界賊船3
僕と創造神が滑るように船内を駆け巡ります。複雑な船内ですがかつてのダンジョンと比べれば簡単なものですね。ダンジョンは人を惑わし迷わす物でしたが船は人が使う物です。ただ広く目的の場所まで遠いだけですね。
途中の下っ端の界賊をなぎ倒し操舵室へとたどり着きます。
「なんだ貴様らは!」
木製に見える舵の後ろで踏ん反り返るように深く椅子に座り込んでいる船長らしき人物がいます。左目に縦の傷が入っているのが特徴的です。
「あなたが船長ですか?」
「だったらどうする?見たところ貴様らカプセルから脱走した奴らだな。ゲルトを向かわせたはずだがどうなっている」
船長が部下に命じモニターを映すと、僕たちがいたカプセルの部屋の様子が映っています。
そこには乱雑に壊れたカプセルに穴ぼこの床と壁、そして黒ずんだシミがありました。
「破壊神のやつあの力を使ったようじゃの。お主ら残念じゃったの。ゲルトとやらはもう居らんよ。どこにもな」
モニターが消えて船長の方へ向き直ります。
「チッどうやらそのようだ。ゲルトの生体反応がどこにもない。貴様ら神を見くびっていたようだ。いいだろう半殺しにして構わんバリスネリアやれ」
「仕方ねぇな」
船長の後ろに控えていたサングラスをかけた界賊が出てきます。
「シロ奴じゃ。この声は儂を捕らえたやつじゃよ」
創造神の顔が強張ります。力を発揮できなかった時とはいえ一度なすすべもなく捕まってしまった恐怖もあるのでしょう。
「じぃさん久しぶり...と言うほどでもねぇか。抵抗するなら容赦しねぇぜ」
「あの時のようにはいかんぞい」
創造神が前に出ようとしますが僕は手で制しそれを止めます。
「震えていますよ創造神。万が一があります。僕は創造神に聞かなければならないことがあるんです。ここは僕が終わらせます」
「シロ...よいのかの?」
僕は頷きます。
「神種でもねぇ奴が何をほざいてる」
「おかしなことを言いますね。貴方も神では無いでしょう」
「確かにな。まぁつまりだ俺はお前を生かす理由はないんだぜ」
男が口を歪ませたその時に僕の足元から槍のような草が飛び出てきます。不意打ちになされた攻撃は誰も予想だにしてませんでした。
「残念だったな。ここ全て俺の攻撃フィールドだ」
「残念でしたね。僕は全てが攻撃フィールドですよ」
草は僕にあたる直前で止まりました。攻撃を仕掛けた張本人はと言うと姿はありません。途端に船の警報が鳴り響きます。
「船長!全センサーが異常な数値を示しています!」
「船のコントロールが効きません!」
「ええい!警報を切れ!バリスネリアはどうした!」
「消しました」
「は?」
混乱する船内で僕は淡々とと答えます。
「ですから貴方がバリスネリアと呼ぶ男は消しました」
「冗談はよせ!奴は我らグリード界賊でも随一の実力者だぞ!本部からわざわざ来てもらったんだ。そんな奴を消す?なんの冗談だ!」
船長は消えた男をどうしたと喚き散らします。
「冗談ではないですよ。こうしている間にもほら周りの人が消えていきますよ」
船長に報告している人が目の前で消え、船のコントロールを戻そうとしている人が消え、どんどんどんどんどんどん消えていきます。
「ひっ!止めろ消すな私を消さないでくれ!」
周りの人が消える恐怖とはどんなものでしょうね。次に消されるのは自分かもしれないと言うのですから。
そして船長一人だけになりました。
「分かった要求はなんだ。なんでも叶えようじゃないか。なんなら界賊に入るか?私が上に掛け合ってもいい」
僕は右腕を消します。
「ぎゃあああ!許してください!消さないで!」
「そうですね。じゃあ本部とやらにこう報告してください。今回神種はいなかった。とんだ無駄足だったと。」
「分かった言う通りにします。」
「そして貴方達界賊が再びこの一帯に近づいた時には今度こそ消しますよ」
「二度と近づきません!」
そうして船長は一人へたり込みました。ちゃんと報告してくれますかね。少し心配です。
「じゃあ帰りましょう」
「そうじゃの。それにしても凄いのシロ。じゃがあのやり方は感心せんぞ。魂も何もかも消したじゃろ。世界のバランスが崩れてしまうわい」
「今度から気をつけます」
そして僕と創造神、そして船内で迷っている破壊神を楽園へと転移させました。
◇◆◇◆◇
再び楽園へと戻ってきました。ただし荒れ放題ですが。
「やっと戻ってこれたわい」
「何だ!?急に戻ってきやがったぞ!どうなってんだ!」
創造神が一息つくのに対し破壊神は戸惑っています。
「さてシロワシに聞きたいこととはなんじゃ?」
「この楽園の記憶を見た時。以前僕はここにきていたようなんです。その時に創造神にも会っていました。創造神とあった時創造神は僕のことを知らないと言いましたがもう一度聞きます僕のことを知りませんか?」
創造神は深く考え込みます。再び顔を上げると
「いや知らんて」
「ですが僕と創造神は会っていますよ?」
「知らんもんは知らんて」
本当に知らないようですね。知っていたらわかりますし。ではあれは一体?そうだ
「これならば何か知りませんか?以前に僕がしていたことです」
世界の記憶で僕がしていたことをなぞります。割れた浮遊島を直し以前の楽園へと戻していきます。荒れた大地を戻し楽園を作り直します。
「おぉ...!これは!」
「何か思い出しましたか?」
「爺様!爺様の言っていた通りじゃ!」
「爺様?」
「そうじゃ儂が創造神になる遥か前、爺様が言っておったのじゃ。この楽園の創世記何もないただの浮遊島を楽園へと変えてくださった方がいらっしゃると。その時から楽園は儂らの使命は始まったんじゃと」
「その爺様はどこにいますか?」
「爺様はもう楽園へと還られました。もういませぬ」
「そうですか...」
僕は以前にきたようですが、ここでも僕の意味は見つかりませんでしたね。
「では僕の用事は無くなりました。そろそろ行きます」
「儂ら神々一同シロ様に感謝しております。何かあれば何でも行ってくだされ。直ぐに駆けつけますぞ!」
まぁそう急ぐこともありませんね。
僕はいつものように光に包まれ次の世界へと旅立ちます。




