03 ごっつええ列車で行こう
「あぁ……あぁ……あぁ……」
恐怖でアカネは声が漏れる。
現在、ナイツ国へ向けて渡航中。
アカネは自分が座っているシートにしがみ付きながら、怯えていた。
指先からは汗が止まらず、胸が苦しくて仕方がない。
「おい、アカネ。そんな事して、どうする」
ミアは呆れた様子でアカネに話しかけた。
その言葉に、アカネはムッとした。
いつもだったら、すぐに彼女へ突っかかっていっただろう。
だが、今は無理だ。
恐怖心ばかりに気がいって、そうするだけの余裕が無い。
「アカンねん……ウチ、高所恐怖症やねんて……」
アカネはそう言って、一層身を固くした。
自分でも情けないと思いながらも、弱々しい声が出てしまう。
「我慢しろ。ナイツへはこれで行くしかねぇんだから」
「そこや!問題はそこやねん!」
「あ?」
「なんで移動手段がコレやねん……」
「船旅の方がよかったか?何日かかるか知らねぇぞ」
「ちゃう!飛行機でもええねん!でもコイツは……電車や!」
アカネは床を指して言った。
そう、自分達が乗っているのは電車。飛行機ではない。
今日の朝、校庭へ集まると、コレがバルドゥイーンと共に待っていた。
そして彼に促されるままコレに乗り込むと、空へ向かって走り始めたのである。
「正確には魔力駆動式列車。まあ、『魔車』ってとこか?」
「そこはどうでもええねんて!列車が飛んでいるんやで?ありえへんやろ!」
「ありえなくはねぇだろ。ヤマトには無い技術で作った乗り物ってだけだろ」
「放っとけ。未開の地の住人に飛行機を説明するようなもんだろ」
タクミが口を挟んだ。
「だが、うるせぇからな。スティミス!」
彼は杖を取り出すと、杖を振り、呪文と共に先端をアカネに向けた。
若草色の閃光が放たれ、アカネを直撃する。
痛くはない。むしろ急に気分が落ち着いてきた。
まあ、当然だろう。
今のは鎮静の魔法。その名の通り、心を落ち着かせる魔法だ。
「あぁ……おおきに先輩」
「気にすんな、天王寺」
「やっぱり先輩の鎮静の魔法はよう効くわぁ」
「フン、褒めても何も出ねぇぞ」
「ちゅーわけで、効果が切れたら、また頼むわ」
「チッ、調子に乗りやがって……」
褒められて気分が良いのだろう。
そう言うタクミだったが、言い方は優しかった。
さて。
気分が落ち着いたせいなのか、急に周りの様子が見えてきた。
アカネはゆっくり立ち上がり、見回してみる。
アカネ達がいるのは、食堂車みたいな……いや、食堂車そのものであった。
ミアとタクミは通路を挟んで向かい側の席に座っている。
二人とも読書をしているようだ。もしかすると魔法に関係した参考書かもしれない。
ハナとエリは向こうの席に座っている。
二人はトランプか何かで遊んでいるように見える。
そしてバルドゥイーンはその隣、通路を挟んだ向かいの席に座っている。
彼はスマートフォンを片手にコーヒーか何かを飲みながら、リラックスしていた。
アカネはハナ達の席の方へ移動することにした。
今の席に一人で座っているのは退屈だ。
それよりはハナ達と遊びたい。
そう思ったからだ。
アカネはゆっくり通路を移動し、ハナ達の席の近くに立った。
「おう」
「あ、アカネちゃん。大丈夫?」
「ああ、大丈夫や」
心配そうに訊ねるエリにアカネは笑顔で答えた。
もう怖さは感じない。この笑顔に嘘はなかった。
「ここ、座ってええか?」
ハナのすぐ隣が空いていた。
その席を指さし、アカネはハナに訊ねる。
「うん、いいよ、アカネちゃん」
「え?」
アカネは目が点になった。
ハナは何故かタメ口で話しかけてきた。
彼女の頭が弱いという事をアカネは知っている。
しかし、それでも彼女は、彼女なりに敬語を使っていた。
