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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
天空郷探索編
60/82

15.見つかった手がかり

 バルデスから預かってきた徽章きしょうに俺が魔力を通すと、特殊な波動が生まれることが分かった。

 何やらエルフに威圧感を与えるらしいので、身元証明には使えるかもしれない。

 その結果を踏まえ、俺たちは天空郷の手がかりとなりそうな集落を探すことにした。


 ちなみに妖精迷宮の入り口は、バッチリと転移できるように覚えてきた。

 荘厳な泉があるから、覚えやすいんだよな。

 セシルの故郷へも転移できるようになったし、着々と移動がしやすくなっている。


 え? サキュバスクイーン?

 あそこは近いからいいんだよ、別に。



 猫妖精ケットシーのナゴの案内で、目的の地域へ飛んだ。

 しかしその範囲はあまりに広いので、またまた精霊の捜索網を利用させてもらう。

 以前、奴隷狩りを探し出すために使ったあれだ。


「ふむ、こちらでエルフを見かけたとの情報があるニャ」

「了解。バルカン、あっちへ向かってくれ」

(承知)


 バルカンに乗って飛んでいたら、精霊ネットワークにエルフが引っかかった。

 ただちにその場所へ飛ぶと、じきにお目当ての人物が見つかる。

 精霊ネットワークさまさまだ。


 しかしガルダを降下させたら、エルフが逃げだした。

 そりゃあ、そうだわな。


 俺たちは彼の逃げ道を塞ぎ、対話を試みる。


「待ってくれ。警戒するのは分かるけど、まずは話を聞いて欲しい」

「貴様、何者だ?」


 エルフの狩人らしき男が、キツイ顔でにらんできた。

 俺は両手を挙げて、害意がないことを示す。


「俺の名はデイル。大陸の西部に住んでいる冒険者だ。今日は天空郷の手がかりを探しにやってきたんだが、何か知らないか?」

「天空郷? なんだそれは?」

「ハイエルフが住まう、伝説の場所らしいぞ」


 他人事ひとごとのように言ったら、怪しまれた。

 だけど俺だってよく知らないんだから、仕方ないのだ。


「あいにくと心当たりはないので、もう行っていいか?」

「待て待て。じゃあ、これは知らないか?」


 今度は胸元に着けた徽章を示して、聞いてみる。

 しかし男は首を横に振るだけだ。


「そうか……それなら、これはどうだ?」

「クッ、な、なんだこれは?」


 徽章に魔力を通すと例の波動が発生し、男が動きを止める。

 まるで金縛りにあったように動かないので魔力を止めると、恐怖の目を向けてきた。


「き、貴様は何者だ? 今なにをした?」

「だから冒険者だって。とある事情で、ハイエルフを探さなきゃいけなくなったんだ。この徽章は、そのための預かりもんだ」

「まさかそれは、”神代かみよの証”か?」

「ん? ”神代の証”って何? なんか知ってそうだね」

「俺も詳しいことは知らんが……」


 男の話によると、それこそ神々が地上にいたほどの大昔、神に認められたハイエルフに、神の代理として与えられる印があったそうな。

 その証を持つ者からは偉大な神威が発せられ、思わず頭を垂れてしまうほどだったとか。

 もっとも、彼も長老から話を聞いただけで、見た者はいないらしいが。


「ふーん、そういう伝説が残ってるってだけでも、手がかりはありそうだな。ぜひその長老に会わせて欲しいんだけど」

「……しかし、今日会ったばかりの者を里に入れるわけには……」

「でも”神代の証”を持つ者を拒んだら、逆にまずくない? 長老に怒られると思うよ」

「うぐっ」


 どうやらその可能性は高かったらしく、結局里まで案内してもらえることになった。

 ちなみに彼の名はユージンというらしい。


 彼に里の入り口まで案内してもらったが、さすがにそのまま入れてはくれない。

 長老を呼んでくるから待てと言われ、仕方なく待っていた。


