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母の呪縛

圭とユイはアカネと別れてから、ユイのお腹の子どもにけじめをつけるために、圭は電話をかけた。そしてユイの主治医である久保と話をしたが思い通りに行かず思わず電話を切ってしまう。その様子にユイは少し呆れる。


「ちょっと・・・あんまり乱暴な感じ出したら怪しまれるよ」


「どうせ最初から怪しまれてるだろ」


「どうする?別に堕ろすなら別の病院でもいいと思うけど」


「ああ・・。そうだな。・・・・・・なあ」


「何?」


「なんで、もっと早く堕ろさなかった・・・?」


「・・・なんでそんなこと言われないといけない?」


「お前には十分に時間があったはずだ。第一・・・気持ち悪くないのか。お前」


「・・・関係ないんだよね。この子が誰の子であろうが。」


「何が関係ないんだよ」


「命であることには変わりないってこと。今、私たちは正直、自分たちの命を守ることで精いっぱい。関係ない人の命まで危険にさらしている。でも・・・ここにいるのもまた一つの命だから・・・。そんな簡単に殺せない。生きたくなくて死ぬ人間がいっぱいいる・・・でもこの子は生きたいのかもしれない・・・」


ユイは思いにふけるように言葉を切った。圭はイラつきを隠さない。


「その命は、生まれちゃいけない命だよ。お前の汚点なんだよ。」


「子どもに罪は無いでしょ」


「そうかもしれないけれど。どうして・・・お前はそんなに優しいんだよ。もういいんじゃないか。犠牲にならなくて。お前は昔から、犠牲になってきたじゃないか・・・」


「あたしは優しくなんかない・・・。ただ・・・ずるいだけ。圭みたいに決断できないの。ずっと・・・母の呪縛にとらわれている。あの人みたいには絶対ならないと思って生きてきた。でも・・・。今のあたしはあの人よりも・・・。だからさ。この子だけ殺すなら・・・あたしごと死んじゃえばいいんだって。」


「何わけわかんないこと言ってるんだよ!」


「振り出しに戻ってさ」


ユイは黙った。圭は考えて、ちょっと待ってろと言ってアカネに連絡する。そこで全てバレており作戦に失敗したことを聞かされる。そして逃げろと。圭から何か言う前にアカネに電話を切られてしまう。


「どうしたの?」


「・・・作戦は失敗したらしい」


「そう」


「逃げろって」


「あたしたちだけ?そんなバカな」


「でも・・・全員死んだら・・このことは本当に闇に葬られるどころか・・・俺達は全員悪人として人生が終わる。それよりは・・・まだ間に合うから、子どものことは逃げてから考えることにしよう」


「それなら・・・。神戸空港からどこかに飛ぼう」


「神戸空港?」


「母が、離婚した時に逃げた方法。その後またすぐに神戸に戻ってきたけど・・。落ちぶれていく私たちにぴったりの逃げ道・・・」


「そんなところまで・・・」


「行こう」


ユイは圭の話を遮り空港へ向かう準備をした。圭も納得はしていなかったが今は逃げることが第一だと考えユイの提案に乗ることにした。


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