だから突然タメ口になったことは、アカネには衝撃的な出来事であった。
「あ、さっき話してたの。同じタイミングで大学生になったんだから、先輩も後輩もないよねって……」
「あー、はいはい」
エリのフォローにより、アカネは納得した。
言われてみれば、その通りだ。
これからは、みんな同級生。
「せやな、ウチらピカピカの一年やもんなぁ」
アカネは席に座ると、ハナの顎の下をくすぐった。
気持ちよさそうにするハナ。
ふんわりとした毛がとても気持ちが良い。
「一年ではありませんよ」
突然バルドゥイーンが話しかけてきた。
「え?」
アカネはハナをくすぐったまま、彼の方を向いた。
「自由探究学科には学年がありません。ですから一年も二年もないのです」
「何や、その……自由ナントカってのは?」
「自由探究学科、ですよ。皆さんが入った学科です」
「……知らん」
「まだ説明してませんからね」
「なんでまだなん?」
「完全に説明するタイミングを見失ってしまいましたから」
「……頼むわ」
「分かりました」
バルドゥイーンは席を立った。
「あー、皆さん。よろしいですか?入学ガイダンスを始めますよ」
彼の言葉を受け、みんなは彼を見た。
アカネはくすぐるのを止め、彼に注目する。
「えー、初めに。私は話下手なので、簡単な説明しかできません」
「なんやそれ!やる気あるんか!」
アカネはヤジを飛ばした。
悪意があるわけではない。反射的に声が出てしまうのだ。
「ですので、皆さんから質問していただいて、私から情報を引き出してください」
「引き出す……ねぇ」
ミアの呟き声が背後から聞こえてきた。
アカネは思わず振り返った。
彼女はいつの間にか、アカネの後ろの席に移動していた。
物音に全く気づかなかったので驚いた。
「とりあえず、先ほど質問があったので、皆さんが入った学科について説明します」
バルドゥイーンは話し始めた。
「皆さんが入ったのは、自由探究学部の自由探究学科といいます。まあ、自由探究学部にはそれしかありませんけど」
「どんな学科だ?」
「その名の通り、自由に探究することができる学科です」
「具体例が知りたい」
積極的に質問しているのはミアだ。
「魔術関係であれば、知りたい事を好きなだけ調べて構いません。また、魔道武術を究めようと、日々鍛錬をしても構いません」
「本当に自由なんだな」
「はい。ただ、一つ注意を……」
「注意?」
「皆さんに与えられた自由な時間についてです」
「どんな事だ?」
「自由な時間には学業だけでなく、休みや遊び、バイトの時間等も含まれています。時間は計画的に使ってください」
「自由というよりは自己責任だな。そこまでいくと」
「ええ。私が言いたいのはまさにそれです」
バルドゥイーンはミアを指しながら言った。
そんな彼の様子を見ながら、アカネは今の言葉を反芻した。
計画的に……か。
アカネは渋い顔をした。
アカネにとって、計画を練る事は特に苦手だ。
多くの場合、アカネは思ったままに行動してきた。
それが吉と出ようが、凶と出ようが気にしたことはない。
そういう生き方をしてきた。
今後はそれではダメだというのだろうか。
だとすると、学生生活はつらいものとなるかもしれない。
いや、違う。そうじゃない。今の考えをすぐに頭から振り払った。
もう、そんな事を考えてはいけない。
自分は大学生になった。少しはそういう事を考えるようにしなくてはいけない。
アカネは間違えていた事にすぐに気づいた。
「そこまで自由と言われると、そもそも自由じゃない時間なんてあるのか?」
ここでタクミが質問する。
「そうですね。消灯の時間、後は毎朝のホームルームぐらいでしょうか。あ、ホームルームは私が担当します」
「ホームルーム?大学なのにか?」
