ユイの独白 代わりに手にしたもの
圭に今までにあったことを全て話しました。風俗で働いていること、母が死んだこと、温田という男の家に住んでいること、そして温田にレイプされたこと・・・。
『・・・警察に行こう』
『それは・・・ダメ。警察にいろいろ聞かれるし・・・元々、私が温田を頼ったのが悪かったの』
『・・・・・なんで、家に住めなくなったとき、俺に言ってくれへんかったん・・?』
『・・・・ごめんね。でも。圭はもうこんな世界に戻って来ちゃいけないから』
『こんな世界?』
『圭は、ここから抜け出して普通の人になったんだから』
そう私が言うと圭は衝撃的なことを話し始めた。
『そんなことない。この世界から抜け出すのは簡単じゃないんや・・・。実はさ・・・俺のおかんも、半年前に死んだ。ただのオーバードーズならまだ良い方で、あの人、覚醒剤の中毒になって死んだんや。』
『か・・・覚醒剤?なんで?』
『おかんは、俺が高3の時に再婚したんや。それまでは普通でバリバリ働いてたんやけど。再婚した男が覚醒剤やっとってん。それで、まあ、流されやすい人やったし・・・2年で離婚したけど一回嵌った沼からは抜け出せんくて、その男から極秘で覚醒剤入手してたんや・・・。だから。俺が普通の人になったなんてお前の勘違いや。俺はずっとユイの味方やから』
『・・・彼女おるやん。私なんかに構ってたら巻き込んでしまうよ』
『それとこれとは別やし。あいつもユイのことは知ってるよ。写真見せたし。それにな。大学にもこの街で働いてる人がおってな。』
『え?学生に?』
『そう。自分で学費払ってるって言ったけど。まあ。お前と同じような仕事の女で、親しくしてるし。俺はいつの間にかそういう世界に繋がりを持ってないと不安になるようになってしまってるねんな・・・』
この話の後、私は圭に温田に自宅を教えてから別れました。別れ際に圭が意外なことを言いました。
『そう言えば・・・おめでとう。悲しいこともあったけど、ユイはこれでやっと前を向けるね』
そう言われて、私にとって母の存在が確かに重りだったと思いました。1人になった代わりに私が手に入れたのは自由だったのでした。私は温田の家にはもう戻れないのでとりあえず自宅に戻り母の面影を消すように徹底的に掃除をしました。
そして次の日、温田がやってきました。私がドアを開けなかったので諦めて帰りましたが、温田はその日から毎日、やってくるようになりました。




