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38 休日は動画鑑賞

 校長の勧めで、ハナは今日一日を休日とする事にした。

 ハナは朝の身支度を終えると、自室へと戻った。

 そしてベッドに横になり、ボンヤリと天井を眺めた。


 寮はシンと静まり返っている。

 みんなはもう外へ出た。誰もいない。


「ん~、どうしよぉ……」

 突然休日となったハナは、何をしようか迷っていた。


 休日の過ごし方を振り返ってみる。

 ゲームで遊ぶ。もしくは、ネットで動画を観る。

 ゲームの場合、家から持ってきたゲーム機でもいいし、スマートフォンのゲームでもいい。

 動画を観る場合、動画共有サイト『ニタニタ動画』か、もしくは……


「あ、そぅだ。アレ観よう」

 ハナは手を打って、上半身を起こした。

 そして、机の上にあったタブレット型パソコンを手に取った。


 慣れた手つきでパソコンを操作する。

 ブラウザの起動。

 アドレスバーをタッチ。

 URLを入力。

 サイトへ移動。


 こうして表示されたサイトは、『西映(きょうえい)ヒーロー公式ファンクラブ』だった。

 このサイトは、テレビ番組の制作・配給を行なっている西映株式会社が運営している公式サイトだ。

 今まで公開されたヒーロードラマ全てを観る事ができる。

 会員登録が必要だが、ハナはすでに登録済なのでログインするだけでいい。


「え~と、『エグゼイダー』は……」

 ハナは一覧の中から観たい作品を探した。


 探しているのは、『ゲーム戦士 エグゼイダー』だ。

 ゲームソフトから誕生した怪人を倒すため、ゲームソフトの力で変身して戦うヒーローの話である。

 現在放送中の作品で、今週放送された回の話をハナはまだ見ていない。


「あった!」

 ハナはタイトルをタッチした。

 そして表示されたサブタイトル一覧の中から、最新の話のものをタッチした。


 動画の再生が始まる。






 まずは、前回のあらすじが流れる。

 エグゼイダーこと、北条ゲイムにはマナミという幼馴染がいる。

 そのマナミが怪人達に(さら)われて、アジトに閉じ込められてしまった。

 ゲイムは彼女を助けるためにアジトへと乗り込むのであった。


 ハナはオープニングを飛ばした。

 本編へと場面が変わる。


『マナミ!マナミ!どこだ!』

 次々と襲いかかる戦闘員達を倒しながら、エグゼイダーは叫ぶ。


『助けて!』

『あ!』

 エグゼイダーが上を向くと、狐の女性が高い所にいた。マナミだ。

 ロープでグルグル巻きにされて、動けそうには見えない。


『マナミ!今助ける!』

 エグゼイダーは必殺技を放った。

 彼の体から四方八方に青白い炎が放たれ、残りの戦闘員達を一網打尽にする。


『よし!……あ!』

 エグゼイダーは戦闘員達がもういない事を確認すると、マナミの元へ行こうとした。

 しかし、少し目を離した隙に彼女の姿は消えていた。


『マナミ!マナミ!』

 エグゼイダーは周囲に呼びかける。

 すると背後から何者かに攻撃され、エグゼイダーは吹っ飛ばされる。


『クソッ!誰だ!』

『ゲーゲゲのゲー!彼女はここだぞ、エグゼイダー!』

 攻撃した者の姿がアップで映し出される。

 禍々しい狸の姿をした怪人だ。

 怪人はマナミを盾にしている。人質なのだろう。


『お前は……ゲゲゲ大王!』

 エグゼイダーは起き上がりながら、怪人の名前を呼んだ。

 この物語に登場する怪人はゲームキャラだ。ゲイムは天才ゲーマーなので、ゲームキャラは全て知っているのだ。


『どうだエグゼイダー!これで攻撃できまい』

『マナミを放せ!』

 エグゼイダーはゲゲゲ大王に殴りかかる。

 しかしマナミに当たりそうになって、エグゼイダーは拳を止める。


『ゲゲゲッ、バカめ』

 ゲゲゲ大王はどこからか卒塔婆の形をした武器を取り出すと、エグゼイダーを攻撃する。


『グワァ!』

 エグゼイダーは後方へ大きく吹っ飛ばされる。

 そして床に叩きつけられて転がる。


『クッ……流石はラスボスだ……強い……』

 上半身を起こしながらエグゼイダーは呟く。


『同じゲームの力だと分が悪いな……ソフトを交換しないと……』

 エグゼイダーは立ち上がると、どこからかゲームカセットを取り出した。


 今のエグゼイダーは『魂のヨービィ』というアクションゲームの力を得ている。

 取り出したゲームカセットと交換すれば、違う力を得る事になる。

