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鉱石を掘ろう

 早朝、眠い目をこすりながらジョウロでカブに水を撒いていると、昨日約束したエイスが走ってきた。


「早いな」

「目が覚めちゃいました。農場らしくなってきましたね」

「ここだけだけどな」


 リツがカブを植えたのは家側の角の一部だけで、全体として見るとまだまだ一割にも達していない。


「ふぁあ……よし、行こうか」

「はい!」


 欠伸をしながらツェントから借りたツルハシを農業用の一輪式手押し車に乗せた。それを押しながら昨日探索した洞窟へ向かう。

 リツは行きでこんなに疲れるのなら、金属結晶を乗せた帰りはどうなるんだと思いつつ洞窟を目指した。


「あー、あー」

「だ、大丈夫ですか……? 代わりましょうか?」

「大丈夫、もうすぐだから……」


 洞窟はもう目の前まで来ていた。だというのにリツは歩くペースが落ちている。

 よくあることである。マラソンでも疲れきっている途中の十メートルと最後の十メートルでは、油断して速度が落ちてしまう。そういう時は目的地の数メートル先を目指すと楽になるのだが、そんなことを考える余裕はリツにはなかった。


「着きました! ちょっと休憩しますか?」

「そ、そうだね。うん、そうしようか、それがいい」


 それほど遠くはないが、寝たきりだったリツの体力は、言うまでもなく少ない。しかし少しずつだが体力は元に戻りつつあった。


 川で涼んだ後、リツはツルハシを握りしめて洞窟の中に入っていった。


「『ライト』足元、気をつけてくださいね」

「おう、相変わらず沢山あるな。ん? なんか昨日と違くない? てか増えてない?」


 リツが異変に気づく。岩壁の隙間に所狭しとくっついていた銅結晶が、昨日よりも多く見えたからだ。

 人間、どうでもいいことを鮮明に覚えてしまうことがある。リツは昨日入口付近で見つけた小さな銅結晶を無駄に覚えていた。それを見ると、一回りほど大きくなっているのがわかった。


「増えますよ、金属結晶なんですから」

「増え……え? 金属結晶って増えるの?」

「はい、時間が経つにつれて成長するように大きくなります。一度掘ってしまっても、根元部分を残してさえいればまた徐々に大きくなっていきます」

「へー、キノコかよ」


 どういう理屈かはわからないが、金属結晶というものはキノコのように増えていくのだ。

 それでは無限に手に入るのではと思う人もいると思うが、透明度の高い金属結晶は溶かすと質量が小さくなってしまうので、そこまで効率は良くない。

 しかし、村として、個人として使うのなら余るほどの素材になる。見た目も美しいため、コレクターの間では高値で取引されることもあるという。


「大きめの塊をそれぞれ持っていきましょうか、銅とスズと鉄ですね」

「まずは銅とスズだな、どれがいいかな」


 リツはツルハシを担ぎながら良さげな銅結晶を探す。探しながら歩いていると、通路の天井に頭をぶつけてしまった。


「いってぇ……ん? これも銅結晶か」

「大丈夫ですか!? あ、本当です、しかも大きいです!」

「よし、これにするか。危ないし」

「それがいいですね」


 この先も洞窟を有効活用していくと考えると、通路の整備も考えなくてはならない。通路以外の整備も必要だ。入口を広くして階段状にすれば上り下りが楽になる。

 そう考えたリツは、時間があったら入口を整備しようと思った。


「危ないから離れててね」


 採掘開始、リツはツルハシで根元付近を強く叩いた。小さくヒビが入っていく。

 何度も叩くうちに、ヒビがどんどん広がっていく。半分を超えたあたりで、ヒビがさらに広がり始めた。

 落ちることを察したリツは、数歩下がる。

 直後、ズドンと銅結晶が地面に落下した。


 落下した銅結晶は、リツとエイスの立っている地面を少しだけ揺らした。


「……あとはスズと、鉄か。とりあえずこの銅結晶を入口まで持っていくか」

「明かりは任せてください」


 エイスの魔法で明かりを確保しつつ、銅結晶を入口付近に置いたリツは再び通路へ戻り、奥へ進んだ。

 銅結晶とスズ結晶が混じっていた壁だが、少しずつ鉄結晶が増えてくる。それに伴って、スズ結晶の大きさも変わっていた。


「これと、この結晶が丁度いいな」

「重すぎても持っていけませんから、このくらいでいいかもです」


 金属としての価値よりかは、売りに出すのなら鑑賞向けの透き通った結晶が良いだろうという判断をし、透明度の高い結晶を優先して探した。

 ツルハシはツェント印の鉄のツルハシなので、金属結晶でも簡単にヒビを入れることができる。


「ふっ! ほっ!」


 カーン、カーンと心地良い音が響き、鉄結晶が根元から外れる。

 続けてスズ結晶も採掘し、地上に運び出す。エイスは女の子なので、抱えるほどの金属結晶は持てない。だっておんなのこだもん。


 エイスには隣で照明になってもらっていた。

 魔法の使い方を知らないリツが真っ暗な洞窟を移動するのは大変危険なため、常にリツの数歩先で照らしてもらっていた。


「ふー……それにしても綺麗なもんだな」

「宝石みたいですね……これが金属になるとは思えません」


 並べられた銅結晶、スズ結晶、鉄結晶は、どれも金属とは思えないほどに透き通っていた。リツの素人目にも、高値がつくのがわかった。


「ラストスパートだな」

「帰りましょうか!」


 帰りは下り坂だったので、思ったよりも体力を使わずに済んだ。それは午後の畑仕事も真剣にやれという神様からの注意だったのかもしれない。

 リツとエイスは、金属結晶を村へと運んだ。

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