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アカネの告白

坂原は時間通りにホテルへ行き部屋に入った。お金も無いのでグレードは最底辺の部屋だ。目的が目的なので豪華な部屋はいらなかった。ただ盗聴を避けるために会社側がおススメするホテルはあえて選ばなかった。いろいろな事件が重なって手薄になっていたけれど、事件が忘れられる前に温田のことを解決しなければ。そこへインターホンが鳴った。坂原は開いてますとだけ言ってベッドに座りドアに背を向けた。アカネは自分でドアを開けて入ってきた。


「どうもー。派遣されてきたアカネでーす。ちょっとドアも開けてくれないなんてひどいじゃないですかー。このホテル狭いなー。まあいいか。てか、シャワーすら浴びてないんですか?時間もったいないですよー。お客さん?」


アカネは坂原が背を向けているというのに1人で喋りまくっている。アカネが異変に気づいたのか話を辞めたところで坂原は振り返った。


「アカネさん、ですね?」


「あ・・・、あんた!」


「やっぱり・・・。この前はお店の奥にいたんですね?」


アカネは急に態度を変えてドカリとベッドの縁に腰かける。


「はあ・・。あんたも物好きね。そんなことを聞くためにデリ呼んだの?」


「職業柄仕方ないんで」


「警察?!」


「いや、違いますよ。本当はこんなことしたくなかったんですけどね。なんか悪いことしてる気分だし、財布も寂しいし・・・」


それを聞いてアカネはにやりと笑う。


「そーなんだー。ねえ。せっかくお金払って呼んでるんだし、仕事なんかやめて私と遊ぼうよ。ほら早く!」


アカネはそう言いながら坂原に乗り掛かるが坂原は上手く避ける。


「話を逸らさないでください。あなたの客だった温田について教えてください」


「・・ああ。そんな客もいたわね」


「白々しいですね。」


「何?何が言いたいの?」


「さっき言いました。温田について教えてくださいと。あなたは・・・あいつと一緒に住んでたんですか?」


そう聞くとアカネは声を上げて笑った。しかしその質問には答えずこう言った。


「あーもう。分かった。教えてあげる。」


そう言ってアカネは坂原に近づき耳元でこう言った。


「温田を殺したのは、わたしよ」


アカネはそう言うとすぐに坂原から離れた。坂原は全く動かなかった。アカネは不審そうに坂原を見る。


「あれ?驚かない?まさか予想ついてた?」


「じゃあなんで、別の人が逮捕されたんです?」


坂原は真剣な目で尋ねる。アカネはなおも笑って答える。


「それはね・・・。私が店の一番人気だからよ。私がいなくなったら今のあの店は潰れるわ。代わりに逮捕されたのはあの店の店員よ。あとね・・・私、秘密を知ってるから。取り調べで警察に話されちゃったら困るでしょ?」


アカネはそうおどけて言った。


「そんな理由で・・」


「そんな理由って結構重大な理由よ。この業界なんてそんなもんなのよ」


坂原は考え込んだが根本的なことをアカネに聞く。


「まずどうして、温田を殺したんですか」


「ああ。それはね。あいつが私の身体をタダで弄ぼうとしたから。私の身体はタダじゃないのよ」


「でも、目撃者の証言ではもう1人共犯の男がいるはずです。あと、タダでってそれはつまり同棲していたってこと」


坂原が言い終わる前にアカネは坂原の口を塞いだ。うるさい子どもを黙らせるように。坂原が力ずくで離す。


「答えて」


坂原が話そうとするとまたアカネが唇を重ねてくる。そして今度はアカネから離れた。


「もう私が話せることは全て話した。これ以上は・・もう詮索しないでくれる?」


「そんなこと・・。これを警察に話せば」


「それはどうかな。冤罪を認めるわけないじゃない。私も認めないし、第一もう証拠は無いから」


坂原が再び問い詰めようとするがアカネは立ち上がり荷物をまとめる。


「今日はこれでおしまい。今度はぜひ普通の取引で」


そう言ってアカネは部屋を出ていった。狭い一室に1人残された坂原はその場でパソコンを開き仕事を始めた。


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