ダンジョン攻略:前編
さてこの世界に来た時に始めに知ったダンジョンにきました。Sランクダンジョン、ガマルの塔です。雲の上まで続く白亜の塔は人々に興奮を与え、また果てし無い道のりを示しています。僕はその道のりを歩み始めました。
僕はこのダンジョンを攻略するにあたって空間魔法は使わないことにしました。ダンジョンを把握すればモンスターの場所も罠の位置もダンジョンの最短ルートも全て分かってしまいます。どうせ最後のダンジョンです。楽しみたいじゃないですか。
中へ入るとお城のエントランスのような見た目です。豪華なカーペットの敷かれた地面から騎士の見た目をしたモンスターが次々と生まれます。そのモンスターに向かって歴戦の猛者達が戦っています。
「陣形を乱すな!攻撃くるぞ3、2、1『シールドバッシュ』」
これまでとは段違いに敵が強いようですね。一階層で激しい戦いが繰り広げられています。それに今までは違い上へ登るようです。大きな階段が見えます。大勢の敵も見えますが。僕は階段に向かい歩き始めます。
「なんだお前は!そこにいると邪魔だ危ないぞ!」
今僕は剣戟の乱れる戦場にいます。人もモンスターもすぐ近くで戦いあっています。
「初心者か死にたがりかわからんが構わないこんなとこにいるのが悪い巻き込んでもいいから敵を斬り伏せろ!」
確かにその軌道は僕をかすめます。大剣を振り鎧ごと切り伏せる攻略者が僕がいることなど御構い無しに敵を屠ります。僕も御構い無しです。壁に鉄球が物凄い速さでぶつかったような音が鳴ります。盾でガッチリと固めたモンスターを盾の上から殴ります。盾が一目でもう使えないと分かるほどひしゃげます。
ただ僕はまっすぐ進みます。剣を頭で受け止めて殴ります。盾で殴られ殴ります。槍で突かれ殴ります。槌で叩かれ殴ります。鎧など紙であるがごとく殴り飛ばします。そんな僕の様子を見てかさっきまで敵に向かっていた猛者達も呆然としています。
「なんだあれは新手のモンスターか?」
「リーダー、あいつの進んだ道はガラ空きだあそこから進みましょう。モンスターだろうがバケモンだろうが良いじゃないですか俺たちは攻略者だ今日こそ最終階層を更新しましょう」
僕は二階へ上がります。見た目はお城の廊下です。廊下には扉があります。どうやら部屋があるようです少し見て見ましょう。
ダンジョンにしては精巧な作りです。まるで本物お城を持ってきたかのようです。一つ一つの部屋全てに家具が置いてあります。もちろん家具だけではなくモンスターもいますが。今もベッドに擬態したモンスターがいたのでベッドを二つに折りました。
さてダンジョン名物の宝箱ですテーブルの上に置かれていました。僕は宝箱を開きます。これは鍵でしょうか黒ずんだ鉄製の輪に鍵いくつも付いています。どこかの鍵かもしれません持っておきましょう。他の部屋を全て調べれたら次の階層へ行きましょう。
他の部屋には武器や防具などばかりで面白そうなものはありません。今までは一直線に最終地点に向かっていましたからこうやってじっくり調べるのも良いものです。階段を上がっても同じような作りが続きます。変化といえば騎士の数が増えていることぐらいです。そしてようやく十階層にてこれまでとは違うモンスター所謂中ボスがいました。
『ここまでたどり着くとは中々の使い手とお見受けする。是非手合わせを。』
驚きました。言葉を話すモンスターがいるのですね。これまでの騎士と同じような格好をしていますがその鎧には数々の傷が刻み込まれボロボロのマントをたなびかせています。その体は大きく二メートルはありそうです。大楯と大剣を片手ずつ持ち剣を前に礼をしています。これまでの騎士の頂点といったところでしょうか。前の世界の騎士団長を思い出しますね。どうせなら剣で戦いたいですね。生憎と剣を持っていません取ってきましょう。
「少しだけ待っていてください。今剣を持ってきます。」
『これは失礼。無手で戦う人かと思ったのだが違うようだ。武器も持たない相手と戦うのは流儀に反するここで待つが故安心して取ってこられよ。』
本当にモンスターらしくありません。敵を前に武器を取らせるとはますます好感が持てます。さて急いで取ってくるとしましょう。一つ下の階層に大剣の入った宝箱がありました。 これですこれ。黒曜鉄でできた大剣です。これなら少しは持つでしょう。
「お待たせしました。」
鎧で見えませんが目をパチクリとしているように思えます。
『いつ取ってこられた?いやどうでも良いことだ。さぁ戦おう存分に私の死に場所はどうやらここらしい!』
力強い踏み込みです。床が削れています。僕は真正面から大剣をかち合わせます。火花が散ります。本当にダメですね僕は相手との力が違いすぎていつも力だけでどうにかしようとします。せっかくの技が泣いてしまいますね。
