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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
天空郷探索編
61/82

16.遭遇

 大陸中央部のエルフ里で、最古の集落”アルヴレイム”の情報を得た。

 おまけにユージンという案内役まで付けてもらえることになり、希望が見えてきた。


「それじゃあ、行きます」

「うむ、気をつけてな」

「くそう……」


 俺たちはエルフの長老に見送られながら、バルカンが抱える飛行箱で飛び立った。

 当然そこにはユージンも同乗し、悔しそうな顔を見せている。


 しばらく飛んで、ある川が見えてくると、ユージンから降下の指示が出た。

 まだアルヴレイムには遠いらしいのだが、詳しい場所も分からず、空からは見つからないので、地道に歩いて探すしかないようだ。

 それから川沿いに夕暮れまで歩き、適当な所で野営をした。


「そういつまでも腐るなよ、ユージン」


 夕食後も面白くなさそうな顔をしているユージンに、話しかけた。

 しかし彼は相変わらずの仏頂面で答える。


「別に腐ってなどいない」

「アハハ、そんな仏頂面しておいて、説得力がないよ」

「やかましい。元から不愛想なだけだ」


 チェインに指摘されても、改まる気配がない。

 そこで説得を諦めて、世間話でもすることにした。


「そういえばユージンは何歳なの?」

「チッ……俺は30歳だ。もっと敬意を払え」

「へー、そうなんだ。ユージンさんとでも呼べばいい?」


 するとチェインが笑いながら首を振った。


「エルフで30なんて、まだまだガキだよ。ようやく独りで狩りに出られるようになったぐらいだろ?」


 図星を指されたユージンが、苦々しい顔をする。

 まあ、50歳を超えてるチェインからしたら、まだまだガキだろうな。

 さすがにそれは指摘しないけど。


 するとユージンが俺のことを聞いてきた。


「そういうお前は何者なのだ? あのような飛竜ワイバーンを使役し、”神代かみよの証”を持つなど、あまりに異常ではないか」

「だからそれは説明したじゃん。俺は人族の大陸で育った、孤児のエルフだよ。たまたま使役スキルと仲間に恵まれたから、今はちょっとした顔になってるけどね」


 するとチェインとレミリアが、笑いながらたしなめる。


「だからデイルさん、その程度の説明で済まそうとするから混乱するんだって」

「そうですよ。旦那様がどれだけの偉業を成し遂げてきたか、説明してあげるべきです」

「え~、そういうの苦手だからな」


 面倒臭そうに言ったら、ユージンがムキになって聞いてくる。


「一体、お前が何をしてきたというのだ?」

「そうだねえ……まずデイルさんは海の向こうで、ある迷宮を制覇したんだ。しかも最終ボスであるドラゴンを倒してだよ」

「はあ? そんなことできるはず、ないだろう。馬鹿にするなっ!」


 からかわれたと思ったのか、ユージンが怒りだした。

 しかしチェインはまるで相手にしない。


「アハハッ、その程度で怒るから子供だってのさ。まあ、ドラゴンの話とか、たしかに信じにくいだろうけど、迷宮制覇も含めて本当の話さ。それで財をなしたデイルさんは、この魔大陸に渡ってきたんだよ。そして西部で横行していた人族の奴隷狩りをやめさせて、大陸西部の盟主的な存在になったんだ。西部同盟のデイルといえば、けっこう有名だよ」

「まだ俺を馬鹿にしているのか? そんな話があるはずなかろう。まるで夢物語ではないか」

「これだからもう。デイルさんが西部同盟をまとめ上げてから、すでに南や東とも付き合いが始まってるんだ。ちょっと調べれば、事実だって分かるよ。自分の世界に閉じこもってないで、情報を集めたらどうだい?」

「貴様、この俺を田舎者いなかもの愚弄ぐろうするかっ!」


 激昂げっこうして腰を浮かしかけたユージンを、レミリアが制止する。


「お待ちなさい。チェインは事実を言っているだけですよ。それを頭から嘘だと決めつけるあなたにも、問題があります」

「し、しかし、あまりにも荒唐無稽こうとうむけいで……」


 レミリアの紫色の瞳に射すくめられて、ユージンが腰を下ろす。

 すると姿を消していたナゴが、ふいに現れた。


「たしかにデイル殿の逸話は信じにくいニャ。しかしデイル殿は妖精迷宮も攻略し、女王陛下にも信頼されるお方だニャ。あまり暴言を吐いていると、精霊にも見限られるので気をつけるニャ」

「な、猫妖精ケットシーだと? しかも妖精迷宮を攻略したなんて……お前たち、どれほどの隠し玉を持っているのだ」


 さすがにケットシーの出現には驚いたらしい。

 ここでふと思いついたので、聞いてみる。


「そういえば、ユージンは精霊と契約してる?」

「ムッ……我らの里とて、そう多くの精霊術師がいるわけではないのだ。俺も研鑽を積めば、いずれできるとは思っているがな」

「要はまだ契約してないんだね。それなら、無事に集落を見つけられたら、お礼に精霊を紹介してあげるよ」

「なん、だと?……」


 予想外の報酬に、ユージンが驚愕の表情を浮かべる。

 しかしまだ半信半疑という感じだ。

 するとチェインが楽しそうに同意する。


「ああ、それはいい。あんたも長老の命令だってだけじゃ、やる気にならないだろう。遠慮なく紹介してもらいな」

「……精霊の紹介など、本当にできるのか?」

「実際にあたしも紹介してもらったよ。あたしも生まれ故郷では、精霊術の才能はないって言われてたんだけどね」


 そう言いながら、ちょいちょいとチェインが土魔法を披露した。

 モコモコっと土の柱が立ち上がるのを見て、ユージンが目をみはる。


「今のは精霊術なのか? しかもほとんど呪文らしきものがなかったぞ」

「ああ、あたしらの魔法は少し変わってるからね。そこまで教えてやる義理はないけど、精霊との契約ならいいんじゃないかい」

「ほ、本当にできるのか?」

「だから本当だって言ってるだろう。今ここにいない仲間の力が必要だけど、それはデイルさんがなんとかしてくれるさ」

「それならぜひ頼む! 精霊術師になるのは、一族の憧れなのだ」


 ようやく信じる気になったユージンが、必死に頭を下げてきた。

 やっぱりエルフにとって、精霊術師ってのは大きいんだな。


「ああ、ユージンには世話になるからな。楽しみにしといてくれ」





 その後のユージンの態度の変化には、目を瞠るモノがあった。

 いままでいかにも嫌々ついてきていたのが、率先して案内するようになったのだ。

 おかげで旅程は順調に進み、3日ほどで目的地周辺に着いた。

 ただしアルヴレイム自体はどこにあるか分からず、これから探し回らねばならない。


 しかし野営の準備を整え、翌日の計画を話し合っていたら、思わぬ訪問者を迎えることとなる。


「おいおい、物騒だな」

「な、なんだお前たちは?」

「旦那様、前には出ないでください」

「ひょっとして、お目当ての集落の住人かい?」


 気がつくと俺たちは、数十人のエルフに囲まれていた。

 全員が弓矢や剣で武装し、殺気を隠そうともしていない。


 やがてその中から、1人のエルフが進み出た。

 長い金髪に青い目の、長身の男だ。


「貴様ら、この地がエルフ族の聖地だと知っての侵入か?」


 ほほう、エルフの聖地ね。

新作の方もよければお読みください。

タイトル変更しました。

”エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~”

https://ncode.syosetu.com/n2914eo/

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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