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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
第2部 海中探索編
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12.バルデスの依頼

嬉しくなるような感想をもらったら、筆が進むようになりました。(単純)

再び週1ペースで投稿していきたいと思います。

「この状況を打破するためにおぬし、天空郷へ行ってくれんか?」

「はあっ?」


 海底神殿の奥で遭遇した魔神族のバルデスが、思いもかけない依頼をしてきた。

 しかしまだ状況がよく分かっていないので、間の抜けた返事を返してしまう。


「む、少々説明が必要だな。この神殿には知ってのように、冥界から漏れ出る瘴気を浄化する機能がある」

「ああ、そうみたいだな。だけど管理者が死んで、その機能が働いてないってことだよな」

「そうだ。本来は管理者の寿命が来る前に引き継ぎをするはずが、予想外の最期を遂げたためにできていない。おかげで神殿の機能が徐々に失われてきて、このざまだ」

「ふーん、それなら新しい管理者を呼んで、立て直したら? 何か連絡を取る手段とか、あるだろ?」

「それが分からんから、貴様に頼みたいのだ。おそらく天空郷と連絡する手段はあると思うのだが、この神殿はハイエルフたちが管理していたから、我には分からん」

「それで俺に行けってのか? 天空郷の場所は分かるんだよな?」

「知らん」

「は?」


 場所くらい知ってるのかと思ったら、堂々と否定しやがった。

 俺にどうしろってんだ。


「あー……あのさ、なんの手掛かりも無しに行くとか、無理なんだけど」

「安心しろ。手掛かりはある」


 そう言いながら彼は管理者の死体の懐をゴソゴソ漁り、小さな徽章を取り出した。

 金の台座に青い宝玉がはまったもので、うっすらと光ってるようにも見える。


「それは?」

「これは管理者の証だ。これを持つ者は神に認められたことになるので、関係者はいろいろと協力してくれるはずだ」

「いや、はずだって言っても、どこにその関係者はいるんだよ?」

「天空郷にはハイエルフしかいないが、それを支えるエルフの集落がどこかにあるはずだ。そこを見つけてこれを見せれば、天空郷への道が示されるだろう」

「おいおい、そんなあやふやな情報だけで見つかるわけないだろ? エルフの集落は結界で守られていて、なかなか見つからないんだ」

「いや、この徽章を持っていれば、結界は無効になるはずだ。探せばなんとかなるだろう」


 ずいぶんと気楽に言うものだ。

 大体、はなから俺が受ける前提で話すのが気に入らない。


「あのさあ、なんで俺がそれをやらなきゃいけないわけ? 瘴気が問題なら、その道を閉じるとか、他にやりようはあるだろう?」

「それが簡単にできれば苦労はない。しかし、冥界との道を閉じるには時間が掛かるし、下手にやると世界のバランスが崩れかねん。まずはこの神殿の機能を回復する必要があるのだ。そして我はここより外へ出ることはできない。故に貴様に頼むしかないのだが、引き受けてはくれぬか?」

