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僕と彼女と英雄の裏物語  作者: ヴィンディア
第1章 異邦の地ネマイラ
25/123

23話 決断の時

短いです。

本話で1章は終わりになります。

「なんで、起きたらエメラが一緒に寝てるの」


「別に減るもんでもないし、いいじゃない」


 礼が朝起きた時にベッドに潜り込んでいた事に礼は軽く抗議の声を上げるが、エメラもあっけらかんと開き直る。わりといつも通りの朝の風景だった。


「僕は男だったって言ってるんだから、少しは気を付けなよ」


「そんな可愛い為りしたアリィの何に気をつけるのよ」


「うぐ…」


「そもそも、その身体で好きにできるならお好きにどうぞ?」


「ぐぐぐ…」


 エメラの言う事は正論で、礼としては何一つ言い返せないのが少し悔しかったが、これもあくまでコミュニケーションの一つ、礼はそう思っていた。

 礼の予想に反して、昨日の告白があってもエメラは何も変わらなかったという事かもしれない。エメラにしてみれば出会った時から女の子で、今も女の子の姿でいるのであれば対応が変わりようがないというのが正直なところだろう。


「ほらほら、そんな事でへそ曲げてないで朝ごはんにしよ」


 こんないつも通りのやり取りに、礼はホッとするのと同時に嬉しさも感じていた。

 いつもの様に食事は進み、片付けまで終ったところで礼が切り出した。


「僕さ、ルビアスさんを探してみようと思うんだ」


 礼のその言葉に対して、エメラはまったく驚きの色を見せなかった。まるで、その言葉を予想して待っていたかのようだった。


「そう言うんじゃないかって思ってた」


 エメラは優しげな表情でそう返した。その顔は子どもを見守る母親のような、安らぎに満ちた笑顔だった。

 礼は反対されるか、反対されなくても悲しませてしまうかもしれないと思っていただけに、この反応には戸惑うばかりだ。


「…反対されると思ってた」


「本当は反対したい。でも反対したとしても、決めてたら無駄でしょ?だから…」


 エメラはそこまで言って少し言い澱む。それまでの笑顔を消して真剣なものに切り替わる。そんな凛とした雰囲気のエメラはいつもと違った美しさがあり、礼は思わず見惚れてしまう。

 ついには、意を決したようにエメラが言葉を紡ぎだした。


「だから、あたしも付いていく!」


 衝撃的なエメラの言葉に礼の方が驚かされてしまった。もしかすると、前の晩エメラはこの事について彼女なりに決断をしたのかもしれないが、そんな事は予想していなかった礼は、どう反応すればいいのか困ってしまった。


「え…いや、でも…」


「ダメって言われても付いてくからね。どうしてもダメって言うなら、あたしもアリィが出て行くの許さないから!」


 礼の外堀は既に埋められていた。どう答えてもエメラは礼と離れるつもりはないようだ。

 もちろん礼としてはエメラが付いてきてくれるのは心強いし、嬉しい。しかし、何かあった時に道連れになってしまっては申し訳ない、はたまた自分自身のエゴに付き合わせるのは忍びない、そんな思いがあったからこその戸惑いだった。

 しかし、こうなるとエメラは押せども引けども、叩こうとも動かない。それに礼の妥協できないラインからも程遠い事は礼自身自覚している。


「わかった…。そこまで言うならよろしくお願いします」


 ここは礼が折れた。エメラにとっては離れ離れになる事そのものが妥協できるリミットを超えてしまっていたのだろう。その部分に関しては頑として譲る気がなかったように礼には思えたのだ。


「うん、色々と準備しないとね」


 こうして、礼とエメラはルビアス探しの旅に出ることを決めたのだった。

1章はこれで完結になります。

場面はすぐには大きく変わりませんが、次回から情報を求めてネマイラを出ていくお話に変わっていきます。

ちなみに全体としては5章構成、全100話前後50万字程度になる予定です。

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