ユイの独白 全てを背負って生きていく
圭がアカネさんの家を出て警察に向かった後、私とアカネさんは一緒にコーヒーを飲みました。そしてしばらくしたら私は自宅に戻る予定でした。でも・・・。テレビのニュースから衝撃の情報が流れてきたのです。
「・・・え。これ、どういうこと」
私が思わずそう言ってもアカネさんは答えませんでした。じっとテレビ画面を睨んでいました。そのニュースが伝えていたのは・・・神戸市水野で殺人事件発生、被害者は温田守、犯人は温田が常連だった風俗店の店員の山田という男だということでした。それは、私たちが知っている事実とは全く違ったものでした。
「まさか・・・見られていたの・・・?」
アカネさんはそう呟きました。
「・・・アカネさん?」
アカネさんはすぐに圭に連絡を取りすぐに戻ってくるように伝えました。
「ユイちゃん、すぐにここを出て家に帰って」
「え?」
「どうなるか分からないけれど。私たちといることは危険よ。だから・・・。必ず連絡するから」
そう言われて、私は頷きアカネさんの自宅を出ました。そして自宅に戻る道中にお腹の子どものことを思い出しました。
「・・・子どもに罪は無いよね・・・」
ここから先は、社長室から助け出された時に2人から聞いた話です。
私がアカネさんの家を出た後、圭が戻ってきました。その直後、アカネさんの携帯に着信がありました。
『・・・社長だ。やっぱり・・・』
『出るしかないやろ』
アカネさんは電話に出ました。そして圭と2人で会社に来るように命令されました。そして2人が会社に向かい社長室に入ると、そこには不気味に笑う社長が座っていました。
『なぜ呼び出されたか、分かっているな』
『・・・』
『お前たち・・・いや、正確には橋川圭、お前を付けていた。なぜだか分かっているな』
『・・・私が、見たからですか』
『そうや。それで・・。今度はこっちがえらいもん見てもうたわ』
『・・・』
『俺はな、お前らが人殺そうが別に興味ない。でもな。それによってお前らに警察行かれるのは困るわけや』
『・・・私たちはそこまで利口ではありません』
『そうやなあ。そうやな。でもな。そういう利口じゃないやつほど、突拍子も無くいらんことしがちやからな。もし・・・お前らが逮捕されて、取り調べで、密売のことを話されたらどうしようもないからな』
これがまさに圭のやろうとしていたことなのでした。母を殺した覚醒剤を恨む圭はある日、水野の街で覚醒剤の密売を目撃したそうです。その時に犯人に顔を見られてしまったので自分の自由はそう長くないと思い殺人という道を選んだのでした。そして自首して覚醒剤密売の事実もそこで話そうと思っていたのでした。でも。社長にはその全てがお見通しなのでした。
『・・・』
『まあ。偶然か知らんけど、温田言う男がうちの常連で助かったわ。で、』
『・・・』
『橋川圭お前には、山田の代わりにここで働いてもらう。アカネお前もこのまま今以上に稼いでもらう。・・・従わへんのやったら、ここで殺すだけや』
そう言われて2人は従うしかありませんでした。
『1つだけ・・・話を聞いてもらえますか』
『・・・なんや』
『俺はここで働きます。その代わり・・あいつには手を出さないでください』
『あいつ・・・ああ、あの女か』
『お願いします』
『まあ。お前らが余計なことせんかったら何も無いわ。あの女は何も知らんようやし』
そしてこの後、私は圭から最後の電話を貰いました。俺は帰れないけれど余計なことはせずに安心して生きろという電話でした。後から聞いた話ではこの電話は社員の監視の元にかけたそうです。
私は1人で病院へ行き、悩み、結局子どもを亡くしました。
そして、圭とアカネさんを亡くしました。
圭とアカネさん、そしてお腹の子どもは私のために死んだようなものです。それは決して、私が逮捕されるために死んだわけじゃありません。勝手かもしれないけれど、3人の死を無駄にしないために私は全てを心にしまって背負って生きていきます。
だから。私は嘘をつきました。