「はい。初めての試みですからね。私が毎日、皆さんの様子を確かめなくてはなりませんから」
「ちょっと待て。初めてってどういうことだ?」
「できたばかりなのですよ、自由探究学科は。つまり皆さんは第一期生」
「なん……だと……」
「実は私、周りの環境のせいで魔術を学べない方々の保護活動を行なっているんですよ。そのプロジェクトの一環として始めることにしたんです」
バルドゥイーンは自慢げに言った。
第一期生……か。
嬉しいような、不安なような……
アカネは複雑な気分となった。
「あの、『魔術を学べない人』って?」
今度はエリは訊ねた。
「はい。魔術を学びたい、才能がある、しかし周りの環境が邪魔をしている。そんな皆さんのような方々にしっかりと魔術を学んでもらいたいのです」
「環境が邪魔をする……か。確かにそうかもしれねぇな」
バルドゥイーンの話に、ミアは呟いた。
「そうだよね。ヤマトって魔術を趣味か軍事ぐらいにしか使ってないもん。私達が使っていた参考書だって、趣味のコーナーにあった物だったし」
「だな。周りにある物っていえば科学技術の産物ばかり。俺達一般人が触れられる魔術なんて、ほんのわずかだ」
エリとタクミは彼女の話に同意する。
言われてみれば、確かにそうだ。アカネは頷いた。
ヤマトで道具と言えば、電化製品、つまりは機械を思い浮かべる。
天王寺家の宝ともいえるホットプレートも、やはり機械。
一般人にとって、生活する上で魔術の出る幕は無い。
それを考えると、ヤマトという国は魔術を学ぶには適していない。
つまり、自分達は彼が言うような人物像に当てはまる。
……たぶん。才能があるかなんて分からないが、彼が保護したという事は、きっとそういう事なのだろう。
アカネはそう思った。
「なるほどなぁ。でも、ウチらを入学させるために魔術部を廃部にするやなんて、やり過ぎやったとちゃう?」
アカネは訊ねた。
昨日ずっと考えたが、やはり廃部の原因は彼にあるような気がして仕方なかった。
あまりにもタイミングが良すぎるからだ。
彼には勝手にパスポートを作ってしまうくらいの権力がある。
廃部にさせて、それでもやる気がある者だけ連れて行こうだなんて計画していたとしても、何もおかしくはない。
「おやおや、バレてしまいましたか」
バルドゥイーンは悪戯っぽく舌を出した。
やはり、思った通りのようだ。
「やっぱりそうか!タイミング良過ぎて、何か変だなと思ったんだ」
アカネが振り返ると、ミアは立ち上がって言った。
彼女も同じ事を考えていたらしい。
「酷いですよ!あんなメチャクチャな方法でだなんて……」
エリは彼に抗議する。
彼女の言う通りだとアカネは思った。
彼の身勝手な考えで魔術部は廃部にされ、さらに自分達は退学させられてしまった。
大学で魔術の勉強をさせてくれる事を差し引いても、これはとても迷惑な話だ。
「いやー、すいませんね。始めはね、皆さんを少し育ててみるだけのつもりだったのです。でも育ててみると逸材ばかり。それで気が焦って、ちょっと強引な方法を取らせてもらいました」
バルドゥイーンは、あまり反省していない様子で答えた。
「でも私も苦労したんですよ。皆さんの筆跡を真似るのもそうですし、署名をいただきにご家族へ会いに行きましたし……」
彼はやれやれと言いたそうに言葉を続ける。
『あまり』ではない。彼は全く反省していないようだ。
いや、待てよ。アカネは大事な事に気づいた。
そもそも筆跡を真似て書類を書くのは文書偽造罪だかで、犯罪ではなかっただろうか。
まさか、彼にはそういう事を無効にするだけの権力があるというか。
少しだけ彼の事が怖くなってきた。
「……ったく、勘弁してくれ。俺、二十歳だぞ。この歳で保護者からの同意貰うとか、マジでキツイって……」
