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修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~  作者: 雷然
第二章 温もりと殺戮と
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第16話 人形使い

あらすじ

本戦トーナメントが始まった。1回戦の相手は人形を使って戦う。

 今日は出番がある。これに勝つと残りは毎日試合がある。

 対戦相手は人形使い。(いにしえ)の魔法技術の遺産でもあり、その人形を現代の技術と融合させ、少量の魔素でも動かせるようにしたものだ。

 その見た目は台湾の人形劇である布袋劇(ほていげき)(プータイシー)を連想させた。

 サイズは全然違うが。

 いまそいつが、振り下ろした長剣を地面に叩きつけていた。

 土と金属の間で不協和音が鳴り響く。

 とっさによけていなかったらヤバかった。

 あれは今のレベルで受け止められる攻撃じゃあない。断じて。

 2撃目、今度は先ほどの一撃でいくぶんか曲がった長剣を水平に薙ぎ払ってくる。

 信じられないパワーだ、(かろ)うじてナイフで受け止めるが軽々と横に弾き飛ばされる。


 土煙をあげながら低い体勢で着地した俺を追撃しようと人形と人形使いが走ってくる。


 人形と人形使いの間は不可視の糸でつながっていて有効距離が存在した。そうとしか考えられない動きだ。

 なぜならば先ほど見せた速度なら人形がもう目前のはず、人形と人形使いは同じ速度で走ってきていた。

 そうしてもうひとつ。

 人形使いが手と指を動かす。たったそれでの動きに巨大な質量をもつはずの人形は大きく跳躍し、俺の頭上から降ってくる。

 確定だ。指に糸が付いているはずだ。魔力によるものなのか俺には視認できないが。


 「くそがぁ!」

 前方へと逃れながらナイフを人形使いに投げつけた。

 人形を相手にするより本体を倒すプランだ。

 キンッというわずかな音と共に望みが打ち砕かれる。


 いかなる理由か、寸前まで空中にいたはずの人形が主の前に舞い戻り、俺の投げたナイフをはじき飛ばしていた。


 「嘘だろぉ」


 人形は背中に手を回すと長剣をもう一振りだしてきた。

 二刀流となった人形は危険な威力を孕んだ連続攻撃を繰り出してくる。


 背を向けて逃げた、無手、無策で勝てる相手じゃない。


 人形の力は凄まじい、普通の人間なら初手でミンチになるハズだ。

 こいつ殺したら失格というルール忘れてるんじゃないだろうか?

 逃げながら叫ぶ「てめぇ殺したら失格だぞ!」


 バガァァン!


 曲がった長剣の一撃に地面が(えぐ)り取られる。

 「ちゃんと半殺しでとめますやさかい大丈夫でっしゃろ」

 エセ京都弁で返事が返ってくる。俺の[言語理解]が壊れたのだろうか?

 半殺しで止まる威力ではなかった。

 というか半分が死んだらそれは人間として終わっている気が……。


 さらに距離を離す、完全に射程外まで。

 とはいえ限界はある、観客席との壁まで逃げた俺は人形に向きなおった。


 さてどうしたものか。

 人形使いと俺では走る速さにかなりの差がある。このまま人形使いの魔素が切れるまで逃げ続ける作戦もありえた。


 どうする? このまま逃げ続けるか?


 いや、俺ならやれる!

 短い自問自答の後に覚悟を決める。

 スキル[武装作製(クリエイトアームズ):壱]

 両手に棍棒を持ち、こちらも二刀流となる。

 そしてさらにレベル8で手に入れたスキルを使う。

 [武器強化:壱]

 両手の棍棒が鉄のように硬くなる。


 走る。先ほどまでの逃走とは反対に人形に向かって全速力で突貫する。

 風となり矢となった俺に人形の右手から冷徹な一撃が放たれる。

 いくら強化したとはいえ棍棒(こいつ)じゃ防ぎきれないだろう、斬れなかったにしても本体(おれ)が飛ばされるか、押しつぶされてしまう。


 長剣の腹に棍棒をそえて受け流す。それしかない!


 左手の棍棒で長剣の腹を叩き、外側へ押し流す。

 払われた長剣がもう何度目になるかわからない爆音を地面に炸裂させる。

 それと同時に左手の長剣が俺にせまる。

 右手の長剣から間髪いれずに放たれた一撃は地面スレスレを()った直後、空中に逃れようとする俺を追走した。

 身体を(ちぢ)まらせながら、右手首を180度回転させて棍棒に体重を預ける、ちょうど波乗りのような体勢だ。

 ぎゃりりり! 足の下で長剣が棍棒に食い込む。受け流し失敗だ。

 そしてこのままでは負けてしまう。

 右手の棍棒を咄嗟(とっさ)の判断で諦め、長剣の腹の上を跳ぶ。


 連撃を抜け、人形使いまでの距離をゼロにする。


 「まだだッ!」


 人形使いが腕を外側に大きく開く、人形が体勢を変えないままバックで高速接近。当然だが人間の動きではなかった。

 巨大な背中が俺に追いつくが進行方向が同じだったこともあり、衝撃はさほどでもない。

 膝や関節を駆使して衝撃を殺す。


 人形使いは大の字のまま動かない、このまま人形の下敷きになるつもりか?


 「ああもう面倒くせぇ!!」


 見殺しにしても良かったのだが、深く考えもせず人形の背を蹴る。



 抱きかかえた人形使いは華奢で軽かった。

 「なにする……」

 返事をしている暇はなく、再度跳躍。

 その位置へコントロールを失った人形が落ちる。間一髪だった。


 「なにするでありんすか」


 「ロリは守備範囲外だ」


 まったく質問に対する回答にならない返事が口から出た。

 「浮気者ーー!」客席からキャサリンの声が聴こえていた。

 何勘違いしてんだか。


 試合はロリの人形使いが降参して終了した。

 本人曰く「私。合法ロリだから。タッチオッケーの方のロリだから。とは言え私に触れたのだから責任をとってくんなまし」とか試合後にそんなことを言われた。

 やはり[言語理解]が故障しているのかもしれない。

ロリの好感度を上げるようなイベントは、助けた以外にないはずだ。

 チョロインにも程がある。

 次のスキルは[言語理解:弐]とかなるのだろうか?


 勘弁して欲しい。


人形使い。

白い和服を着た黒髪の女性。

実年齢××だが幼女にしか見えない。長年の修行の成果だろうか。

未婚・彼氏なし。

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