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僕と彼女と英雄の裏物語  作者: ヴィンディア
第3章 サバンナの中のサーフィト帝国
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15話 北門の攻防

 アリエッタたちが東門の防衛に当たっている頃、同様に北門でもモンスターの大群との攻防が行われていた。

 こちらは数百にも及ぶ精鋭達が防衛に当たり、磐石の守りかと思われていた。当然ながら精鋭を集めて防衛しているだけに、相手をしているモンスターの大群も東門のそれを大きく上回る。しかし、東門にいた大蛇のような巨大な固体は見当たらないものの、中型サイズのAランクに相当するモンスターがかなりの量含まれていて、手練れの騎士団といえどもそう簡単には事が運んでいるわけではなかった。それでも東門のように外壁を壊してしまいそうな固体はおらず、外壁上から飛び道具や魔法で攻撃し、外壁を越えてきそうな固体を各個撃退する事でなんとか防衛を続けていた。

 モンスターのあまりの多さに終わりの見えない防衛戦の中、本格的な衝突が始まってから二時間ほどで彼らに朗報がもたらさせれる。


「東門の安全がほぼ確保された」


 その情報は瞬く間に騎士団の中に広がっていった。

 しかし、情報は必ずしも正確に伝達されるとは限らない。人伝となれば尚更で、彼らに都合の良いように勝手な解釈付きで広がっていった結果、当初の報告に尾ひれ背びれがついた情報が末端に行き渡ることとなった。


「東門のモンスター軍が駆逐され、応援が北門に向かっている」


 実際には東門を抜けるような強力な固体だけが駆除されたというだけで、外壁の外側にはまだかなりの数の低級モンスターが残されていた。そんな状態だけに北門に援軍など回せる状態なわけもなく、完全にでまかせな情報だった。

 一時的に一部偽情報により鼓舞されていた騎士団だが、時間が経つにつれて援軍が来ない事に疑問が広がっていく。


「実は東門は既に抜かれていて、背後を突かれるのではないか」


 そんな根も葉もない噂が立ち始めたのは防衛が始まってから三時間が経過する頃だった。そんな噂を耳にした隊長クラスが慌てて噂を否定する為に駆けずり回るが、その行動すらも裏目に出て、噂を助長する結果となってしまった。

 そんな噂が実しやかに広がってしまえば当然の如く現場は浮き足立つ。それまでなんとか均衡を保っていた戦線だが、徐々に外壁を抜け、外壁の内側を防衛していた部隊と衝突が始まる。ゆっくりとではあるが、戦況はモンスター側有利に傾きつつあった。

 悪いことはさらに続く。

 東門から応援には来れない事が正式に伝達されたのだ。正常なときに考えれば東門から応援が来れないと伝達が来ている時点で、東門が落ちたというのはほぼデマだと結論付けられそうなものだ。しかし、悪いことが立て続けに起こっている現状では噂も悪い方向にしかいかない。


「東門から援軍は来ない。やはり東門は陥落している」


 当然のことながら、北門を防衛している兵士たちにも家族がいる者がほとんどで、このフィルブトの街の中に暮らしている者も多い。もし東門が抜かれてモンスターが街に流れ込んでいたとしたら、既に街中は襲われている可能性が高く、想像したくないような事態になっている可能性が頭を過ぎる者も多い。

 士気はガタ落ちした。そして、その影響は目に見えて絶大だった。辛うじて支えていた前線は崩壊を始め、狭くとも開いてしまえばモンスターが流れ込んでくるであろう門が破られるのも時間の問題だった。


「なぜこうなってしまったのだ…」


 北門防衛を預かる騎士団の団長は愕然としながらも、そう呟かざるを得なかった。

 ほぼ負ける事のないと見込まれた戦であったにもかかわらず、噂に踊らされた兵たちが思ったように動かず結果として瓦解しようとしているのだ。無力感を感じずにはいられなかったのだ。

 悪夢はまだ終わらなかった。

 ある程度減らせていたモンスター群ではあったが、押されている現状に追い討ちをかけるかのように、さらなるモンスターの群れが既存のモンスターたちの背後から現れたのだ。

 この時点でなんとか戦の体を保っていたものが完全に瓦解した。


「我らに逃げる場所などない!!最後に我らサーフィト帝国防衛騎士団の意地を見せるのだ!!」


 そんな騎士団長の叱咤も虚しく、防衛隊は徐々に、だが確実にモンスターに蹂躙され始めていった。

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