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修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~  作者: 雷然
第一章 運命は貴方を呼んでいる。
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第6話 ウサギを売りたかっただけなのに。

レベル4で覚えたスキルは[コントロール良]です。

ものを投げるときのコントロールが良くなります。

 ウサギを持って町に戻った。

 ウサギの肉が売れるかもしなれいと思ったからだ、それが失敗だった。


 町はまだ混乱が続いていたが衛兵は城門にいた。

 衛兵が言う。

 「おいお前そのウサギはどうした?」

 格好より先にウサギのことを聞かれた。

 「森でとってきました」

 「死んでいたのか?三匹も?」

 「いえ、自分で」

 衛兵の顔が険しくなる。

 「それはつまり殺したということか?」

 「……ええ、そうですが何かまずかったのでしょうか? もしかして誰かの所有地で、勝手にとったらいけないとかそういう……。」

 俺がウサギを殺したことを認めた瞬間、二人いた衛兵のうち一人が走って門の横の詰め所へ走っていった。

 残った衛兵と少し話をしている間に詰め所から四人の衛兵が出てきて俺はとりかこまれる。

 「貴様、なんの為にウサギを殺したんだ?」

 素直にレベルアップの為とはいいずらい。

「売れるかもしれないと思いまして、もしくは自分で食べるか」

「ウサギを食べる奴はいない。買取は出来なくはないがそれも毛皮の為だ」

 なるほど、ウサギを食べる風習はなく、殺したそのものがマズイらしい。

「すいません、このあたりの風習に詳しくないもので」

「貴様どこから来たのだ!?」

 来るべき質問が来た、この質問が来たときに、どう言うか考えてはいたがいい案は浮かばなかったので正直に告白することに決めていた。


「ずっとずっと遠くです。起きたら森にいて……信じられないとは思いますが本当なんです、突然森のなかにいて」


 衛兵の一人が言う

「木こりのアヤカが連れてきていた外国人というのはお前だな。中央の寄宿舎にいたはずだが?」


 俺のいた建物は寄宿舎だったようだ、だから少し大きかったのかな。

「ええですが竜が建物を壊してしまったので竜から逃げようと思い森まで走りました、自分が生きる為にやむなくウサギを狩ったのですが、冷静になってからウサギをどう調理してよいかわからず、このように戻ってきた次第です」

 かなり言い訳がましいが、一応理屈は通るはずだ。

 こちらの事情は説明できたと思う、衛兵達は話し合い、最終的に一人がこう告げる。


「貴様の事情はわかった、しかし生き物を殺生することはこの国では罪となるゆえよく覚えておくがよい、本来ならしかるべき刑罰を下すところだが事情が事情である、ある程度の減刑は考慮されるであろう。ついては刑が確定するまで身柄の拘束が必要ではあるが寄宿舎が倒壊した為、貴様の受け入れ先はない、その他の入居施設も竜の一件で怪我人であふれかえっておる。よってここは木こりのアヤカを身元引受人とし今日のところはそこにおるが良い、明日後に引き取りにくる。断じて逃げようなどと思うな、その時はアヤカにも咎がいく。尚ウサギは証拠としてこちらで預かる」


 そうして俺は連行され、アヤカに引き渡される、事前に電話でもしたのか衛兵とアヤカは簡単なやりとりをしただけで衛兵は去っていった。


 アヤカは困ったような笑顔を浮かべて視線を向ける、俺はまず最初に言うべきことを言っておかねばならない。


「アヤカさん、この度は誠に申し訳御座いません」


 犯罪者の他人を1日とはいえ引き受けるのだ、やはり謝罪は必要であろう。


「え? ムサシ? 言葉がわかるの? あーよかった明日までどう接していいか悩んだわ」


 アヤカはお人よしな感じもするが、いい人だ。


 それからアヤカの自宅件作業場にて詳しい事情を説明した。

 俺が異世界から来たこと。急に言葉がわかるようになったのはスキルという能力を身に着けたからだと説明しておいた。


「ふーん良くわからないけど魔法みたいなものかしら、なんにしても、お話が出来てよかったよ」


 この世界には魔法があるらしい。


「なんにしても生き物を殺してはだめよ、よほどの事がないと重い罪にとわれるわ」

 アヤカからこの世界の常識を教わる。

 この世界ではあらゆる生き物を食べる習慣がないこと、穀物と野菜と果物を食べること、国は平和であり戦争は300年以上おきていないこと。

 国は平和なので兵士は町にはおらず、町や村は自警団や警備員で十分なこと。

 竜などの大型生物は人里にめったにこないこと。

 町の脅威となるのは不作や狼ぐらいであること。その狼も森に十分な獲物がいるので町まではこないこと。

 この町は海に面しており、森の恵みと貿易で栄えていること。


 想像していた異世界とは違い、ややテンションが下がってくるが念のために聞いてみる。

「魔王やモンスターなんかはいないのか? ここではなくとも世界のどこかで」

「私の知る限りはいないはずよ、もう3000年ぐらい昔に魔王が滅ぼされて以来ね」


 どうやら俺が来るのは3000年は遅かったようだ、っていうか魔王いたんだな。

 これではレベルをあげて一旗あげる、みたいなのは難しそうだ。


 アヤカと一緒に食卓を囲む、誰かと一緒のご飯なんていつぶりだろうか、それも弟の家族以外の人となると……。


 今日のディナーはパンとスープそして大きい果実。りんごと桃を足して2で割って大きさだけ2倍にしたような果実だ。皮もむかれず皿にそのまま置かれてある。

「これどうやって食うんだ?」

「そのままかじりつけばいいわ、焼いても美味しいけど手間だしそのままでも美味しいわよ」

 ふむ……今は歯も丈夫なはずだし歯並びも治っている。

 確認はしてないが、ホワイトニングも完璧な気がする。

 このまま噛り付いても平気だろう。おそるおそる、かじりついてみる。

 リンゴや桃の味を想定していたが全く異なった。肉だ。肉の味なのだ。 

 それでいてまったく獣臭くなくフルーティーな香りと甘さがある。


「うまーー」

「でしょー」


 それで一番良い皿に置かれてあるのだ、動物の肉を食わないのも納得の味だった。

「これは森で採るのか?」

「森でも取れるけど、どの家も庭に一本はこれの生る木を植えているわ、スワベっていうのよ、あなたの世界にはなかった?」

「いやない、見聞が広いほうではないが、こんなうまい果物があれば絶対に聞いたことがあるはずだ」

「そうなの、このスワベって言うの。伝説によると魔王を倒した勇者が広めたらしいわ、ひょっとしたら貴方も勇者と同じ世界からきたのかもと思ったけど違うみたいね」

 そんな、たわいもない話をして夜更けになり、就寝する。当然だがアヤカとは別室だ。残念ではあるがこのままこの町にとどまって生活することになれば、いつかはいい感じになるやもしれん。一人でそう考えるとニヤニヤしてしまう。

 いかんいかん、能天気なことばかり考えては、明日は罰が言い渡されるのだ、減刑してくれるみたいだが、どんなものだろうか、町の清掃ぐらいだといいな。


 そして翌日、やってきた衛兵……ではなく警備員から刑罰が宣告される。



「罪人・ムサイ、そなたをウサギ三匹の尊い命を奪った罪、及び竜を呼び、町に多大な損害をだした疑いにより島流しの刑に処する」


警備員はムサシの名前を間違えました。

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