六番目の世界:ダンジョニア
次に僕が降り立ったのは見覚えのある世界でした。しかし、かすかに面影が残っている程度でしょうか。
老朽化した巨大な建物、ひび割れたモニター、ノイズが流れるスピーカー、どれもこれもがかつての繁栄していたダンジョニアとは違います。
綺麗な街並みはくすみ、汚れきった道を進みます。脇には虚空を見つめるおじさんがいました。
「お久しぶりですボルサさん」
「あぇ?あぁお前さんか」
ここに来たばかりの僕にダンジョン攻略者とは何か教えてくれた優しいおじさんは見る影もありません。固まった髪が乱れ、攻略者に相応しい体はやせ細っています。
「しばらく見なかったが生きていたんだな。もう三年になるか」
「三年の間に何があったんですか?」
「お前さん三年の間に何があったか知らないってことは田舎者だな。このやり取りも久しぶりだな。久しぶりに笑ったよ」
ボルサさんは乾いた笑いをこぼします。
「三年前、ガマル様のダンジョンが何者かに攻略された。そうあのガマル様のダンジョンがだ。驚いただろ。そうでもなさそうだな。
話を続けるぞ。あの時心が踊ったよ。不可能と思われてたダンジョンは攻略可能だったんだってな。だけどダンジョンに着いたら驚いたよ。全部ぶっ壊れてたんだ。全部だよぜーんぶ。さらに驚いたのが地下があったことだな。これまで俺たちは登ってたんだぜ。最上階がクリアだってな。でも実際は最下層がクリアだぜ笑えるよな。
だけどなもっと笑えるのが俺たち人間の欲望さ。今なら誰でもクリアできるんじゃないか?誰かが言い出したよ。その噂はどんどん広がっていった。だって実際攻略できたんだ。連日連夜人が並んだよ。最下層まで降りるだけでクリアだもちろんこの俺もな。だけどさそんなに人生ってのは甘くは無いんだよ。クリア報酬、俺の時はこんなのだったぜ」
差し出された手のひらには枯れかけの薬草が載っていました。
「ガマル様は言ってたよもうこれだけの力しか残ってない。そのうち力は尽きるだろう。もうダンジョンを再建する力はない。このままクリアする者が増えればいずれ死ぬと。どうやらダンジョンがクリアされればどんな時でも願いを叶えなければならないらしいぜ。そんな力も残ってないのにな。それでも並ぶ人は減らなかった。そしてその時は訪れるべくして訪れたんだ」
ボルサさんは枯れかけの薬草を握りしめました。
「そしてガマル様は死んだ」
これ以上言うことは何もないかのようにボルサさんはまた虚空を見つめ始めました。
ダンジョンによって回っていた世界はダンジョンが消えたことによって滅んでしまいました。
僕はかつてのダンジョンの最下層に転移しました。
そこには干からびたカエルが倒れ伏していました。ガマルです。
「僕はこのダンジョンをクリアしない方がよかったんですかね?未だに僕の願いは叶ってないですよ」
問いかけても死人は何も返しません。
「これは返します。」
僕はダンジョンの力の結晶であったデュランダルを差し込み次の世界へ行きました。




