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生け贄

社長に呼び出されたアカネと圭は社長室に向かった。そして扉を開けて絶句する。呆然とする圭を横目にアカネは叫んだ。


「社長!これはどういうことですか!」


アカネがそう言うと社長はゆっくりと振り返った。


「どういうって・・・。こういうことだよ」


アカネと圭の目の前には、ユイが座っていた。そしてその両脇に社長のボディーガードが立っていた。ユイは色を失い無表情だった。圭が正気を取り戻し社長に詰め寄る。


「・・・・手を出さないっていう約束でしたよね」


「・・あ?」


「僕らが裏切らない限り、彼女には手を出さないと」


圭は怒りに震える声で社長に詰め寄る。すると社長はにやりと笑う。


「ああ。言ったね。でもそれはあの状況での話だ。今、周りをこれだけ嗅ぎまわられていて、お前らがいつ裏切るか分からないから、人質を取っただけだよ。何。心配するな。殺しはしないさ。良く見ると可愛い顔してるじゃないか」


そう言われて全てを悟った圭は社長の前まで言って膝をつき土下座する。


「それだけは・・。それだけは、止めてくれ」


「もともとピンサロ嬢じゃないか。何を今さら」


社長がそう言って笑うが圭は土下座を辞めない。ユイが座ったまま振り向く。


「・・・もういいよ」


「ユイ・・」


「もういいから。あたし、大丈夫だから」


ユイのその言葉を聞いても圭は土下座を辞めない。そして社長が口を開く。


「・・そんなにこいつを売られるのが嫌なら、誰かこいつの代わりになる奴を連れてくればこいつは解放してやるよ。・・・私の目の前に突き出されてもお前らのことを大切な人だと言いきれる奴じゃないとダメだぞ」


社長にこういった後、一旦圭とアカネは社長室を出た。


「ごめん・・・。あたしが余計なことしたからこうなったんだ」


アカネは後悔を始める。


「いや・・・。そうじゃない。遅かれ早かれ奴らはこうするつもりだったんだよ」


「どうしよう・・・」


アカネはこの世の終わりのような顔をしてしゃがみ込む。その姿を見ながら圭は悩んだ。悩んで悩んで、携帯をポケットから取り出した。


「・・・何するの?」


圭はもう決意を固めた顔になっていた。


「代わりを呼ぶんだよ」


「代わりって。あんなところに連れていける人なんて」


「お前言ったろ」


「え?」


「守ることが出来るのは、一番大切な1人だけだって」


「・・言ったけど・・・でも」


「決めないと。何もかも失うのは、もう嫌なんだよ」


アカネは黙った。そして圭はユイの代わりになり得る、ある人物に電話をかけた。

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