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幸せとは

坂原探偵事務所では少し落ち着いた様子で坂原と凛久がお茶を飲んでいた。凛久が坂原に問いかける。


「今回もまた大変なことになりましたね」


「思った以上に複雑だったからね。でもまさか、こんな結末になるとは。ちょっと自分の力不足が辛いね・・・」


「・・・みんな、幸せだったのかな・・・」


「大切な人の為に命を捨てる・・・。幸せだったとしてもこれを美談には出来ない。しちゃいけないよ」


「・・・そうですね。でも、それじゃあみんな報われません。世の中、みんなが幸せになる方法、何か無いですかね・・・」


「難しいね。人はみんな平等なんて嘘だからさ。」


坂原がそう言うと凛久は考えるように黙った。坂原は自分のデスクに戻り一通の封筒を眺めた。その封筒の後ろには小さく『里美へ』と記されていた。温田の部屋に行ったときに見つけた封筒だった。温田は里美に何かを伝えようとしていた。坂原は里美に連絡を取ろうとするが里美の携帯番号は既に使われていなかった。そこで坂原は探偵としての能力を駆使してなんとか里美の居場所を突き止めた。里美は田舎町の外れの小さな会社で事務をしていた。坂原は待ち伏せをしてようやく里美と再会できた。


「・・・坂原君・・・?」


「どうも。里美さん」


「何・・・?もう、終わったでしょ?さよならって言ったじゃない」


「里美さんに渡したいものがあって」


里美は周りの眼を気にして坂原を側の路地に連れ込んだ。坂原はそこで封筒を里美に手渡す。


「温田からです。部屋にありました。」


「・・・今更。もう新しい生活も始めたし・・」


「はい。読むか読まないかは里美さんの自由です。僕はちゃんと渡しましたから」


坂原はそう言うと周りの眼に付かないうちにと足早に立ち去る。里美は封筒をポケットに入れて近所の喫茶店へ向かった。


もし読まなくても、何かあった時に里美の支えになればそれでいいのではないか。それが坂原の考えだった。里美が新しい生活を始めたことも調べて分かっていた。それを壊すかもしれない。でも、人は支えになるかもしれないものをいくつ持っていてもいいのではないか。坂原は考えていた。死んだら終わりだ。生きている人には生きている間に幸福を。坂原はそういう思いで探偵として生きていこうと、この事件によって改めて誓ったのだった。


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