白い死神
一部の兵士は戦後処理に追われていますが見事勝利を収めた私たちは祝勝会を開いています。
「今夜は無礼講だ好きなだけ飲め!」
司令官からの言葉に兵士たちが酒を浴びるように飲みます。聞こえてくる言葉には料理が美味しいという言葉もあります。僕が改善した効果が出てきたようです。酒に酔っているのか勝利を収めたことなのかわかりませんが泣いている兵士も見えます。
「ここで今回の大会の英雄を言っておこうと思う。シロ殿だ!」
酒を飲んでいることを感じさせない顔で司令官が僕を呼びます。そして盛大な拍手とともに前に出ました。
「知っているものも多いと思うがシロ殿が敵司令官を倒した!シロ殿が倒してくれなければ私たちは負けていたかもしれない!その戦いを振り返ってみよう!」
その通りに言葉とともに前のスクリーンに僕の戦いが映し出されます。どうやら司令官が撮っていたようです。その映像を見た兵士たちの感想は様々なものです。奴はサイボーグか?あんな風に動けるのか。敵司令官って狂乱のパルサーだったのか。すっげぇー。などです。
すると司令官が近づき小さな声で言いました。
「シロ殿の力を疑問視する兵もいたからなこれでシロ殿が疑われることはないだろう。これからも頼むぞ英雄殿」
司令官はそう言うと離れ兵士たちに混ざり飲み比べ大会を開いています。みんな楽しそうです。僕も混ざりましょう。
「次は僕が相手です」
「これは手厳しい。みんな英雄殿を飲み潰すぞぉ!」
「「「オオ!」」」
そうして一晩中飲み明かしました。
◇◆◇◆◇
再び目覚めたのはけたたましいサイレンの音でした。
「何事だ!」
「報告申し上げます!現在ガンダタダ帝国より敵兵を発見。総数約一万機です!」
「一万機だと!?やつら今まではお遊びだと言うのか!」
どうやら昨日僕たちが勝ったことでガンダタダ帝国の逆鱗に触れてしまったようです。その結果徹底的にテレステルを潰すつもりでしょう。敵兵一万に対し僕たちは今数百人です。それも酔いつぶれた兵士です。みんな絶望の表情をしています。この状況僕が活躍するには御誂え向きですね。
「皆さん落ち着いてください大丈夫です」
僕はみんなの酔いを覚ますとともにテレステル国民全員の脳内に語りかけます。
「一万機程度問題ありません。ここには誰がいると思っているんです?僕がいます」
僕の言葉がみんなの心を鼓舞し恐怖を払拭し戦意を取り戻させます。
「皆さんはここを守ってください。僕が全て殲滅しましょう」
僕が歩き出す音とともに兵士たちの叫び声が響きます。何がガンダタダ帝国だ。何が一万機だ。俺たちは誇り高きテレステルの兵士だ。こんな逆境で負けたりするものか!と慌ただしく動き始めます。
「これを持ってけ」
「これはなんですか?」
司令官から鍵を渡されます。
「かつて世界最高の機体装甲技師が作ったとされる戦場決戦兵器、火之迦具土の鍵だ。今まで誰一人として乗れるものはいなかったがシロ殿なら乗りこなせるだろう」
「ありがとうございます」
僕に背を向けひらひらと手を振ると兵士たちに命令を下しに行きました。僕は火之迦具土の元へ行きます。急がないと敵兵がこの国についてしまうため転移します。
目の前にあるのは三階建ての建物ほどの機体装甲です。洗練されたフォルムは動きを妨げず、白の装甲が敵に恐怖を抱かせます。僕は早速乗り込み発進します。
空中に出て飛び込んできた光景は圧巻の一言です。空を埋め尽くすほどの機体がこちらに向かっています。その中へ僕は飛び込みます。
真っ赤に熱せられた右手の剣がエンジン音とともに爆速します。電磁フィールドなどないが如く紙のように相手を切り裂きます。一撃必倒で空中に次々と爆発が起きます。敵艦から通信が送られます。
「何を奴らに良いようにされている!敵は何機だ!」
「それが一機です!」
「馬鹿なたった一気に我が軍が翻弄されているのか!どこかにステルス機がいるはずだ!」
