表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/36

学校の夜(a)

やがて、月見坂学園は夜をむかえた。

校内はまっ暗で、非常灯の緑色の明かりが闇のなかに不気味に浮かび上がっている。


「……おーい、マリアーっ!」


そんな学園のなかで、飛鳥は大声でさけびながら、あの先輩幽霊、マリアのことを探していた。


こんな闇のなかではいくら幽霊とはいえ、ざわざわと木々がゆれればこわいし、ひとりきりはこころ細い。


飛鳥が警備員室に立ち寄ると、そこでは若い警備員がぐっすりと眠っていた。

もちろん彼にも飛鳥のすがたは見えないのだろう。


それでも人が近くにいるほうが安心する。

飛鳥はしばらくのあいだ、その警備員のそばにうずくまりながらじっとしていたが、やがて顔をあげた。


「……弱気になってはだめだ。私ははやく、成仏しなくてはいけないのだから」


そして飛鳥はふたたび校庭に出ると、もう一度大きな声でさけんだ。


「おおーい!! だれかー! この声が聞こえる人間はいないかーっ!?」

「……うっるせーな! しずかにしろよ!」


思いがけず近くで声がしたので、飛鳥はおどろいて辺りを見回した。

暗闇のなか、飛鳥が目をこらしていると、近くの植えこみのかげからひとりの少年がすがたをあらわした。


「ああ、よかった! やっと夜の学校でも私が見える人間に……」


そこまで言いかけて、飛鳥は両目をごしごしとこすった。


「……ん? おまえ、ほんとうに人間か? 」

「……俺が人間に見えるかよ」


そう言って少年は、ばさり、と"つばさ"を広げて見せた。

少年は月見坂学園の制服を着てはいるが、人間の両うでの部分は白いつばさになっているのだった。


「す、すごい! それ、かっこいいな! はじめまして、私の名前は……」

「知ってるって。二日前に死んだ、飼育委員の越智飛鳥」


あっさりと名前を当てられた飛鳥は首をかしげた。


「どうして私のことを知っているんだ? おまえ、いったいなにものだ……?」

「見ればわかるだろ、ニワトリだ」

「いや、ぜんぜんわからないぞ……?」


飛鳥はしばらく、少年のすがたをじっと観察した。

それから、はっと息をのむと、とつぜん少年の前にかがんだ。

そしていきおいよく少年のズボンのすそをまくし上げたので、少年はおどろきの悲鳴をあげた。


「ぎゃあッ! お、おい、とつぜんなにを……!?」

「……おまえ、ぴよ吉じゃあないか!?」


まくし上げたズボンのしたからあらわれた少年の右足には、いくつもの傷あとが残っている。

飛鳥はその傷あとの箇所に見覚えがあった。


「私が飼育委員になってからすぐに生まれた、けがばかりしていたヒヨコ!

いつからかすがたを見なくなったと思っていたが、まさかこんなすがたに成長しているとは……!」


感慨かんがい深そうに、飛鳥はそっと、自分のなみだを指先でぬぐった。


「立派になったな、ぴよ吉……」

「そっ、その名前で呼ぶんじゃねーよ!!」


ぴよ吉の非難の声が、夜の校庭にひびいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