 今取り出したのは『ガンガン・シューティング』。シューティングゲームの力を得る事ができる。

 しかし、エグゼイダーはゲームカセットを見つめたまま、交換する様子はない。


『接近戦が得意なアイツにはコレだ……銃で攻撃すれば勝てる……でもマナミに当たったら……』

 エグゼイダーはゲームカセットを持った手を震えさせていた。


『ゲイム!私の事はいいから、やっちゃって!』

 マナミは大声を上げた。

 その声にエグゼイダーは真っ直ぐ彼女を見る。


『マナミ……なんで……』

 エグゼイダーは呟いた。

 彼の正体を彼女は知らないはずである。

 彼は明らかに動揺している。


『ゲイムなんでしょ?幼馴染だもん!姿が違っても分かるから!』

『マナミ……』

『いいから!早く!』

『……分かった!』

 エグゼイダーは頷いて、自身のベルトに手を伸ばした。


 エグゼイダーのベルト、そのバックル部分にはゲームカセットが刺さっている。

 今刺さっている『魂のヨービィ』を抜き取ると、代わりに『ガンガン・シューティング』を刺した。


 エグゼイダーの姿が変わった。

 さっきまでは、人魂をモチーフにした装甲を纏っていた。

 それが消え、代わりに現代的な兵士のような装甲が装着される。

 そして手には拳銃が握られていた。


『一撃で決める』

 エグゼイダーは拳銃をゲゲゲ大王に向けた。

 銃口からは光が吸収され、拳銃全体が輝いているように見える。


『ゲゲッ!いいのか?コイツに当たるぞ!』

 ゲゲゲ大王はマナミの後ろに隠れた。

 ゲゲゲ大王はマナミよりもずっと大きい。しかし盾にするには十分だ。


『ガンガン・ラストシューティング』

 エグゼイダーは引き金を引いた。


 太いビームが放たれる。

 そしてマナミに当たりそうになった瞬間、何本にも分かれて彼女をよけた。

 そのまま後ろにいたゲゲゲ大王に全てが当たる。


『ゲゲッ!バカな!』

 ゲゲゲ大王は後ろへ大きく吹っ飛ばされ、そして爆散した。


『ありがとうマナミ……君のおかげで勇気が湧いたよ』

 エグゼイダーはマナミのロープをほどきながら言った。


『だってゲイムだもん。何とかなるって信じてたから……』

 自由になったマナミはエグゼイダーの方を向いて言った。


『よし!じゃあ脱出しよう!』

『うん!』

 二人はアジトから脱出した。






「はぁ~、やっぱりカッコイイよね、エグゼイダー」

 次回の予告を観ながら、ハナは呟いた。

 そして動画の再生が終わると、パソコンを机に戻して、再びベッドに横になった。


「あ~あ、エグゼイダーみたいになりたいなぁ~」

 天井を眺めながら、ハナは呟いた。

 変身して戦うヒーロー。そういう者にハナは憧れていた。

 今はもうグッツは集めていないが、幼い時にはいくつも買ってもらったくらいだ。


 ハナはボンヤリと天井を眺める。

 そうしながら、自分がヒーローになれるならどんなのがいいか考えてみる。


 今まで観た作品の中では『ゲーム戦士 エグゼイダー』が一番面白い。

 だから、やはりエグゼイダーみたいな能力のヒーローがいい。

 でもゲームは彼の物とは違う物がいい。全て自分で考えて、自分で作り上げる。

 そんなヒーローになりたい。


 ハナはしばらく天井を眺めた。

 そしてムクリと起き上がった。


「そっか、なればいいんだ」

 ハナは呟いた。


 答えはもうあった。

 自分の目標、それは変身するヒーローになる事。

 そうなれるために、魔法の勉強をすればいい。


 目標が決まったハナの行動は早かった。

 荷物からノートとペンを取り出す。そして、思いついた事を次々と書いていく。


 『ゲームの力で変身するヒーロー』

 『ゲームは全部オリジナル』

 『ゲームはとりあえず三種類。アクション、シューティング、格闘。思いついたら増やす』


 さらにどんな姿になるのか、絵にしてみる。

 ゲームによって姿を変える。でもエグゼイダーとは違い、『戦う女の子』みたいに正体を隠さないようなデザインがいい。

 子供の落書き程度の画力しかないが、ハナにはそれで十分であった。


「うん、これでいいかな」

 ハナはノートを閉じると、ベッドから下りた。

 そして自室から出ると、寮の出口へと向かった。


 ハナは図書館へ行く事にした。

 とりあえず、色々と魔法を覚えたい。

 覚えた中からゲームの力を作り上げたい。

 そう考えたのだ。


 ハナは勢い良く扉を開けると、寮を後にした。

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