「それがどこにもいません!こちらの索敵を避けられる技術はないはずです!」
「本当に一機だけだと言うのか!?」
「そうですよ僕だけです」
「誰の通信だ!」
いつかのように敵の通信に割り込みます。
「今からあなた達を殲滅します」
「ええい!さっさと殺せ!」
姿は見えませんが真っ赤になった顔が想像できます。
敵が一斉に僕に銃口を向けます。そして一斉掃射されました。背中から白い粒子を出しながら僕は紙一重で全て避けて行きます。速度はどんどん上がり音速を超えました。その速度のまま敵を切り刻んで行きます。次々と起こる爆発は汚いものですが何処か爽快感があります。
そんな折僕の斬撃を止める機体が現れます。
「まさか俺の建御雷神と同等の火之迦具土を操るパイロットがいるとはな」
バチバチと放電しながら色違いのようなよく似た機体が現れます。速さは僕の機体を上回っているように感じられます。そしてその機体が現れれば敵機体が僕の狙いを外れ再び進撃を始めました。僕がそちらに向かいますが建御雷神が前を阻みます。
「おっとお前の相手は俺だ。散々暴れまわってくれたようだが俺が来たからにはもう好きにはさせん。」
このままではテレステルに軍勢が行ってしまいます。僕の力を使えば一掃できますがこの機体だけでやりたいです。そうして敵と睨み合っているとテレステルから通信がきます。
「俺たちは気にせずシロ殿は好きに戦ってくれ。俺たちは大丈夫だ。これまでだって撃退してきたんだ今回だって撃退できる。だからシロ殿は好きにやってくれ」
司令官がそう言っているんです信じましょう。僕は目の前の敵に集中することにしました。
「やっとやる気になったようだな。だがその覚悟は無駄になるぞ」
相手がくつくつと笑います。笑いが止まるといつの間にか前にいます。僕自身は見えていましたが僕の反応に機体が追いつきません。この機体は電磁フィールドがないため全て避ける必要があります。相手の機体はゼロからトップスピードまで一瞬で出せるようです。迫る刀身を何とか爆発でいなし距離をとります。
「このスピードについてこられたのはお前が初めてだ。褒めてやる。だがこれはどうかな」
相手が銃身をあげこちらに構えた瞬間この機体では追いつけない速度で銃弾が発射されます。
瞬間僕の機体に静かに穴が開きます。貫通力が高くて助かりました。コアを狙われましたが機体をずらし僕に誘導します。そのまま僕が銃弾を掴みことなきことを得ました。
「レールガンを防ぐか。お前は間違いなく一二を争うパイロットだな。お前のような奴がテレステルにいるとはな」
一方的にやられるのも癪です。僕は同じように銃身をあげ撃ちます。
「お返しです」
「そんなもの簡単に避けられ...なっ!」
速度は劣りますが十分に早い弾丸を放ちます。相手の機体はどうやら一直線はとても速いようですが一度移動すれば急な方向転換はできないようです。一発目は避けましたが本命は二発目です。避けた先に撃ち込んでいました。弾が当たったところが爆発します。
「やってくれるじゃないか。さぁもっとやろう!」
相手の超速の動きを読み剣を弾いていきます。時折銃弾が混じりますが先に動きが読めていれば弾くか銃身自体をずらしています。剣戟が響くにつれ相手の動きを把握していきます。そして機体の剣に僕の剣術を乗せることができるようになりました。
相手の機体はボロボロたいして僕の機体は一つ空いた穴だけです。
「次で決めましょう。どこからでもかかってきてください。僕は真正面から受けましょう」
「ハァハァ、クソォ!」
上段から相手がこれまでの最高速で飛び込んできます。僕は腰にしまうように剣を持ち爆発力によって一気に抜きはなちます。
「お前の勝ちだ」
建御雷神は斜めに両断され爆発しました。最後に僕は早さでも勝りました。
「さぁ絶望の一撃を放ちましょう」
僕は空に浮かぶ巨大戦艦を見上げました。