タクミは迷惑そうな声で呟く。
いや、もっと大事な事に気づいて欲しい。
文書偽造を告白したぞ、今。
アカネは心の中でツッコミを入れた。
「ちょっと待ってくれ。あの時、アタシ達は廃部を大人しく受け止めたけど、もしも存続のために戦うとか言い出したらどうするつもりだったんだ?」
ミアは訊ねた。
確かにそうだとアカネは思った。
タクミが「抗議したがダメだった」とか、「これからも勝手に部活を続ける」とか言わなかったら、たぶんそうしていただろう。
「あ、それはご心配なく。先生に反抗したという理由で退学処分にする手筈でしたから」
バルドゥイーンは笑顔で答えた。
どうやら魔術を学ぼうとする熱意が読み取れさえすれば良かったらしい。
彼にとって重要なのは、自分達を大学へ入れるか否か決める事、そして入れるならば高校を辞めさせる事だったようだ。
「まあ、この話はこれくらいでいいでしょう。他には何かありますか?」
「ほ~い」
「何ですか、ハナさん」
「ナイツの魔術ってぇ、すごいのぉ?」
今度はハナが質問した。
「すごいですよ。それに科学との融合が素晴らしいです。この列車のようにね」
「そぅなの?」
「はい。この列車のモデルはヤマトの高速鉄道です。時速300キロ超えの世界に誇る技術。それに魔術の技術を加えることで、この列車は完成します」
「ふんふん」
「従来の機能に飛行能力を追加。さらに速度を三倍に強化。これは世界初ですね」
「ほうほう」
「そしてなにより素晴らしいのは……これを作ったのは私の大学だという事ですね。あ、魔道工学部ってところなんですけど」
「うんうん」
「優れた技術は偏見なく、組み合わせて使う。つまり科学と魔術が共存共栄している。それがナイツの強みです」
「おー!」
ハナは興奮気味に聞いていた。
しかし、彼の話をほとんど分かっていないのだろうと、アカネは思った。
その時、アカネはふと、それとは関係ない疑問が頭をよぎった。
そして気がつくとすでに質問していた。
「なあ、大学の学費ってなんぼなん?ウチら払えるん?」
「それについてはご心配なく。皆さん特待生ですので、タダです」
「タダ?ホンマに?」
「はい。学生寮も無料で使えます。学ぶ上で金銭的な問題は一切発生しないというわけです」
「おっしゃ!」
学費が無料。
アカネにとって、これは非常に重要な事だ。
なにしろ天王寺家は貧乏だ。
高校の時、つまりつい最近まで、学費を稼ぐために必死でバイトをしていた。
もうそれをしなくてもいいというのは、とてもありがたい。
「他に質問は?」
バルドゥイーンは見回した。
もう誰からも質問はない。
「ふむ、いいでしょう。それでは、私の方から一つ質問しますよ」
彼は右手の親指を立てた。
サムズアップか。
いや、今の話の流れだと、ナイツでは指で『1』を表現する時は、こうするようだ。
ちょっとしたカルチャーショックをアカネは感じた。
それより、彼からの質問とは、いったい何だろうか。
答えられるような内容だといいが……
アカネは不安に思った。
「皆さんは何故……高校の制服を着ているのですか?」
彼の質問に誰も答えなかった。
いや、答えられなかった。
そして、黙って仲間同士で顔を見合わせた。
アカネは気づいた。
言われてみれば、みんな学生服を着ている。自分もだ。
何故と言われても困る。なんとなく着て来てしまった。
一応私服も持ってきたが、それでも今日は学生服だ。
「あー……何となく?」
アカネは頭を掻きながら答えた。
みんなを見回す。
みんなは無言で頷いた。
「そうですか、私はてっきりユニフォームのつもりかと……」
「それや!」
バルドゥイーンの言葉にアカネは飛びついた。
ユニフォーム。
確かに、自分達は元魔術部の部員。
