ユイの独白 運命の歯車
温田は私にキスをする直前で目を見開いて私の上に崩れ落ちました。そしてすぐに私の上から温田が退けられて、顔を上げて見た先には、圭がいました。
「圭・・!」
「見てた。連れ込まれるところ。タイミングを見計らってた。上手く・・・いったな」
「・・死んだの?」
「いや・・・。気絶してるだけだ」
「・・・なんだ、良かった」
「何が良かった、だよ。これから殺すんだよ」
「は?何言ってんの?」
「逃げろ」
「・・・嫌だよ。なんで圭が私のためなんかに殺人犯になんなきゃいけないの?」
「変わるんじゃなかったんかよ!」
圭は私の眼を見て本気でそう怒鳴りました。
「お前良いのかよ。こいつと似た者同士で。・・・お前は違うだろ。こんな奴にお前の人生を潰されたままでいいのかよ。良くないだろ。」
「・・・・・・でも」
「俺はお前を守りたいんだよ・・・大丈夫だ」
「・・・・・・」
「外に赤い車がある。暗いけど分かるはずだ。行け」
圭は私をそう言って追い出しました。外に出ると既に陽は落ちていました。目線の先には確かに赤い車が止まっており中から女性が手を振っていました。
「あの・・・」
「ユイちゃんね。乗って」
その女性は初対面の私にも気さくに対応してくれるサバサバとした人でした。
「圭は・・・?」
私が尋ねようとすると、その女性は運転しながら左手の人差し指をそっと立てました。
「余計なことは聞かない方が良いわよ。彼の決意だからね。・・・ユイちゃん、源氏名アカネって言うんやって?」
「・・・はい」
「あたしもアカネ。」
「え?」
「本名やけど。出来過ぎた偶然ってやつやね。・・・同じ男に引っ掛かるところもね」
「あ・・」
「あ、違うよ。彼女は別の人ね。」
「はい」
「なんや。知ってたん。」
「大学に、この街の仕事で学費払ってる人が居るって、前に聞いてたから」
「ああ。そんな話か。」
「でもどうして。こんなことに協力を?」
「うーん。なんかな。同じ匂いがするからかな。圭も。あんたも。でも。うちら3人の中でやり直せるのはあんただけやから。圭の大事な人なら、助けたいなって」
「・・・みんな、やり直せますよ。なのに殺人なんてしたら」
「いや・・・・。そう簡単にも行かないからね・・・」
アカネさんはそう言ったっきり黙りました。やり直せない・・・その意味を私が知るのはこのもう少し後の話でした。その後、私はアカネさんの自宅に送られました。ここならとりあえずは安心だからと1人家に入れられアカネさんはまた車でどこかへ行きました。今考えれば、温田を殺害した圭を助けに行ったのだと思います。