「うーん……何か見返りはないのか?」

「見返りだと? ふむ……」


 試しに見返りを要求してみたら、バルデスが悩みだした。

 しばらく考えていた彼が、やがて顔を上げる。


「ならばこれはどうだ?」


 そう言ってバルデスは左手の中指にはめていた指輪を外し、俺に見せた。

 それは銀色の指輪で、小指の先大の青い宝玉がはまっている。

 決して派手ではないが、なかなか良さそうな物だ。


「それは?」

「これは転移の指輪といって、遠隔地へ一瞬で転移する魔道具だ。ただし転移できるのは、自身が行ったことのある場所で、しかも明確に光景を思い描ける場合に限られる」

「そんな凄い物、本当にくれるのか?」

「ああ、それだけの面倒を頼むのだ。決して過大ではないだろう」


 疑わし気に問うと、バルデスはまじめな顔で返してきた。

 俺は助言を求めるべく、チャッピーの方を見る。


「チャッピー、彼は本当のことを言っていると思うか?」

「……さすがに魔神ともなると、何を考えているか分からんのう。しかし、その指輪については調べてみよう」


 チャッピーはふよふよとバルデスの手元まで飛ぶと、彼がつまみ上げている指輪に触れ、いろいろと調べていた。


「ふむ、とりあえず危ない物ではないようじゃ。転移については、使ってみんと分からんのう」

「そうか、ありがとう」


 ここで改めてバルデスに目を合わせ、質問をする。


「それは誰にでも使えるのか? それと同行者とかは?」

「貴様が了承すれば、今から指輪の使用者として仮登録しよう。登録された者以外には使えんし、もし約束を破れば登録は切れる。そして貴様が触れていれば一緒に転移は可能だが、距離と重さによって魔力の消費は変わる。つまり貴様の持つ魔力量次第ということだな」

「なるほど……ちょっと相談させてくれ」


 俺は少し離れた所に仲間を呼び寄せ、相談してみた。


「今の話、どう思う? 俺は悪い話じゃないと思うが」

「今日会ったばかりの魔族の話が、どこまで信じられるでしょうか?」

「でも、いずれにしろ瘴気を浄化する神殿の復活はやるんでしょう? 兄様」

「あたしも怪しいとは思うけど、受けた方がいい気はするねえ」


 レミリア以外は賛成か。


「チャッピーは?」

「儂も受けた方がいいと思うぞ。バルデスは得体が知れんが、決して邪悪な存在ではなさそうじゃ」

「そうか、チャッピーがそう言うなら、大丈夫そうだな。よし、この話、受けることにする」


 そう言うと、レミリアも強くは反対しなかった。

 どの道やらなきゃならないことだからな。


 バルデスに依頼を受けることを伝えると、彼も喜んだ。


「そうか。これで大きな影響は出さずに済みそうだな。悪いが、よろしく頼む」

「報酬が前払いなんだから、気にするな。新しい管理者を連れてくれば、依頼は完了でいいんだな?」

「ああ、それでいい。この部屋へ来て指輪に念じれば、俺も顔を出す」

「分かった。もし管理者が見つからない場合も、一度はここへ来よう。ちなみにこの神殿の中へも転移できるのか? 何か結界とか、ないよな?」

「ああ、神殿の鍵さえ持っていれば、入れるはずだ。ハイエルフもそうしていたからな」




 その後もいくつかやり取りをして、俺たちは神殿を辞することにした。

 さすがにここで転移を試すのも怖かったし、カガリたちもいるのでまた海中を移動して海上へ戻る。

 海上へ戻ってからは手近な陸地に上がり、転移の実験をした。


「よし、それじゃやるぞ」


 指輪を左手の中指にはめ、魔力を込めた。

 そして数十歩先の場所を頭に描くと、俺の体は転移していた。


「うわ~、本当に転移したのです」

「さすがは旦那様ですね」

「デイルさんは相変わらず非常識だねえ」

「体調は大丈夫か? デイル」


 あまり心配していない女性陣とは別に、チャッピーだけが俺を心配してくれた。


「ああ、特に不都合はないみたいだ。魔力もぜんぜん減ってない感じだな」

「そりゃあ、短距離じゃからのう。ここからカガチまでだと、はたしてどうなるか」

「そうだね。とりあえず、チャッピーだけ連れて跳んでみようか」

「うむ、お付き合いしよう」


 ふよふよと飛んできたチャッピーを肩に乗せ、指輪に魔力を込める。

 そしてカガチの俺の部屋を思い浮かべると、急激に魔力が減る感覚があった。


 次の瞬間、俺は自分の部屋にいた。

 長距離転移の成功だ。


「実際にやってみると凄いな、これ」

「まったくじゃのう。これでますます、デイルが非常識になるわい」

「そこは非常識じゃなくて、新たな伝説とかさ」

「クククッ、言いよるわい」


 こうして俺は、新たな力と使命を手に入れた。

単純な作者に感想などお寄せください。

ついでに新作の方も応援してくれると嬉しいです。

実はPVが伸びず、ちょっと落ち込んでたりして。

”七王召喚!~無能エルフが祖国を最高するまで~”

https://ncode.syosetu.com/n2914eo/

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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