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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
天空郷探索編
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20.最強戦力集結

 天空郷への道はひどく困難なことが分かったので、俺は最強の戦力を集めるべく、カガチへ戻ってきた。

 それを聞いたサンドラも、カイン同様に嬉しそうに笑った。


「それで我が君、どのように厄介なのじゃ?」

「ああ、”竜の渓谷”って所を通らなきゃいけないんだが、下位の竜種どころか、上位のドラゴンまでいるらしいんだ。それで、ガルド迷宮を踏破した最強メンバーで挑もうと思ってる」

「なんと、またもやドラゴンとやり合うつもりか? 相変わらず頭がおかしいのう、我が君は」

「ドラゴンと聞いて嬉しそうに笑う戦闘狂にだけは、言われたくないもんだな」

「失敬な。わらわは、我が君の役に立てるのが嬉しいだけじゃ」


 心外だとでも言いたげなサンドラだったが、口元がにやけていた。

 ”斬鉄のサンドラ”と呼ばれる彼女は、迷宮で手に入れた”土の魔剣”を振るい、まさに鉄の塊ですら切り裂く女傑じょけつだ。

 その闘争本能が、彼女をたかぶらせるのだろう。


 今にも飛び出しそうな彼女をなだめつつ、俺は拠点の食堂へ仲間を集めた。

 主要なメンバーが集まったところで説明を始める。


「とりあえず、天空郷に最も近いアルヴレイムって集落までは、たどり着いた。しかし、竜種がうろつく難所を越える必要があるらしいんだ。そこでメンバーを募りたいんだが、どうだ?」

「マジっすか? 俺も連れてって欲しいっす」

「お、俺も行きたいです」

「「「俺もっ」」」


 獅子人のジードと狼人のアレスが、真っ先に名乗りを挙げる。

 続いて虎人のザムド、ナムド、獅子人のダリルも手を挙げた。

 こいつらは2軍の中でも、特に血の気の多い連中だ。


 しかしそんな彼らを、鬼人のアイラがたしなめた。


「馬鹿いってんじゃないわよ。あんたらじゃ足手まといになるよ。またジードみたいに、ケガするんだから」

「な、何言ってんだよ。あれから俺だって、強くなったんだぜ」

「へ~、そのわりにはいつも、サンドラさんにコテンパンにされてるじゃないか?」

「うぐっ、それはだな……」


 ジードが必死に弁解しようとするも、アイラにやり込められた。

 ここでサンドラに目をやると、彼女も首を横に振る。


「まあ、みんながんばっておるが、実力差は歴然じゃ。今回は我が君の眷属も同行するのであろう?」

「ああ、バルカン、シルヴァ、キョロ、ドラゴを連れてく」

「ならば、1軍だけで固めた方がよいと思うぞ」

「マジっすか……」


 サンドラにダメ出しされたジードたちが、ガックリとうなだれる。

 すると狐人のケンツも、手を挙げて発言しあ。


「あ~、俺たちは周辺の警備を請け負ってるんで、丸ごといなくなるのは困りますね。まあ、兄貴の留守ぐらいは守るんで、できれば1軍だけでお願いします」


 これでとどめを刺されたジードたちが、涙目でうなだれていた。

 その一方で一緒に行けるカイン、サンドラ、リュート、リューナはウキウキだ。

 久しぶりの冒険に、目を輝かせている。


「竜種が住む谷って、どんなとこだろうね? リュート」

「ああ、なんかワクワクするな」

「フッフッフ、攻撃の方はわらわに任せて、兄者は我が君を頼むぞ」

「何、俺もこの風の槍があれば、そう見劣りすることもないと思うぞ」


 すると銀狼のシルヴァと、偽竜フェイクドラゴンに擬態したドラゴも、嬉しそうに寄ってきた。


(我も主のため、存分に力をふるおうぞ。腕が鳴るわ)

(僕もがんばるよ~)


 そしたらどこから聞きつけたのか、海蛇竜シーサーペントのカガリまでが、窓から顔を出した。


(みんなずるい~。あたしも行きたいよ~)