 やがてユージンが、豊かなヒゲをたくわえた白髪の老エルフを伴って現れる。

 あまり老いが姿に現れないエルフにしてあれってことは、かなりな高齢じゃなかろうか。

 老エルフは落ち着いた動作で俺の前に立ち、静かに話しかけてきた。


「この里の長のトゥベルクと申します。なにやら、”神代の証”を持つお方かもしれぬと、お聞きしましたが」

「初めまして、冒険者のデイルと言います。訳あってハイエルフの手がかりを探しています。これはその証なんですが」


 俺が徽章に魔力を籠めると、例の波動が発生する。

 またユージンが血相を変えてる横で、トゥベルクは平然とそれを受け流し、俺の前で膝を折った。


「なるほど。儂も話に聞いただけでしたが、これがハイエルフの放つ神威というものなのでしょうな。ぜひ協力させていただきますので、なんなりとお申しつけください」

「ち、長老! よろしいのですか?」

「馬鹿者! あれほどの神威を目の当たりにして、まだ疑うか。ただちに里へご案内するのだ」


 なんか拍子抜けするぐらいあっけなく、里へ入れることになった。

 ”神代の証”、すげー。



 長老の家で、これまでの事情を説明した。

 冥界とつながる海底神殿の管理者が不在で、神殿の機能が止まりつつあること。

 冥界の瘴気が浄化されず、周囲に悪影響を及ぼしていること。

 それを止めるには管理者を置く必要があるので、ハイエルフの手がかりを探していることまでを話す。


 ヒゲをしごきながら聞いていた長老が、感嘆の声を漏らす。


「ふーむ、なるほど。それでデイル殿が動かれているわけですな」

「ええ、海の異変を調査するために海底神殿へ行って、そこで魔神族ってのに頼まれたんですよ」

「それはまたずいぶんと困難な依頼を受けましたな。しかしちゃんとこの里を突き止める辺り、さすがですな」


 長老が訳知り顔でニヤリと笑ったので、俺は身を乗り出す。


「すると、やはり手がかりがあるんですね?」

「天空郷そのものではありませんが、そこへ至る手がかりならございます。少々、場所を変えましょうか」


 長老に促され、近くの建物へ移動する。

 その建物の中には棚が立ち並び、何かが保存されているようだ。


「ここは我らの書庫でしてな、古い記録などが保存されております」


 長老は慣れた動作で移動し、とある箱の中を漁りはじめた。

 やがて手のひらの4倍ほどの大きさの木札を取り出した。


「おお、これじゃこれじゃ。これにはこの辺りの地形が描かれております。そしてこの中に、エルフ族最古といわれる集落があるのです」

「最古の集落、ですか? ひょっとしてそれは、”アルヴレイム”という場所では?」


 そこに描かれているのは地図とも呼べないような、簡易的な絵だった。

 おおざっぱな山脈や川、そして何かを示す印と、意味不明な文字が刻まれている。


「はい、アルヴレイムと呼ばれております。我らの祖先はそこで生まれ、徐々に大陸中へ散っていったと聞きます。その集落が現存するなら、ハイエルフの手がかりも、そこにある可能性が高いですな」

「そこに無ければ、どこにあるのかって話になりますね。これはぜひ、行ってみる必要があるな」

「そうでしょう? しかしそこへの道は我らも正確には知りません。そこでせめてもの協力として、このユージンに案内させましょう」


 いきなり案内にされたユージンが、狼狽ろうばいする。


「な、そいつの案内ですか? なぜ俺が?」

「貴様が最初に会ったのも何かの縁じゃろう。先ほどの非礼の詫びとして、しっかりと奉公するのじゃぞ」

「ぐうぅ……」


 ユージンがひどく悔しそうな顔をしているが、俺にとっては渡りに船だ。

 しっかり働いてもらうとしよう。

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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