腐れ縁の男たち
池橋は凛久から妙なメールを受け取り、患者のプライベートをむやみに詮索することは出来ないと返信していた。しかし返信した後からもどうにも気になり仕方なくあいつらに聞いてみることにした。
「なんだ。お前ら2人暇なのかよ」
「暇なわけないだろ。人呼び出しといて何言ってんだ」
「まあまあ来宮。池橋の減らず口はいつものことじゃん」
間髪入れずに池橋に噛みついた来宮をなだめたのは血液内科医の神坂だ。先の事件では意外な大胆な行動で事件解決の糸口の1つを作った出来る男である。
「で、いったい何の用だよ」
来宮が話を急いてくるため池橋は無駄話もそこそこにして話し始めた。
「いや・・・。お前らさ、真柄ユイっていう患者、知ってるか」
池橋がそう聞くと、2人は一瞬考えたがすぐに答えが返ってきた。
「知らないな」
「僕も知らないね」
「そうか・・・。ならいいや」
「え。なんだよそれ。凄い気になるよ。・・・てか、患者のプライベートを詮索するのはよくないだろ」
「分かってるよ。分かってるよそんなこと!来宮お前ほんと正論ばっか言ってると嫌われるぞ!」
「誰にだよ」
「分かんねえよ!」
「なんだよそれ!」
どうでもいいことで熱くなっている2人を神坂は呆れて見ている。
「まあまあ二人とも。こんなところでやめようよ。で、池橋。あれか。伊沢さんか」
「・・・まあ」
「ああ?ということは間接的に坂原からの話ってことか」
「いや、それはどうかな。坂原も知ってる話ならこんな形でメールなんてしてこないだろうし」
「なんでまた患者なんかを」
「分かんねえよ。」
「よく分からないことに協力するお前の気持ちが俺は分からないよ」
「お前・・・犯人の女守って撃たれるお前の気持ちの方が分からないね!」
「蒸し返すな!」
「もう池橋、それはやめなよ」
「・・・で、名探偵の助手・伊沢凛久はなんて言ってるんだよ」
「答えられないって素っ気なくメールしたら返信が無い・・・」
「バカだな」
「池橋って本当に不器用だよね」
「うるせえよ。・・・知らないならもういいよ。悪かったな呼び出して」
池橋は2人にそう言うと一足先に帰っていった。すると残された二人にある人物の後姿が見えた。
「あれ・・・。久保先生だ。近くに座ってたんだね」
「全然気づかなかった。なんか・・挙動不審じゃないか?」
「うん・・・。ちょっと変だよね」
久保はいつもの落ち着いた感じでは無く、きょろきょろと挙動不審な動きをしてスタッフ専用ルームに繋がる扉の向こうへ消えていった。不思議に感じた神坂と来宮だったが、そう言う日もあるかという結論になり2人も病棟に戻った。
久保はスタッフルームに戻った後、急いで着替えてある場所に向かった。
「すいません」
「あ・・。はーい。って・・・久保先生・・・ですっけ?」
「どうも。あの・・・伊沢凛久さん、いますか」
「あ、はい。りっちゃん?」
そう呼ぶと奥の給湯室から凛久が出てきた。
「何ですか。坂原さんがコーヒー飲みたいって言うからお湯を・・・あれ?」
「すいません突然・・・」
「あ、まあ、どうぞ座ってください。りっちゃん、お茶・・」
「ああ。分かりましたよ。丁度お湯沸かしてるんで!」
「ああ・・・。 すいませんね。どうにも気が強くて・・・」
凛久がお茶を持ってきて3人向き合うように座った。
「あの・・・。ちょっとお願いしたいことがありまして」
「何でしょうか」
「この・・・女性の相手の男を探してほしいんです」
そう言って久保は一枚の写真を見せた。するとすぐに反応したのは凛久だった。
「あ!真柄ユイ!!」
「すみません。実は池橋たちの会話を聞いてしまって・・ここに来たんです。伊沢さんが真柄ユイを探していると知って」
坂原はその話を怪訝な顔をして聞いている。
「あ・・。探しているっていうか。誰なのかなって。この前病院であったんですけどね」
「真柄ユイはうちの患者なんです・・。子どもの相手の男が、もういないと言うんです」
「子ども?!」
「ええ。産婦人科の患者なんですよ。それで・・。その。もういないという言い方がどうにも気になって。彼女の相手の男を知りたいんです」
凛久が頷いていると、坂原が口をはさんでくる。
「でも、患者さんを詮索するなんて・・。」
「そう、なんですけどね。」
久保は困ったような表情で苦笑いする。久保の少し泣きそうな表情を見て坂原も黙る。そして久保からの依頼を一応受けるという話になり久保は帰っていった。
「まさか。勝手に池橋に頼んでたなんてね」
「良いでしょ。これは私の問題なんだから」
「この瞬間からりっちゃんだけの問題じゃなくなったからね。」
「それは良いことでもあり悪いことでもある気はする。あのね坂原さん」
「ん?」
「あたし・・。もう分かってるかもしれないの」
「何が?」
「真柄ユイの相手。比奈の失踪した彼氏・・橋川圭かも」
凛久のこの発言から2人の会議が始まった。




