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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
第2部 海中探索編
54/82

9.瘴気を吹き飛ばせ!

更新速度が遅くてすいません。

本当は週2ぐらいにしたいんですが、筆が……。

 海神に仕えていた亀 ポッポスから海底神殿の鍵を預かった俺たちは、異変の原因を突き止めるために行動した。

 まず海底神殿に最も近い島まで移動し、カガリに乗り換えた。

 カガリの後頭部にみんなが座り、それを魔盾イージスの隔壁で囲む。

 隔壁は透明で外は見えるし、空気はチェインが風魔法で入れ替えてくれる。


 そんな潜水魔法を披露したら、カガリママが驚いていた。


(うわ~、話には聞いてたけど、器用なことするざます。人間って面白いわねえ)


 妙に感心するママを促し、海底神殿へ向かう。

 1刻ほど海中を進むと、前方に黒い小山が見えてきた。

 海底といえどそれほど深くないので、日の光は差しているのだが、それを全て吸い込んでいるようだ。

 近寄ってみると、それはまるで雲のように不安定なものだった。


「あれが噂の瘴気か。たしかに何か、禍々しいものがあるな。メルディーヌさんは、あれ見てどうしたんですか?」

(即座に突っ込んだざ~ます。あんなの別に大したことないと思ったんだけど、その後の記憶がないざます)


 うん、やっぱり脳筋なんだな。

 しかし、そうなると不用意にあれに接触するのはまずいだろう。


「何か、あれを取り除く手がないかな? チャッピー」

「むう、それを儂に聞くか? 海のことはそれこそ、彼女たちに任せたらどうじゃ?」

「やっぱそうか……メルディーヌさん、あれをどうにかできませんかね? 突っ込むとかそういうのはなしで」


 脳筋な答えしか想像できなかったのであえて避けていたのだが、仕方なく聞いてみる。

 案の定、突っ込むとか言いそうだったので、先に釘を刺した。

 するとちょっと悔しそうにしながらも、意外な答えが返ってくる。


(ぐぬぬ、それならわたくしの海流魔法を披露するざます。深海の女王の力、とくと見るざ~ます)


 そう言うやいなや、彼女の体の周囲に水流が発生し、黒い瘴気に向かっていった。

 そしてそれは雲を取り巻くように渦を巻き、瘴気を巻き上げようとする。


「おおっ、さすがは深海の女王」

「ふわ~、凄いのです」

(シルヴァの風魔法みたいだね)

(うむ、我よりも大規模な魔力を感じるな)


 皆が褒める中、瘴気が動き始めたのだが、それは長く続かなかった。


(ぶは~っ、これ以上は魔力が続かないざます)


 それはメルディーヌの魔力切れで、あっさりと中断してしまった。

 期待させたわりにしょぼかったな、メルディーヌ。


 しかし、それを見て奮い立つ奴もいた。


(ねえねえ、ママ。それってどうやるの?)

(はっ、ふがいないわたくしを馬鹿にしないざますか?)

(しないよ~。だってさっきの凄かったもん。だからあたしも手伝いたいんだ)

(なんて、なんていい子ざ~ます……だけど、あなたには魔力がほとんどないから、無理みたいねえ)


 凄いと言われて大喜びしてるメルディーヌだが、そう簡単にできるわけでもないらしい。

 たしかにカガリは水ブレスを吐くぐらいで、魔法のようなものを使ったのは見たことがないからな。

 無理だと言われてしょげるカガリを見て、みんなが慰める。


「カガリちゃん、しょげないで。もっと大きくなったらできるわよ」

「そうそう、あまり気にしなさんなって」


 しかし、そこにレミリアが疑問を投げかけた。


「この水の双剣を使えば、旦那様がサポートできるのではないですか?」

「ん? そういえば、炎の短剣でバルカンに魔力を分けたことあったな。試してみるか」


 レミリアに水の双剣を借り、それをカガリに押し当てる。


「今、水の双剣を通して魔力を送ってるんだけど、分かるか? カガリ」

(ん~…………あっ、なんか入ってくるぅ。ふわぁ、しゅごいよこれ、ご主人~)

「こらっ、身悶えするな!」


 彼女が初めての感覚に身悶えしたおかげで、俺たちが揺さぶられて参った。


 しばらくして落ち着いたカガリに、魔力の使い方を教える。

 昔、俺がチャッピーに習った方法を参考にしたんだが、意外に早く魔法が使えるようになった。

 それは小さな水球ウォーターボールを撃ち出す程度だったが、それを見たメルディーヌが大騒ぎする。


(ななな、なんざます、それ? マイベイビーがもう魔法を使ってるざます。わたくしなんて、魔法使うのに20年ぐらい掛かったのに。キーッ!)

「アハハ、まあ、俺らは妖精仕込みの特殊な練習をしてますから。それに、この魔剣の助けも借りてますしね」

(やっぱりその魔剣、ただものではなかったざますね)

(あたしのご主人は凄いでしょ、ママ。それで、さっきの魔法はどうやってやるの?)

(うーん、口で説明するのは難しいざ~ます)


 その後、身振り手振りでカガリママが説明することを、みんなで読み解きながらさっきの渦巻き魔法を練習した。

 なんでも、水に魔力を流し込んで、それを思うように動かすんだそうだ。

 ちなみにママが魔法を使えるようになってから、この渦巻きを作れるようになるまでさらに30年ほど掛かったそうだ。


 それを聞いたレミリアが、”それではママさんは一体、何歳なのですか?”と聞いたら、尻尾が飛んできた。

 あぶねーじゃねえか。

 どうやらシーサーペントでも歳が気になるらしい。


 結局、その日は魔力切れになったので、近くの陸地へ移動して野営をした。

 夕食はカガリが取ってきてくれた魚やら貝やらを焼いて食った。

 そしたらそれをつまみ食いしたカガリママが気に入ってしまい、たくさん焼かされたのには参ったけどな。

 まったく、マイペースなママさんだ。





 翌日も渦巻き魔法の特訓をしたカガリは、ほぼそれを習得するに至る。

 魔力を回復するためにもうひと晩野営をして、その翌日に改めて海底神殿へ向かった。


(いいざますか、マイベイビー。わたくしとタイミングを合わせて魔法を放つざますよ)

(うん、いいよ、ママ)

(それじゃいくざます。2連渦巻きツインボーテックス!)

(ツインボーテックスぅ~!)


 ママの放った水流に、カガリの放った水流が合流すると、それは凄まじい勢いで黒い瘴気に向かっていった。

 ママ単独の渦巻きでは瘴気の一部をかき回しただけだったのに、今回はその全体を包み込んで持続している。

 やがてそれはしつこい瘴気をかき乱し、周囲に拡散し始めた。


(ぐうぅ、まだまだ~)

(まだまだ~)


 さらにママとカガリが気合いを入れると、瘴気の拡散が加速される。

 もちろん俺も、水の双剣を通して魔力をカガリに注入中だ。

 けっこうしんどい。


 しかしその甲斐あって、やがて瘴気の中から神殿が見え始めた。


「やったぞ、カガリ。成功だ」

(う~~、魔力を使い過ぎて、頭がクラクラするぅ)

(わたくしも久しぶりに全力を振り絞ったざます。でも、その甲斐はあったざますね)

「ええ。メルディーヌさん、ありがとうございます」


 こうして海底神殿を覆っていた瘴気が取り払われた。

 しかし、神殿の中で何が起こっているのかを調べなければならない。

 本当の冒険はこれからなのだ。

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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