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修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~  作者: 雷然
第四章 聖騎士と修羅と
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第40話 リバイバル

 俺は死んだ。

 

 肉体も魂も、俺を俺足らしめる全てが、世界に霧散してゆく。


 記憶も、自分が誰だったかさえ、崩壊してゆく。


 終わりの中で、音が聞こえる。


 最後にあの音が、聴こえている。頭の中で――


 


 ――白衣の男が研究に没頭している。これは地球でのの記憶か。

 昔は、あの隣に居たな。

 結局は孤独を選んでしまったけど。



 こっちの世界では、ずっとキャサリンが居てくれた。それ以前はアヤカが。


 何も知らない俺にとても良くしてくれた。

 死んでいい人ではなかったはずだ。


 そもそも死んでいい人ってなんだ? なんで俺は人を殺してきたんだ?


 バカか、俺は。


 今更後悔とか、懺悔(ざんげ)とか、ありえないだろ。

 愚かが過ぎる。


 だけどせめて、アヤカだけはなんとかしてあげたい。



 お前()が殺したのにか?

 なるほど、確かに。

 ――そうして、その願いが失敗に終わったことを知る。



 頭の中で音が聞こえる――


 ファンファーレだ――


 喜びのメロディだ――。


 

 レベルはアヤカの死を祝福するというのか? 


 お前はアヤカが死んだことを笑うというのか?


 俺が、人を殺すのがそんなに愉快か?


 『[スキル:再上映(リバイバル)]を獲得』


 レベルってなんだ? 

 


 

 世界に霧散した情報が、再構築される。

 無数のピースが、ひとつのパズルを作るように。

 砕け散った何かが、逆再生されるように。


「あはははははははははは、くはははははははははははは、あーはっはっはああああああああああ」

 可笑しい、おかしい、オカシイ、恐ろしい。 


 肉体が、精神が、魂が、命が、全てが元通り。

 アヤカが死んだ事を除いては――。


「何なのだお前は?」

 

 再生した俺を見た騎士が言う。

 

「地獄の鬼を殺しすぎてな、ちょっと現世に送り返されたのさ」


 先ほどまで俺が死んだことを喜んでいたのだろう、兵士達は兜を外していたり、その場に座り込んでいたりと、リラックスしていた様子。

 臨戦態勢には程遠い。


 軽く跳んでクレーターから出る。黒騎士の横に静かに着地。

 兵士達は慌てて、剣を向けながら一斉に後退した。


「ぶぁありん」

 キャサリンは涙と鼻水で顔が凄いことになっている。アヤカと比べると美人と言うより、愛嬌がある顔だ。確かにお似合いなのかもしれない。


 俺を前に、後退しなかったのは膝をついた黒騎士と聖騎士だけだ。


 ユリウスが聖剣を構える。

 その焔のような視線を、外しながら言う。

「死んだのか? こいつは」


「ああたった今、息を引き取られたところだ。これから国葬の準備をせねばならん。お前が生きていては、先代もゆっくり寝ていられないだろう。今度は私がお前を……」


「いい、いいそんなの」

 やれやれと手を振って、ユリウスの発言を遮る。

「ユリウス、今の見てなかったのか? 俺は死んでも蘇るぞ」


 ユリウスが歯を食いしばる。

「……修羅め……ひとつだけ答えろ、アヤカは先代の魔法で消えたのか? それともお前が」


「俺だ、間違いなく俺が殺した。だから俺が生きている」

 

「あの子は! アヤカはお前を想っていたんじゃないのか? なのにお前はその子を殺して笑うというのか? お前に人の心はないのかぁ!」


 俺に対する恐怖より怒りがまさったのか、ユリウスは俺の胸倉を激しくつかむ。


「人の心だぁ? 俺は修羅よ。修羅に人の心なぞ、ありはしない!」


 ユリウスの手を跳ね除けて、今度は互いに(にら)みつける。

 コイツの顔をこうしてみるのも、もう何度目のことだろうか。


 そのままお互い動かなくなる、ユリウスが持つ、魔素の量が跳ね上がっている。

 これが継承か。なるほど帝王が、我こそが国そのものだと言っていた意味がわかる。


 ユリウスが言う。

「貴様は、何をしにこの国へ戻ってきた」


「わかっているだろう? 愚かな人類を皆殺しにする為だ」


 ユリウスは、今にも飛び掛ってきそうだ。

 俺は背を向けて、キャサリンへと歩き出す。


「しかし、(きょう)がのらん、死にたくなければ俺のことはもう忘れろ」


「だぁりぃぃん、アヤカが、アヤカちゃんがぁ」

「わかってる。ずっと一緒だ」


 ユリウスは待て、と言いそうな顔のまま無言を貫いた。


 誰も……誰も言葉を発しない。

 

 涙で眼を()らしながらも、キャサリンは来たときと同じように、バイクもどきに跨り、俺もその後ろに続いた。


 

 二人を乗せた黒い魔道具が遠ざかる。

 民が安堵し、新王が修羅を追い払ったのだと騒ぎ出してもユリウスは一言も発しなかった。


 愚かな人類を皆殺し、か。

 再び冥府(めいふ)に送ろうと、対峙(たいじ)した時から冷や汗が止まらない。

 比喩ではなくあれは鬼だ。悪魔だ。

 人類の限界を完全に超えている。人が太刀打ちできる存在ではない。

 あれが、殺せば殺す程強くなるという能力なのか?

 

 死ぬ前と黄泉帰ってからは別人ではないか。 


「れべる……か」

 やっと一言、言葉が出る。まだ先もあるのか? いったいどこまで?


 考えても人の身である我には関係のないこと、帝国の新たな王。第四十七代皇帝、ユリウス・リアン・フォン・ノール・ロアーヌは最初の王の仕事にとりかかる。

 憧れの黒騎士、前皇帝ミカリエルの葬儀を。




ムサシのスキル一覧 レベル17から32

[魔法診断]

[疲労軽減]

[隠蔽]

[スキル診断]

[分身]

[食物判定]

[冷気耐性]

[毒耐性]

[熱耐性]

[植物作成]

[即死耐性]

[レベルダウン耐性]

[嘘を見破る]

[武器強化:弐]

[魔力感知]

[再上映]

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