよう。


 「うへへっお前いくつだ?見た感じ18かそこらか?」

 80過ぎだと答えたらどう反応するだろうか?流石に未成年に見られるのは(しゃく)にさわる・・・。

 若返ったから仕方ないのだが年齢のせいで酒も飲めないのは困るな。

 こっちの飲酒可能年齢はわからないが。それ以前に酒はあるのだろうか?


 「いやハタチだ。」そう答えておく事にする。

 「どっちにしろガキだな、お前の仕事は雑用全般だが、主だった仕事は狩りだ、おっと今までの常識は忘れろ、ここは無法島だ。いつからか俺達の間ではそう呼んでいる、俺達は農業をしない、それに昔起きた大規模な山火事で果実は取れなくなった、まぁ元々この島にはたいしてスワベは生えてなかったがね、だから狩りが必要になる。」

 願ったり叶ったりだ。

 「狩りは得意だ、というかそれでこの島に送られた」

 「はー変わり者だな、まぁいい行け。嗚呼(ああ)武器は必要か?必要だとしても新入りのお前には渡せないがね。それと日没までそう長くはない早く行って早く取って来い」

 「不要だ」

 それだけ言って沢を離れる。


 確かに山火事があったようだ。この辺りには大きめの木が存在しない。

 島に大小二つの山があるが大きめの山は土色が目立つ。

 カシムは炎の化身とかなんとか言ってた、なにか関係があるのかもしれない。

 まだ木が生き残り、森と呼べる方向へ進んでゆく、さーて狩り(レベルあげ)の時間だ。

 レベル4で手に入れたスキル[コントロール良]の威力は絶大で獲物が動いていない瞬間ならば投げた石が寸分(たが)わず命中する。


 ウサギ六、鳥一羽をしとめたところで狼煙が目に入る。暗くなってきたし今日の狩りはここまでだな。


 持ち帰った獲物を見てカシムが驚く。

 「大猟(たいりょう)じゃないか、お前、魔法でも使ったのか?」

 「いや魔法はつかえない、石をなげてしとめたんだ」

 「そうかそうか、偉大なるオレ様ではないのだから魔法が使えないのは当然だな、ハッハッハッ新入り、あの炎を見ろ」

 カシムが焚き火を指差す、これが先ほどの狼煙の正体だろう。

 「こんな島でなんの道具もないと炎を作り出すのは非常に困難なことを知っているか?」

 カシムの指先に小さな火が灯る。

 「しかしオレ様は生まれ持った奇跡によって炎を作り出すことができるのだ!オレ様がここにいたことに感謝するんだな、そうでなくば貴様らはこんな島では長く生きれなかっただろうハッハッハ」


 後半は俺ではなく他の悪党達に言ったようだ。


 「カシムさん凄いですねー。持っている魔法は火の魔法だけですか?それと作り出すことが出来る火のサイズはその指先のものが限界ですか?いや実に素晴らしい魔法ですがカシムさんならもっと凄いのできるのかなーって?」


 媚びて聞いてみる。


 「指から出る魔法がこの大きさなだけで他に移せば問題ない。その()き火だって俺の炎だ。もの島すら燃やすことの出来る俺の炎があれば他の魔法なぞ必要ない」


 なるほど、指から小さな火しか出せないようだ。俺の中でカシムの脅威度が一気に下降する、コイツはさほど注意しておかなくてもよさそうだ。

 暴力的な性格に加えて、威力の高い魔法を所持していていられたら恐ろしい。

 とは言え、火は便利だ。調理目的以外にも寒さを防いだり、灯りとして使用したり、文明には欠かせない道具だ、せいぜい、おだてて使っていくとしよう。


 悪党達と会話をしながら肉を食う。

 やっぱスワベのほうが旨いな。

 悪党達は盗みや放火といった犯罪歴を自慢し、死んでいった島の住人の話をした。興味がない。

 死因で面白かったのはハチによるものだ。

 何人かはハチに刺されて死んだそうだ。

 対応として島ごとハチを燃やしてからはハチを見なくなったこと。その他いくつかの情報を得る。

 この島にはいくつかの町から犯罪者が送られてくること

 女の犯罪者を慰み者にしたりもしたが今は誰もいないこと。

 半年前に来た若い女には犯す前に逃げられてしまったこと。


 実に下らない話ばかりだ。

 こいつらと協力して生活していかなければならないかと思うと反吐が出る。レベルを上げてさっさとおさらばしたい、今日はレベルを上げられなかったが明日ならば時間も長く取れるしなんとかなるだろう。


 翌日、沢で水浴びと洗濯をする。これまで寝巻きの作務衣(さむえ)を着ていたがかなり汚れてしまっている。

 パンツ一丁の俺を悪党どもが遠巻きに見ている……悪寒がする。

 こいつらよほど溜まってるようだ、やめろ若くて美しくても俺は男だぞ、そして貴様らより確実に強いはずだ。今日もまたひとつ強くなってやる。


 着替えもないので濡れたままの作務衣を雑に絞って沢を離れる、動いてれば勝手に乾くだろう。


 虫、リス、ウサギ、色々な鳥、に石を投げつけ殺してゆく、木の枝も試しに投げたが、真っ直ぐ飛ばないし、森の障害物にぶつかりやすく使い物にならなかった。

 雑に命を刈り取りながら昨日カシムに殴られたことを思い出す。

 なんで俺があんな若造に殴られなければならないのか。

 「カシム」小さな火しか能のない悪党、自分を内外に大きく見せようとする小心者

 ふん、俺とそうかわらんではないか。俺だって俺が一番偉いと思い込みたい。

 しかし持っている能力は俺の方が有用だ。


 『テレテーテーッテテレー♪』そうしてその日俺はレベル5へ生まれ変わり、新たなスキルを得る。


「スキル[小さな灯り]を獲得」


 効果は名前のまんま、小さな灯りを指先に灯すというもの。しょうもねぇ。






レベルあがりずらくなってきました。



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