仲間意識を高めるという意味では、とても良い。
完全に後付けだが、気にしない。
瞬時にしてアカネはここまで考えた。
「この恰好はウチらの友情の証や!な?」
アカネはみんなを見回した。
「お、おぅ……」
「う、うん……」
「あ、あぁ……」
「は~い」
ハナは喜んで同意した。
彼女以外は困惑しながらも、同意してくれた。
「おぅ、そうでしたか。では、皆さんの友情が永遠であることを祈りますよ」
バルドゥイーンは笑顔で頷いた。
そして腕時計をチラリと見る。
「さて、お昼にはまだ早いようですし、それまではご自由に空の旅をお過ごしください」
彼は席に着くと、再びスマートフォンを触り始めた。
「ねぇ、ナイツに着いたら何する?」
エリはハナとアカネに聞いてきた。
「ん~とね、ハナはね、たくさん魔法を覚えたいなぁ~って」
「ウチは……どないしよ?エリちゃんは?」
「私はね……科学と魔術の融合っていうのをもっと知りたいなって思ってるの」
「あー、エリちゃんって物理とか化学の成績ええもんな。やっぱそういうもんに興味があるわけや?」
「うん!」
エリは笑顔で答える。
ハナもエリも楽しそうな様子だ。
羨ましい。
「アタシは魔法ももっと覚えるつもりだけど、それ以上に魔道武術ってヤツを習いたいって思ってる」
ミアが話に入ってきた。
「え?以外やん」
アカネはミアの方を向いた。
正直、彼女と武術というのは、あまり似合わない。
確かに彼女は見た目はヤンキーだ。
しかし本当は運動が苦手である事を知っている。
体育の時間、彼女がすぐにバテていたのを、今までに何度も見た。
「そうか?アタシは元々、高校卒業したらロングラウンド国へ留学するつもりだったんだ」
「留学?何しに?」
「『黒払い』になるためさ」
「何やそれ?」
「ロングラウンドで魔術犯罪の取り締まりをしている集団さ。警察の特殊部隊って言えば分かるか?」
「知らんかった……ミアちゃんにそんな夢があったやなんて……」
「別に言う必要なかったからな」
彼女は肩をすくめる。
今の話はアカネにとって、ちょっとだけショックだった。
要はエリート集団に彼女は入ろうと考えているのだ。
立派な夢だ。
それに対して、自分はどうだろう。
考えてみた。
何も決まっていない。
いや、そんなはずはない。
考えろ。
考えろ。
絶対、何かあるはずだ。
焦る気持ちを抑えながら考えた。
「ところでタっ君は?」
「た、タっ君?」
突然エリに話を振られ、その上アダ名で呼ばれたタクミは面食らった様子だった。
「うん、タクミだからタっ君。せっかく同級生になれたんだから、アダ名で呼びたくなっちゃて……」
「やめろ、迷惑だ」
「それで?何をする気なんだ?タっ君よ」
ミアが話に入ってきた。
「その魔道武術ってヤツ、俺も興味が……だから、それ止めろ山田っ!」
タクミは迷惑というより、恥ずかしい様子で嫌がった。
そんなタクミ達のやりとりをアカネはボンヤリと見ていた。
ダメだ。どうしても思いつかない。
アカネはため息をついた。
「何や、何も決まってへんのウチだけやんか」
頭を抱え、独り言を言う。
何だか置いてきぼりにされたような気分。
焦りも感じる。
「アカネちゃんは何もないの?」
ハナが覗き込んできた。
「せやでハナちゃん。ほんま困ったわぁ」
アカネは彼女の方を向くと、彼女の両頬を揉んだ。
顎の下よりも触り心地が気持ちいい。
柔らかな体毛に加えて、ムニムニとした頬の手触り。
最高だ。
「そのうち見つかるよぉ」
「だとええけどな……」
そうでなくては困る。
不安からアカネは思わずハナを抱きしめた。
するとハナは頭を撫でてくれた。
少しだけ気が楽になった気がする。
アカネはお返しに背中を撫でてあげた。