表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

生まれたての五現目(b)

少し落ち着いてから辺りを観察してみると、まず、空が明るいことに飛鳥は気がついた。

グラウンドのほうからは、生徒たちの声が聞こえている。


「私が窓から落ちたのは、夕がただった。……少なくとも、日付が変わるくらいには時間が経過しているようだな」


それから軽く地面を蹴るような動作をすると、飛鳥のからだはふわりと浮いた。


こうして浮いていると、まるで抵抗のない水のなかにいるようだった。

飛鳥はふわふわと、声が聞こえてきたグラウンドへと移動する。


グラウンドでは、生徒たちが体育の授業を受けていた。

飛鳥の目の前を何人もの生徒が走っていくが、だれもこちらに気づくようすがない。


「……だれにも、私のすがたが見えないのか……」


飛鳥はだんだん、悲しくなってきた。


中学生になってからというもの、飛鳥は同級生に無視されることが何度かあった。

しかし、無視されるのと存在をまったく気づかれないのとでは、似ているようでだいぶちがうようだ、と飛鳥は思った。


時計を見てみると、時刻は十四時だった。

この時間は、まだ五現目が始まったばかりだ。


「……私、もしかして成仏に失敗したのかな。

このままだと、どうなってしまうんだろう……、ほかに幽霊仲間でも、見つかればいいのだが」

「呼んだっ!?」


その声は、とつぜん聞こえた。

そして声と同時に、飛鳥はぽーん、とだれかに背中を"たたかれた"。


「……!? だ、だれだ!?」


飛鳥がおどろいてふり返ると、そこには小さな少女がいた。


まだ小学校低学年くらいの外見で、肩までの髪に、一箇所だけ編みこまれた三つ編み。

服装は鮮やかな赤の着物で、すそにはふしぎな黒の文様もんようが入っている。


少女の足は、地面についていない。

飛鳥と同じように、ふわふわと宙に浮いていた。


飛鳥はぽかんと少女のことを見つめたが、そのあと、おそるおそる口を開いた。


「あ、は、花子さん? ……トイレの」

「ちがうよ!」


少女はぷくーっ、と頬をふくらませて怒った。

てっきり都市伝説でよく聞く"トイレの花子さん"かとも思ったが、

たしかに花子さんは着物ではなく、つりスカートをはいていたような気もする。……第一、ここはトイレでもないし。


気を取り直して、飛鳥はたずねた。


「……では、おまえの名前は?」


すると少女はかわいらしく、にっこりと笑った。


「あたしは、マリアっ! オバケだよー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