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話し合いと紳士

 村長宅にお邪魔したリツたちは、ダルドの部屋に入りくつろぎ始めた。リツはあぐらをかき、エイスは正座、フリンテはベッドで横になっている。


「僕の部屋なのですが……まあいいです、今日は色々ありましたね、疲れるのも無理はないです。それで、ツェントはどこに行ったのですか?」

「ツェントなら家で剣作ってるよ、あのままだと禁断症状出てただろうから触れないであげて」

「把握しました、相変わらず困った男です。さてフォリシスさん、今回あなたをこの部屋に呼んだ理由をお話しましょうか」

「聞かせて欲しいわ。今日はみんなで洞窟に行ったと聞いたらしいじゃない、何かあったの?」


 ダルドの正面には村長であるフォリシスが座っている。説明は全てダルドに任せているため、他はただ遊ぶのみである。


「まず、あの洞窟は結晶山、ということは知っていますね?」

「もちろん知っているわ、昨日フリンテに聞いたもの」

「僕達はその結晶山のさらに地下に降りようと思いました——」


 ダルドはフォリシスに洞窟であった出来事について話した。フォリシスは途中カムジュ鉱という言葉が出て、真剣な顔になった。


「そんなことがあったのね……カムジュ鉱、テュロル王国が知ったら大変なことになるわ、このことを知っている人はどれだけいるの?」

「幸いにも、ここにいる全員のみです。ああ、ツェントも知っていますよ」


 カムジュ鉱について知っているのは、部屋にいるダルド、リツ、エイス、フリンテと、自宅にいるツェント、そして今知ったフォリシスの六人である。


「それならなんとか隠せそうね。リツくん、できればカムジュ鉱で作られた……武器でも道具でもなんでもいいわ。その所持をお願いできるかしら?」

「所持……使用はしてもいいですか?」

「使用は考えない方がいいわよ、見えないから扱うのが難しすぎるの」


 見えないカマやクワなど、誰が使うのか。その類の道具を透明にしても、利点は何一つなかった。


「使うのなら剣が一番いいでしょうね、目に見えない剣というだけで大きな脅威ですから。ツェントに頼んでみるのはどうでしょうか、彼は自分の腕に自信があります」

「洞窟で聞いてきたあれか。なんで俺なの?」


 リツは自分がカムジュ鉱を持たされることに疑問を持っていた。

 保管するなら、もっといい場所があるのではないかと思ったのだ。


「王国はリツさんが村にいることを知りません。それなら、他のどの村人よりも見つかりにくいと踏んだのです」

「なるほど、それはわかった。それでフォリシスさん、どうして加工をする必要があるのですか?」

「見つかりにくいという理由もあるけれど、一番は価値を落とすためよ。カムジュ鉱は加工をする度に耐久性が落ちてしまうの」


 カムジュ鉱は加工をする度に耐久性がなくなり、最終的には目に見えるただの鉄くずになってしまう。

 特に二度目の加工は脆くなりやすい。最強の武器を作りたいのなら、一度目の加工で完璧な形にする必要がある。


「見つかった時のため、ですか」

「そういうことになるわね」

「……わかりました。洞窟を見つけたのは俺ですから」

「感謝するわ! リツくん!」

「しかーし、一つ条件があります。ダルド!」

「はい?」

「草刈りを手伝ってください!」


 リツはジャパニーズドゲザをした、それはもう綺麗なフォームで。

 今日の洞窟の調査で、体力を使い切ってしまったリツは、日が沈む前の草刈りを思い出して絶望していたのだ。猫の手も借りたいとはまさにこの事だった。


「そういえば、雑草が凄かったですねあの農場は……いいでしょう、僕も興味があります。手伝いましょうか」

「本当!? ありがとうダルド! ツェントの言った通りだ!」


 つい口を滑らせてしまったリツの顔を、ダルドは見つめた。

 お互いが見つめ合い、数秒が経過する。


「……ツェントはなんと?」

「えっ……えーっと、すごくいい人だーって言ってたよ」

「どうせ騙しやすいとか、興味のあることなら考えずに簡単に引き受けるとかでしょう? 困りますね、そんな風に思われては」


 リツの心もツェントの心も読まれていた。リツは商人ってすごいなーなどと考えながら心を落ち着かせた。


「……大正解だよ。でも興味のあることなら引き受けるでしょ?」

「それはまあ、引き受けますよ」

「引き受けるんだ……」

「さっそく行きましょうか! カマは要りますか? 刈った雑草はどうするのですか?」


 ダルドは質問攻めをした。リツはそれに対してどれから答えていいかわからず、一旦全て忘れた。


「わかった、わかったから。とりあえず向こうに着いてからね」

「あ、私も行きます!」

「……仕方ないからあたしも行くわ」


 ふんすと鼻から息を出しながらベッドの上に立つフリンテ。自動的に上から目線になっていた。


「あらーフリンテ、嫌なら別に行かなくてもいいのよー?」

「べ、別に嫌とかじゃっ! あんたたちさっさと行くわよ!」

「はいはい。エイス、本当はなんて?」

「物凄く行きたがって待ってくださいその手はなんですか」

「そぉいっ!」


 フリンテはエイスの背後に回り込み、手をいつも通り口を……塞がず、胸に手を回した。

 がっちりくっつき、胸を触るフリンテ、男性陣は冷静に目を逸らした。


「ひゃめてくださいぃ!」

「終わらないわ……! あたしはまだあと二回の変身を残しているのよ……! このっ駄肉がっ……あ、リツ、ダルド、先行ってていいわよ」

「……行きましょうか」

「……だな」

「まっ、まって……! フリンテちゃっ、やめっ!」


 背後から聞こえてくる高い声を聞かないように、男二人は優雅にドアを開けた。

 その姿はまさに紳士、屋敷の執事に敬礼されながら、リツとダルドは農場へ向かった。

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