表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
天空郷探索編
75/82

30.後継者争い2

 天空郷でバンダルクと揉めていたら、アルデールという男が現れた。

 途端に顔をしかめるバンダルクとは対照的に、まとめ役のセティーリアは顔をほころばせる。


「おお、戻ったのだな、アルデール」

「はい、至急とのことでしたので、取る物もとりあえず、駆けつけました」

「うむ、それでは事情を説明するので、座りたまえ」

「はい」


 アルデールはセティーリアに促され、素直に席に着く。

 その際に俺たちを見て不思議そうな顔はしていたが、バンダルクのような不遜な態度は見せなかった。

 どうやら、この人はまともそうだ。


 ちなみにアルデールは、やはり金髪碧眼の超絶美形。

 レミリアとチェインが彼を見て、じっくりと見つめていたぐらいだ。

 しかしバンダルクみたいなとげとげしさはなくて、より親しみやすい感じがする。


 場が落ち着くと、セティーリアが話を進める。


「詳細は省くが、ヤザンの死亡が確認された。その知らせと神代かみよの証を持ってきてくれたのが、こちらのデイル君だ」

「っ!…………やはり師匠は亡くなられていたのですか」

「ああ、そのために海底神殿が機能しなくなり、下界に影響が出ているそうだ。その原因を探るためにデイル君は神殿へおもむき、ヤザンの遺体を確認した。そしてそこへ居合わせた魔神族に、代わりの管理者を寄こすよう、遣いを頼まれたらしい」

「下界の民が神殿へ入ったのですか? いや、失礼。君たちを侮るつもりはない。正面から神殿に入るなら、下界の民であろうがなんだろうが、関係ないからな」


 アルデールが驚いていたが、すぐに謝罪をしてきた。

 やっぱりまともな人みたいだ。


「ええ、神殿へたどり着くのは大変でしたよ。海神に仕えていたという大亀に会いにいったりして」

「ネプタルノス様に仕えていたカメか? そうか、その手があったのか……」


 なぜかアルデールは、ひどく悔やしそうな顔をした。

 するとセティーリアが、事情を教えてくれる。


「フフフッ、アルデールは海底神殿への道を探して、飛び回っていたんだよ。それを部外者に見つけられてしまっては、立つ瀬がないのも分かるだろう?」

「フンッ、無様なものだな」

「ッ! 貴様だって転移装置を直せなかっただろうが!」


 ここでバンダルクがあおるもんだから、アルデールとのにらみ合いが始まった。

 なんか、張り合ってるみたいね、この2人。


「あ~、俺はたまたま知り合いのシーサーペントから、ポッポスを紹介してもらっただけですよ。でなけりゃ海底の瘴気を、指をくわえて眺めるしかできなかったでしょうね」

「いや、そう謙遜しなくてもいい。バハムートのお眼鏡に適ったことといい、デイル君には味方が多いようだ。我々にも見習うべき点は多いよ」

「おっしゃるとおりです」

「フンッ」


 セティーリアの褒め言葉にアルデールは同意するも、バンダルクは納得してない感じだ。

 まあ、そんなことはどうでもいいんだが。


「それで、新たな管理者はどうするんですか?」

「うん、それなんだがデイル君、私たちを海底神殿へ連れていってもらえないか?」

「なっ、師匠の形見さえあれば、転移装置を修復できます!」


 セティーリアの率直なお願いに対し、バンダルクが即座に噛みついた。

 しかし彼女は懐疑的な目を向けて、奴をさとした。


「修復にはそれなりの時間が掛かるだろう? それに向こうの装置がどうなっているかも分からないのだから、外から入るのが得策だ」

「クッ……」


 バンダルクの野郎はひどく顔を歪め、悔しそうにしている。

 そんなに自分の手で直したいのかねえ。

 しかしそれよりも、今はこっちの話だ。


「え~と、俺が皆さんを連れていく必要があるんですね? 乗りかかった船なので、いいですよ」

「助かるよ、デイル君。このお礼はきっとする。我ら秘蔵の魔道具とか、財宝なんてどうかな?」

「えっ、本当ですか……あ~、でも魔神族からも先払いでもらってるからなぁ」

「それはそれで受け取っておきなさい。我らハイエルフのメンツにかけても、恩人を粗末にはできないからね」

「はあ、それじゃあ後日、適当な物をいただくということで……」


 なんと、ハイエルフのご褒美までもらえるそうだ。

 これは思った以上に、おいしい仕事だったな。

 この時の俺は、のんきにそんなことを考えていた。




(ううっ、なんで、なんで連れていってもらえないんですかぁ?)

「だから人が増えたから、無理なんだって」


 会談終了後、すぐに海底神殿へ向けて発とうとしたら、ドラゴがごねた。

 空路で移動するのに彼はでか過ぎるし、海中に潜るにはさらに邪魔だ。

 それで彼には天空郷で待っていて欲しいと言ったら、涙ながらにすがりつかれたのだ。


(僕だけ置いていかれるなんて、ひどいですぅ)


 そう言ってドラゴがバルカン、シルヴァ、キョロを見ると、彼らがそれぞれに言い訳する。


(我はあるじたちを運ばねばならんからな)

(我はドラゴほどでかくないぞ)

(僕はほとんど荷物にならないからね~)


 彼らにも裏切られたドラゴが、また俺に涙目を向ける。


(やっぱり、僕だけいらない子なんだ~)

「……ハーーーッ。分かった分かった。それじゃあ、シルヴァにも残ってもらおう」

(なっ、ひどいぞ主。海底神殿でも何があるか分からないのだ。我を連れていくべきだろう)

「神殿自体はすでに探索済みだからな。悪いけどドラゴと一緒に留守番しててくれ。すぐに戻るから」

(ぐぬぬぬぬ)

(ううっ、それなら我慢できるかも)


 結局、シルヴァを生贄にして、神殿行きのメンバーが決まった。

 次は足の準備だ。


「それで、このバルカンに天空郷への出入りを許可して欲しいんですけど」

「あ~~、そうだな。結界を出入りできるよう、登録しておこう」


 外へ出てバルカンがワイバーン化すると、セティーリアが呆れながらも、彼の出入りを許可してくれた。

 あとはバハムートに空路での侵入法を教えてもらえば、バルカンも出入りできるようになる。

 そこで俺たちはバハムートの所へ行って、事情を説明した。


(ふむ、それぐらい構わんぞ。ところで海底神殿の近くまでは送らんでよいのか?)

「バルカンがいるのでなんとかなります。あまりバハムート様にお手間を掛けるのも、なんですから」

(そんなこと、気にせずともよい。久しぶりに起きて、暇を持て余しておったところだ。後で話を聞かせてくれるなら、送ってやるぞ)

「ええっ、いいんですか?」

「ふむ、この際だから甘えさせてもらうか。久しぶりに頼むぞ、バハムート」

(うむ、任せよ)


 思わぬバハムートの申し出にセティーリアも同意したので、甘えることにした。

 ぶっちゃけ、バルカンだけではちょっと輸送力が足りないとは思っていたのだ。

 セティーリアたちも連れて1回で飛べるなら、文句はない。


 さて、海底神殿ではどんなことになるのやら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