真実
ポロリ回です
王国に戻った勇者たちはテュロル王にリツを捕まえたことを伝え、リュタ王国まで急いで行きたいことを話し、船を手配した。
リュタ王国へ向かうのなら、陸路より海路の方が早いのだ。
リツは指名手配をされているので、馬車の中に隠れている。
「ホントにこのまま神殿に行くのかよ」
「魔界へのゲートさえ開けば、俺たちだけで魔王を倒すことができるはずだよ」
「ゲートを開けた後、コイツはどうするんだよ。ゲートが常に開いた状態になるとは限らねぇだろ」
「それは……ダルドさん、帰りにリツくんを送って貰ってもいいですか?」
ウォルドはダルドに尋ねた。
「わかりました、同行しましょう。エイスさん、申し訳ありませんが城下町でしばらくの間待っていてください」
「わ、私も行きたいです」
「無理ですよー。リツくんとダルドくんを連れていく時点でリスクがあるのに、もう一人戦えない人が増えたらさすがの私たちでも守りきれる自信がありません」
「そう、ですか……リツさんに伝えてきますね」
落胆したエイスはリツに話しかけようと馬車に入った。そこには、頭を抱えて唸るリツの姿があった。
「ぁぁ……」
「リツさん!?」
「どうしたのー?」
リツはキュロスの話を聞いてから酷い頭痛に襲われていた。
一度は治まったものの、再び頭痛が戻ってくる。王国の名前、勇者の名前や声がするりするりと頭の中に入っていく感覚。
今までの頭痛とは違う、無理やりこじ開けるような痛みではない。情報の処理が追いつかない事で生じる頭痛。
「タネザキ……タネザキ、リツ? 種ザキ……種崎……? 律……?」
リツは昨日聞いた自分の名前を連呼し、どこかほっとしたような顔をした。
そしてリツの目からポロリと、涙がこぼれ落ちた。やがて涙はつーっと頬を伝い、薄い線を残した。
「だ、大丈夫ですか?」
「……ああ。とりあえず外に出よう」
リツは中を見せないように掛けられた布をどかして顔を外に出した。
「ちょっ、ダメだよリツ。見つかったら殺されるって」
「そうだな。一度、殺されるのもいいかもしれない」
リツはおもむろに剣を抜き、自分の胸に突き刺した。
透明な剣は血を纏いながら止まることなくリツの体を貫通する。その刃は冷酷に、残酷に、容赦なくリツの生命活動を停止させた。
「なっ!?」
近くにいたウォルドは突然のことに驚き、動くことができなかった。
「嘘……っ」
「エイスさん!」
血だらけになったリツを見て倒れそうになったエイスをダルドが受け止める。
だが、勇者たちにその二人を気にする余裕はなかった。
「死んだ、か?」
「まて、何かおかしい」
バンは近づいて死んでいるのかを確認した。
リツが動くことはなく、剣が刺さったまま地面に倒れ込んでいる。
が、ダースはある変化に気がついた。
「髪の色が、違う」
ダースの言葉に全員がリツの髪を見た。数分前まで真っ黒だった髪の毛は、暗い茶髪に変わっていた。
そして一秒、また一秒と経つごとに茶髪に近づいていく。
髪の毛の変化が終わると同時にリツの身体、剣の刺さった付近から霧が吹き出した。
「ダルドさん。リツは、リツはどうなって……」
「エイスさん。今は彼を見届けましょう」
少しずつ霧が晴れていく。霧の中にリツの影が映っていた。そのシルエットは立ち上がり、右手に剣を持った。
「リツ……なのか?」
「……誰だ、てめぇ」
勇者たちの目の前に立っていたのは、茶髪に青い目のリツだった。
「正確にはリツじゃないが、ウィーダ村で過ごした人間はリツでもあるし、私とも言える」
「意味がわからない」
ウォルドの意見に勇者全員が頷いた。
「リツさん……?」
「リツさん、ですよね?」
「エイス、ダルド。いいものを見させてもらった、感謝する」
「だーっ! だからてめぇは誰なんだっつってんだろうが!!」
「慌てるな。うーむ……それでは、話は本物のリツを交えてするとしよう」
リツ(?)は背中から巨大な水の膜を出してその場にいた全員を自分ごと包んだ。
その水の膜は海の中に消え、港には誰もいなくなった。
* * *
太陽の光が水面に当たり乱反射する。そんな光に囲まれた空間にエイスとダルド、勇者は立っていた。
「な、なんだよここは」
「久しぶり、バン」
「あ? ……リツ」
バンの背後に立っていたのは召喚された当時の服装の黒髪黒目のリツだった。
「さて、答え合わせといこうか」
「その前に、君の本当の名前を教えてほしい」
リツのさらに後ろから歩いてきた茶髪のリツに向けてキュロスが言った。
「名前か……いや、名前はない。だが、人にはこう呼ばれていたな。『海神』……と」
「海神!?」
声を上げたのはキュロスだけだったが、その場にいた全員が目を見開いて驚いていた。
特にエイスとダルドはショックが大きく、今まで過ごしてきていたリツはどちらなのかと考えてしまい、混乱している。
「海神……では僕達と共に笑いあっていた彼は、あなた、なのですか?」
「いや、俺だよ。ウィーダ村に住んでいたのは記憶を失った状態の俺だからね。海神は俺の魂の中に入ってその生活を体験してた、時々海神の記憶が交じることもあったけどね」
本を読んだ時、リツが感じていた感覚はリツ自身の記憶でもあり、海神の記憶でもあった。
「リツさん。私のこと、わかりますか?」
「全部覚えてる。その場にはいなかったけど、記憶はこっちにいた俺にも入ってくるから」
「私がリツの中に入っていなくとも、リツは同じ行動をしていたはずだ。もう一度言うが、私は感謝をしている。短い間だったが、人間の夢を見れたような気がするよ」
海神は人と関わり、人の弱さを知った。そして同時に、人の強さも知った。
今まで知り得なかった知識を蓄えた海神は、人間に感謝をしている。楽しかったこと、嬉しかったことを、リツと共に体験したから。
海神の人としての日常は、今ここで、幕を閉じた。
ポロリについてのお詫び。
某弓使い「ほらどうした喜びなよっ、親切でやってるんだっゼ☆」
さあ殴れ! それで気が済むのなら存分に殴るがいいさ!
あっ! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありが(ry




