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修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~  作者: 雷然
第四章 聖騎士と修羅と
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第38話 継承

 塔の外壁に埋まったまま考える。

 

 やっと歯ごたえのある奴が出てきたと。

 この国を出てからずっと、弱いものしか狩ってこなかった。

 レベルを上げるには大量に殺さないといけないし、達成感も薄味だった。


 戻ってきて、転位の騎士と昔闘技場で闘った男を、殺してからは楽しかった。

 レベルは効率よく上がるし、騎士連中はひとりひとりがそれなりに動ける。

 その楽しい遊びも、ユリウスというメインディッシュのあとは小物ばかり。

 だからせめて、じっくり味わって終わりにしようと思った。

 手を切断したユリウスを、一度は見逃したのもその為だ。

 回復系の魔法を使える奴がいて、よかったとすら思った。

 最後は初めて見せる技。“居合い”で苦しませず、終わらせてやろうと思った。

 楽しいひと時をくれた、せめてもの慈悲(じひ)として。

 それがなぜこんなことに。

 

 王だ。

 あの黒騎士は帝国の王様らしい。

 なんだあの馬鹿げた力は。


 レベル30で手入れたスキル[武器強化:弐]は完了までに兎に角時間がかかった。

 だから仕方なくスキルを使った後、動かすことも使うことも出来なくなった刀を、キャサリンにあずけて、キャサリンの分身と一緒に帝都見学でもしようと思ったのだ。


 別に強化の完了を待たずに、暴れだしても、大丈夫だとは考えていた。

 アヤカと再開できて、話が弾んだおかげで、死刑執行の日まで機会が来なかっただけだ。

 結果的にそのことが幸運だった。



「細いが、良い剣だな、もろとも粉砕してやろうと思ったのだが、命拾いしたな」


「うるせーよ、つーか嘘つきやがったな」


「ふん、最初から冗談だと思っていたから、お主も笑ったのだろう」


「ぶっ殺してやる」


 気づけば黒騎士はすぐそばにいた。先ほどの一撃といい、こいつは静かすぎる。

 殺気もないし、前動作もない。

 重量級の武器だからこそ『ふり』は大きくなるというのに。

 

「お主は、剣に似合わず、荒々しいな」

「ハッそういうお前は、デカイ剣のくせにやたら静かだな、おかげで反応が遅れる、なんだぞれ? それがお前の魔法か?」


「はっはっは。昔から同じようなことを言われるわ。これはな、小僧、技術だ」


 ……嘘はついていない。スキルに嘘の反応は無い。

 つまり黒騎士の剣技は達人級。少なくとも俺以上ということだ。

 ならばどうする? 確実に勝つには、やっぱレベルを上げるしかないな。 

 あと二つ。せめて一つでも上げれば有利とみた。


「そろそろ壁から出てきてくれんか? これ以上城を壊すと大臣から叱られそうだ」


「ッチ」

 のそり、のそりと壁から出る。壁からは離れすぎないように。


 本気を出してやる。

 本気で逃げて騎士(経験値)を刈る。


 それでレベルアップ(俺の勝ち)だ。


 [武装作製(クリエイトアームズ):弐]手の甲に隠して切羽をつくる。――投擲(とうてき)


 そして疾風となり走る。――だが。


「ふん!」

 なんなく片手で切羽を弾いた黒騎士が、身の丈を超える剣を振るう。

 直撃は避けるものの足元が深くえぐられる。

 切り裂かれた地面が爆発し、衝撃とともに宙にほうり飛ばされる。


 天地の逆転した視界の中で、黒騎士が急速に拡大。互いに上段から振り下ろした一撃が激突し、黒騎士は天空へ、俺は地上へと反発した。


 騎士連中までの距離はやや離れているが、それは黒騎士も同じ。

 

 走り出した俺を見て、こちらの狙いを察知したのか、黒騎士も走る。

 鎧のぶんなのか、早いのは俺だ。


 ユリウスと一緒に俺を取り調べしていた女騎士を狙う。

「死ね」


「させるか!」

 間に入ったユリウスが盾で防ぐ。


「なら……お前から死ね!」

 ユリウスの腹を蹴り、反動で開いた間合いで身体と刀を加速させる。

 

 一合……二合、どこにそんな力が残っていたのか、必死にユリウスは俺の攻撃を(しの)いでいく。

 

 殺気はない。しかし静かではあるが背中にプレッシャーを感じた。

 近い!


 反転しながら、目標を確認もせずに横薙ぎ。


 大剣と刀が火花を散らす。

「後ろから斬ってやろうと思ったのにのう」


「てめぇに騎士道はないのか?」


「あいにくだが帝王なのだよ、我は!」


 上から()し掛かるようにして、(つば)競り合いの形ととられる。


「ユリウス!」

「はいぃ!」


 背後から襲いくる聖剣。

 思考することは死に繋がる極限状態。咄嗟(とっさ)(ひらめ)き。

 

 手が刀を放した。

 死ぬ気か俺は? 

 ためらう暇はない。閃きを全力で具現化する。

 手を離しながら、一瞬で黒騎士の背後をとった俺は、腰の下あたりを抱きしめて、黒騎士を持ち上げる。

 

 何かをさせる暇など与えん!

 勢いよく上半身を後ろに倒し、ブリッジの姿勢で黒騎士を頭から地面に突き刺した。

 

 轟音。

 地響きの中で刀を拾う。かなり危険な賭けだったがユリウスは反応出来なかった。俺の勝ちだ。


「てめーも寝てろ」

 ユリウスの(あご)に手をあてながら、アキレス腱あたりでユリウスの両足を刈る。

 この時、頭を地面に叩きつけるのを忘れてはいけない。


「さて、狩りの続きだ」

  

 帝都の各所に配置されていた騎士や兵士は、全て、城に集結していた。

 短く息を吐いて呼吸を整える。

 

 女騎士の首をはねる。――足りない。

 男の頭部を握り潰す。――足りない。

 突撃してきた兵士達を解体する。――足りない!


 背後で地面がめくれる、ボコッという音。


「ぺっぺっ。土が口に入ったぞ。今のはなんていう技だ」

 兜を脱ぎ捨てた黒騎士が言う。


「さぁな。俺も詳しくないんでね、バックドロップだかスープレックスだか、多分そんなのだ。それよりもう少し寝ててくれませんかね?」


「ふざけるな!」

 俺の返答に激怒したのはユリウスだ。こいつも起き上がってきた。


 二対一の斬り合いが始まる。


 体力と意思が削られてゆく。二人ともダメージはあるがそれでも不利だ。

「ユリウス様!」

「帝王様!」

 闘いを見守る騎士や兵士、帝国の民が次々に二人に声援を送る。

「修羅なんかやっつけろ」

「王様頑張って!」

 帝王の大剣と蹴りの二段攻撃。水切りの小石のように地面を弾んでとばされる。


「――負けないで、ムサシ」

「だぁりーん!」


 !!……嗚呼。解ってる!


 杖のように大剣を地面にさした帝王が宣言する。


「第四十六代目ロアーヌ帝国皇帝、ミカリエル・セレスバッハ・フォン・ラフタシール・ロアーヌの名においてつげる。次期皇帝をユリウス・リアン・フォン・ノール・“ロアーヌ”とする!」


 

ムサシのスキル一覧 レベル2から16

[レベル感知]

[言語理解]

[コントロール良]

[小さな灯]

[暗視]

[武器作成:壱]

[武器強化:壱]

[武器作成:弐]

[手入れ・組み付け]

[武器作成:参]

[武器作成:肆]

[武器作成:伍]

[武器作成:陸]

[武器作成:漆]

[サキナス]




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