表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
天空郷探索編
59/82

14.妖精女王の援助

 天空郷の手がかりを探していたら、”アルヴレイム”という里の名前が浮かび上がった。

 おそらくエルフ族最古の里であり、天空郷とつながりのありそうな集落だ。

 あいにくとそれ以外の情報がないので、俺は情報を求めて魔大陸を巡ることにした。


 しかしその前に、身近な人にも聞いてみる。


「んまあ~、デイル様。お久しぶりですわね!」

「あ、ミレーニアさん、ご無沙汰してま~す」


 ケレスのかあちゃん、夢魔女王サキュバスクイーンのミレーニアだ。

 久しぶりに彼女の家を訪ねたら、速攻で抱き着かれた。

 おうふ、スイカップが俺の胸に。


 なかなか離れようとしない彼女をレミリアが引きはがしてから、天空郷について聞いてみる。


「天空郷、ですかぁ? あいにくと私は存じませんわぁ」

「それならアルヴレイムは?」

「ん~……どこかで聞いたことがありますわね。なんの名前だったかしら?」


 ミレーニアが小悪魔的に美しい顔をかしげ、考える素振りをする。


「エルフ族最古の里らしいです。全てのエルフ族の根源って話ですね」

「ああ、そういえばそんな話を、ティターニアさんとしたことがありますわ」

「妖精女王と、ですか?」

「ええ、茶飲み話のついでだったので、詳しいことは聞いてませんけど。彼女なら、何か知っているかもしれませんわぁ」

「参考になりました。ミレーニアさん」

「あら、それでしたらちょっと寝室へ……」


 手を握って感謝したら、また寝室へ連れ込まれそうになった。

 レミリアの殺気で頭が冷えなかったら、ヤバかったかもしれない。

 だからレミリア、そんなに怒るなって。




 俺はカガチへ戻って、猫妖精ケットシーのナゴに妖精女王と連絡を取ってもらった。

 俺の方からお邪魔するつもりだったのだが、彼女がすぐに転移で現れる。

 せっかくなので、お茶でもてなしながら事情を説明した。


「まあ、海底神殿が止まっているの……」

「ええ、そうなんですよ。それで、そこに居合わせた魔神族に、ハイエルフの管理者を連れてくるよう、依頼されたんです」


 するとティターニアが、清楚な美貌を曇らせて考え込む。


「なるほど。それで手がかりを探しているのね? しかしその天空郷については、私も聞いたことがないわ」

「それでは、アルヴレイムは? ミレーニアさんは、妖精女王から聞いたことがあると言ってました」

「ああ、それなら知っているわよ。エルフ族最古の集落ね」

「さすが! どこにあるか、分かりませんか?」


 期待に身を乗り出して聞くと、ティターニアは首を横に振った。


「あいにくと場所までは知らないわ。でも、大陸中央部のエルフ族なら、何か知っているかもしれない。私も彼らから聞いたのだから」


 妖精女王は妖精や精霊を統べるだけあって、エルフ族からは神のようにあがめられているらしい。

 最近は無いが、ずいぶん昔には妖精女王の加護を得るため、妖精迷宮に挑むエルフたちもいたらしい。

 そんなエルフ族の誰かから、アルヴレイムの噂を聞いたそうだ。


「なるほど。魔大陸の中央部が、エルフの起源になるんですかね?」

「私も詳しいことは知らないけど、その可能性は高いわね」

「分かりました。中央部のエルフ集落を、巡ってみたいと思います。申し訳ありませんが、場所だけでも教えてもらえませんか?」

「それならナゴに伝えておくから、また妖精迷宮に寄ってちょうだい」

「はい、必ず」


 話が終わると、女王はナゴを連れて帰っていった。

 俺も連れていってもらえると嬉しかったのだが、彼女の転移は妖精や精霊限定だそうだ。

 俺はまたバルカンに乗っていくしかない。

 しかしティターニアのおかげで、捜索範囲がずいぶんと狭まった。

