表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と喜びと絶望との繰り返し  作者: 青木 綾
3/5

昨日の彼は、、

翌日は夢で昨日の夜の事を見て魘されて起きた。嫌な気分と不安な気持ちだった。今日が日曜で本当に良かったと思った。しかし、フツフツとユウスケへの怒りの気持ちの方が湧き出して、居ても立ってもいられなくなって、なんとかこの気持ちを誰かに話したいと思った。思い浮かんだのは昨日の彼。名前も覚えてないし、顔しか分からない。彼に話したとしたら、きっとまた、人上のくせに甘いとかなんとか、言われるんだろうな。と呑気に考えていたけど、現実的に考え直して、被害届を出しに行こうと近くの警察署へ行った。警察官からは、「あなたの証言と被害届は強姦未遂容疑の件で受理します。しかし、事件が起きたその場で近くの署に行った方が犯人もすぐに見つかったでしょう。ここは神奈川県だから、渋谷署に移管して、犯人が見つかり次第ご連絡しますから。」という返答だった。無理もない。事件当日に渋谷署へ行っていれば直ぐにでも捕まったかも知れない。ユウスケと言うのは、ユーザーネームだったし、モンタージュも何処にでもいそうな顔になった。女性警官は私を慰めてくれ、その時、悲しみや苦しみが込み上げてきた。涙と共に昨日の事が脳裏から離れない。こんな時、誰かが居てくれたら良いのに。。と浮かんだのはやはり、昨日助けてくれた彼。取り敢えず、家に帰って落ち着きを取り戻して、また、あのコミュニティサイトを見てみる。「はっ!昨日まであったユウスケがメンバーから居なくなっていた。」私は恥ずかしい気持ちを抑えながら、管理人さんに連絡をし、昨日会った事をメッセージで送った。すると、返答は意外なものだった。

「昨日は、大変だったね。ユウスケは、昨日初めて来てた奴で、最初はいい奴かと思ってたんだけど、ろくでもない男だったね。あいつには俺も腹が立ったから、強制的に退会させたんだ。サイト側の全体管理をしている方へも報告しておいた。それと、今後一切、そういった、事件や人を不快に思わせるような言動が見られたら、強制退会と警察への通報も警告として、コミュニティの掲示板に載せておくよ。」

「はい。ありがとうございます。でも、しばらく時間はかかると思います。」

「うん。無理しなくて良いよ。気が向いたらまた来てよ!普段はもっと良い集まりだし、他のメンバーも仲良く楽しくやってるんだ。辛い思いをさせちゃったね。これで終わりだったら、申し訳ないし、もっとこの音楽仲間の良いところを見てもらいたいから、もし機会があったらまた、懲りずに参加して。」

「分かりました。」

「ところで昨日はちゃんと帰れたかな?一応改札までは見送ったつもりだったんだけど、君も混乱していたみたいだったし。」

「え?昨日?改札?もしかして、昨日助けてくれた方ですか?」

「あ、そうそう。俺、管理人もしてたんだ。ユーザーネームはkeyだけど、名前は圭太だよ。よろしくね。ロココさん。」

私は顔が赤くなってくるのを感じた。これまでオフ会への参加から、会場への行き方やどんな感じなのか、やり取りをしていたのが昨日の彼だったなんて。飲み会やカラオケで、ずっと気になっていた彼だったなんて。。しかも、あんな現場を見られて、、見られたくなかった。普通に出会いたかった。また、悲しさと悔しい気持ちが再燃した。ユウスケさえいなければ、あの時間まで残っていなければ、こんな事にはなっていなかったのではと思うと、悔しくてたまらなかった。幸い、助けてくれたのが彼だった事には感謝しているが。彼にはきちんと感謝の気持ちを伝えたいな。あと、諸々の気持ちも聞いてくれるなら。淡い期待を込めて、「あの、昨日はありがとうございました。なんとお礼を言っていいのか。本当に助かりました。あの後はちゃんと家には帰れたけど、まだ、気持ちは消化不良って感じで。。」その後もツラツラと昨日の事件の流れや当時の興奮と楽しさの気持ちとかその後の自分への罪悪感とか、色々話した。彼はただただ聞いてくれて

「そっかぁ。」「そうだね。」などの返答だけだったが、それが仮に返事半分だったとしても私は伝える事の方が必死で、伝わっていれさえすればいいと、気持ちを伝えていた。

一通り、私の話が終わった後で、彼から提案があった。

「ロココさんには、辛い思いさせて、このコミュニティにも嫌な思いしかないかもしれないけど、もし良かったら、俺と俺の知ってる同じ仲間の男と女子と5人くらいの飲み会に来てみない?女子も男子も俺含めて同年代の人達を揃えるし、3年くらいは一緒にいる奴らだから、絶対に変な奴はいないから。慰めになるか分からないけど、少しでも前向きになれたらいいと思うんだ。」

と、私を迎え入れてくれる会を開いてくれるとの事だった。圭太君の優しい気持ちが伺えたが、ちょっとまだ、不安もあった。昨日の事がバレたらどうしようとか、上手くみんなに溶け込めるかとか。でも、その不安は次の圭太君の言葉で拭い去られた。

「ロココさんのペースで良いから。」

なんて優しいんだろう、と思った。私は、来月になったら予定をお知らせします。とだけメッセージを書いて、少し落ち着いたら連絡しようと思った。圭太君からは、「うん。大丈夫だよ。了解しました!」という返信だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