さて壁に埋もれた騎士はまだ生きていますね。良かった剣が壊れないように力を抑えた甲斐がありました。かち合わせた後ついつい吹き飛ばしてしまいました。
『素晴らしい力だ!どうやら挑戦者は私の方らしい!胸を借りるぞ攻略者よ!』
「ええどうぞ」
大剣の軌跡が舞います。腕が霞めばもう次の攻撃へ転じています。楽しいですね思わず口角が上がります。もっと速くもっと速く、その思考を反映するかのように剣戟はどんどん速くなります。騎士もそれに呼応するかのように速くなります。
ここで騎士が仕掛けます。大楯で僕の剣を弾きます姿勢のずれた僕に大剣が唸ります。このままでは僕は切られてしまうでしょう。一つ技を見せましょう。
騎士は空を切ります。必ず当たるはずだった僕は横にずれています。騎士は慌てて剣を戻し構えます。
『一体?』
「距離感をずらしました。方法は内緒と言っておきましょう。ついでにもう一つ技を見せましょう。」
僕は騎士の横を通り過ぎます。後ろでは騎士が膝をつき倒れています。
『大盤振る舞いだな。今度は何を?』
騎士がか細い声で疑問を投げます。
「通り過ぎざまに十六回切りました。それだけです。」
騎士が咳き込みながらも笑います。
『ありがとう。これほど興奮した戦いはない。私は満足だ。満足して死ねる。』
「そうですかそれは良かった。僕も楽しかったですよ。」
僕は騎士の亡骸の横に墓標のように大剣を突き刺します。そして僕は振り返らずに階段を登ります。
次の層は一風変わった場所ですね。牢獄のような場所です。壊れた檻からグールが出てきます。これはつまらない場所ですね。騎士達は知能があり策略を練ってきましたが知能のないモンスターは単調です。ところどころ聞こえる叫び声は薄暗さと相まり恐怖を感じるのでしょうが、全く怖くありませんね。偶に踏んだ時に落ちてくるギロチンは面白いですが。
上へ向かって進んでいると閉まっている檻の一つに見たことのある鍵穴があります。これは下でひろった鍵で開きそうですね。僕は黒ずんだ鍵を差し込み檻を開けます。そこには一人の男がいました。
『アァーありがとう出してくれてヨォ〜。礼に殺してやるゼ』
自分の体のいたるところにナイフを刺した男です。よく死にませんね。
男はナイフを両手に切りかかってきます。僕は軽いステップで避けます。
『ガマルの野郎がヨォ閉じ込めやがったんダ。俺が殺し過ぎとか言ってヨ。おかしいよなァ?俺たちは攻略者を殺すために生まれたんだゼ。だからお前も死ネ』
「いやです。」
僕はナイフの刺さった頭を握り潰します。ズルズルと男が倒れました。さて部屋を調べましょう。
『酷いことするもんだゼ。』
驚きました。頭が潰れても喋れるとは。潰れた頭に代わり新しい頭が生えます。
『俺は不死なんだゼ!だから俺は負けねェ!だから死ネ!ギャハハハハ!』
「だったら永劫の苦しみを味わうといいです」
ちょうどいいところにアイアンメイデンがありますね。
『そんなもんどうってこと...いてぇ!やめろ!どうして痛てぇんだ!』
「この中でずっと生きてください。どうやら痛覚がないようなので治しておきましたサービスです。また痛覚が無くなっても治るようにしておいたので安心してくださいではさようなら。」
『やめろやめろヤメロォ!痛いのはイヤダァ』
男の叫びも虚しくアイアンメイデンは閉じます。中の鉄の針を赤く染めながら男はずっと生きるのでしょう。果たして不死がどこまで不死といえるのでしょうね。
僕は上へ行きます。
さて二十階層にきました。次の中ボスです。制服を着たキッチリとした人です。いえモンスターなのでしょうね。黒い制服を着たモンスターは獄卒の様です。
『貴様が攻略者か。久しいなここまでくるのは。ここから生きて帰れると思うなよ。ここは監獄。貴様に待ち受けるのは処刑のみ。』
獄卒は金棒を持ち僕の頭を殴ります。その金棒は逆に凹みました。
『ムッ』
僕は獄卒を殴ります。固い感触が返ってきます。本当にこのダンジョンには驚かされます殴って死んでいません。
『どうやら俺に貴様は殺せないらしい。今の打撃で肋骨が全て折れた。体の丈夫さには自信が有ったのだが。貴様はガマル様の脅威になりそうだせめて一矢報いるとしよう。』
獄卒の目が赤く光ったと思うと服が破れるほど筋肉が盛り上がり獄卒の体がみるみるうちに巨大になります。どうやら獄卒の正体は鬼だった様です。
その大木の様な腕を振り下ろしてきます。のその知性の感じられない攻撃は理性が残っていないことを示しています。つまらないです。
僕は拳に合わせ腕を振りぬきます。
鬼の体が全て弾け飛びました。ついでに壁に大きな穴が空きました。青い空が見えます。