 さすがにカガリを連れていくわけにはいかないので、俺は彼女の頭を撫でながら慰めた。


「さすがにカガリは無理だな。そういえば、ママはどうしたんだ?」

(う~~。この辺は獲物が少ないからって、北の海へ帰っちゃった)

「そうか、それは残念だな。じゃあ、この辺の警備をまた頼むな」

(ぶ~、それじゃあ、また魔力ちょうだ~い)

「はいはい」


 そのままカガリには魔力を与えて黙らせた。

 こうして同行メンバーを決めた俺は、その晩は拠点でのんびり過ごした。





 翌日は早朝から仲間をバルカンの飛行箱に乗せ、アルヴレイムへ送り出した。

 ただしドラゴだけは重すぎるので、俺が転移で送ることになる。

 全員を転移で送れれば早いのだが、さすがに魔力的に定員オーバーだ。


 特に俺の使役獣たちは上位存在に進化しているので、転移させようとするとべらぼうに魔力を食う。

 どうやら魂の格みたいなのが、関係してるらしい。

 バルカンを連れてきてよかった。


「それじゃあ、行くぞ、ドラゴ」

「ヴモ~」


 ドラゴに触れながら、転移の指輪を使用する。

 アルヴレイム側で記憶に刻んだ場所を思い浮かべながら、指輪に魔力を流した。

 膨大な魔力の流れを感じた瞬間、俺とドラゴは転移する。

 次の瞬間、俺たちはアルヴレイムのすぐ近くにいた。


(大丈夫ですか~、マスター?)

「ああ、ちょっと眩暈めまいがしただけだ」


 さすがにドラゴを伴って一気に転移してきたのは、きつかった。

 ほとんどからっぽになるほど魔力を使った反動で、ふらついてしまう。

 しかしとにもかくにも、一度で転移できたのだから大成功だ。

 場合によっては、妖精迷宮を中継ポイントにしなければならないかと思っていたのだが、成功してよかった。

 ちなみに転移に失敗しても、魔力を失うだけで済むらしい。


 眩暈が治まると、ドラゴを連れてアルブレイムに入った。

 長老からは仮の入場証を与えられているので、すでに1人でも入れるようになっている。

 仲間の所在を探すと、またみんなで古文書を調べているらしかった。


 書庫へ行ってみると、レミリアとチェイン、キョロ、そしてユージンもいた。


「今、戻ったよ」

「あ、早かったですね、旦那様」

「お帰り、デイルさん。だけど、他の奴らは?」

「他はバルカンに乗って、こっちへ向かってる。俺はドラゴだけ連れて、転移してきたんだよ」

「ああ、ドラゴちゃんは重そうだからね。それにしても、カガチからひとっ飛びだなんて、とんでもない話だねえ」

「フヒヒ、非常識はデイルの専売特許じゃからのう」


 ちょうどそこへ、チャッピーがフヨフヨと飛んできた。

 ”竜の渓谷”から戻ったところだろうか。


「チャッピー、”竜の渓谷”はどうだった?」

「うむ、評判どおり、過酷な環境じゃったぞ。下位の竜種が、うろうろしておったわ」

「うへ~っ、面倒そうだな。それで、上位の竜種は確認できたのか?」


 するとチャッピーが楽しそうに言う。


「おお、おったぞ。この目で見てはおらんが、とんでもない気配があったわい。あれはかなり上位のドラゴンじゃな」

「おいおい、上位ってどれぐらいだよ?」

「ガルド迷宮のドラゴンの、数倍は強力なのではないか?」

「まじかよ、そんなのどうしろってんだ……」


 思わずぼやいたが、チャッピーには何か考えがあるようだった。


「まあ、それならそれで、話のしようはあるものじゃ。とりあえず行ってみればよい」

「それって、命懸けだよね~」

「まあ、なんとかなるじゃろう」


 ずいぶんと気楽に言ってくれるが、本当に無事に戻ってこれるのかね?

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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