 おまけに案内まで付けてくれるんだから、感謝しかないな。





 翌日、俺はバルカンに乗って、妖精迷宮へ向かった。

 同行者はレミリアとチェイン、そしてキョロだ。

 レミリアは当然のようについてくるし、キョロは護衛。

 そしてチェインはダークエルフ代表って感じだ。

 同族がいた方が、話が通りやすいかもしれないからな。



 夕刻前に泉へ着くと、また戦鬼妖精スプリガンのレヴィンが迎えにきた。

 彼に案内されて女王の館へ赴くと、ティターニアが快く迎えてくれる。


「お疲れさま。今日はここで休んでいって」

「ありがとうございます。せっかくなので、甘えさせてもらいます」


 その後、お茶を飲みながら、周辺の状況について聞いた。

 おおざっぱな、地図ともいえないような絵図を見せて、ナゴが説明してくれる。


「我輩が調べたところ、この辺にいくつかエルフたちの集落があるようだニャ。精霊たちに協力を仰げば、見つかると思うニャ」


 ここでチャッピーが口を挟んだ。


「そういえばデイル。おぬし、バルデスからエルフ絡みのモノを、預かっておらんかったか?」

「ああ、管理者の持ってた徽章きしょうを預かったな」


 俺は懐から青い宝玉付きの徽章を取り出し、みんなに見せる。


「ハイエルフの管理者が、それを持っていたの?」

「ええ、死体から回収したものだけど、管理者の物らしいです。たしか、エルフの結界も越えられるとかなんとか」

「なるほど。ちょっと魔力を通してみて、デイルさん」

「はい」


 女王に求められるまま、徽章に魔力を通してみた。

 すると青い宝玉が光り、何か不思議な波動が発生したような感じがした。

 すると女王が胸を押さえて、不思議そうな顔をする。


「今何か、特殊な波動を感じたわね?」

「はい、女王様。我輩も感じたですニャ」

「俺もです。何か、実に偉大な気配を感じたような」

「それだわ」


 レヴィンの言葉に、ティターニアが大きくうなずいた。


「さっきのは太古の神々の気配に似ているの。ずいぶんと懐かしい感覚で、すっかり忘れていたわ」


 どこか懐かしそうな顔で、彼女が言う。


「神々の気配を感じるということは、やはり神から何か託された者の証、ということですかね。バルデスも、これを持つ者は神に認められているので、協力が得られるはずだと言っていました」

「そうね、その可能性が高いわね。だけど、誰にでも分かるものでもなさそうだわ」


 ここでチェインが口を挟んだ。


「あ、あのさ、今の波動であたし、凄くドキッとしたんだ。なんていうか、原初の記憶によって、ひれ伏したくなるような感じだった。たぶんエルフやダークエルフなら、無視できないと思う」

「そうなのか? 俺はそんなのなかったけど、自分の魔力だったからかな。チェインさん、試しに魔力を流してみてよ」

「ああ、いいよ」


 そう言って徽章を受け取ったチェインが、魔力を籠めようとする。

 しかし今度はなんの反応もなかった。


「あたしじゃダメみたいだ。ということは、デイルさんが特別なのかな」

「そうなのか?」


 チェインから返された徽章に魔力を籠めると、またみんなが反応する。

 特にチェインは胸を押さえ、あえいでいる。


「で、デイルさん、ちょっと心臓に悪いから、控えてくれないかい。やっぱりあんたは特別なんだよ」

「ふむ、2人が試しただけとはいえ、その可能性は高いわね。やはりデイルさんは、ハイエルフと何か関係が……」


 女王が興味深そうな顔で考え込む。


 しかしここで悩んでいても答えは出ない。

 願わくば、今後の探索に役立つとよいのだが。

新作の方もよろしくお願いします。

新章へ突入しました。

”七王召喚!~無能エルフが祖国を最高するまで~”

https://ncode.syosetu.com/n2914eo/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