表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
第2部 海中探索編
52/82

7.海底神殿の異変

すみません、遅れました。

 異変調査で遭遇した黒い海蛇竜シーサーペントは、なんとカガリのママだった。

 そして彼女が真っ黒になって暴れてた理由を聞いてみたら、どうやら心当たりがあるようだ。


「なんか心当たり、あるんですか?」

(あるざます。これは海底神殿の周囲に漂っていた謎物質ざ~ます)

「海底神殿って?」

(北の海には、海神ネプタルノス様を祀った神殿があるざます。本来なら海の中の澱みをはらい、平和を保つための神殿なのに、最近おかしくなってたざます。それで様子を見にいったらこの謎物質に囲まれて、そこから記憶があいまいなのざ~ます)

「メルディーヌさん、さっきまで狂ったように暴れ回ってたんですよ。ひょっとして北から魚や魔物が逃げてきてたのって、そのせいだったのかな」

(その可能性は高いですね。シーサーペントほどの魔物が暴れ回っていれば、大抵のものは逃げだしますから)

「ですよね~」


 どうやら今回の騒動はカガリのママが原因だったらしい。

 しかし彼女はそれを覚えていないらしく、何やら謎の瘴気に侵されて暴れていたようだ。

 となると、問題はまだ完全に解決したことにはならない。


「今回の騒動の元はメルディーヌさんだとしても、原因は他にありそうですね。ところでイレーネさんは海底神殿の話って、知ってます?」

(はい、見たことはありませんが、噂はかねがね。我ら海に住む者にとって、聖地のようなものですね)

「ふむ、聖地なのに闇の瘴気に包まれてるのか……それは絶対、何か異変が起きてるよね」

「はい、成体のシーサーペントが狂暴化するほどの異変、とても見過ごせません」

「見過ごせないったって、あたしらに何ができるのさ? それこそ海の住人の領域だろ」

「え~っ、でもカガリちゃんにも影響あるかもしれないのです。それと人魚女王マーメイドクイーンだって、絶対に頼ってくると思うし」


 リューナの指摘でイレーネの方を見ると、コクコクと頷く彼女がいた。

 まあ、そうなるだろうな。


「でも、実際に何が起こってるか分からないと、どうしようもないしな……メルディーヌさんは何か調べる宛とかないですか?」

(うーん、神の領域の話ざますからねえ…………はっ、そうざます。昔、ネプタルノス様に仕えていたとかいうカメがいたざます。あれなら何か、知ってるかもしれないざます)

「カメですか。それって、どこにいるんです?」

(この魔大陸の反対側ざます。わたくしが全力で泳いでも、2日は掛かるざ~ます)


 大陸の反対側へ2日で行けるだけでも凄いけどな。

 バルカンだったら1日で飛べるけど、それは何もない空を行くからだ。

 さすがは深海の女王といったところか。


「そうですか。お手数ですけど、話を聞いてきてもらえたりします? 俺たちは足手まといになるので、お任せしたいんですけど」

(いやざます)

「そうですか、ありが、えっ、やっぱ駄目?」

(当たり前ざます。あなた、深海の女王に何させようとしてるざます。女王はそんなチマチマしたことなんて、しないんざます)


 メルディーヌが、ドヤ顔で言いきった。

 この脳筋野郎、単純にめんどくせーだけだろうが。

 俺はちょっと考えてから、妥協案を提示した。


「それじゃあ俺たちもそこへ向かいますから、メルディーヌさんはそのカメを紹介してもらえませんか。ちなみに俺たちは空から追いかけますけど」

(最近の人間は空を飛べるざ~ますか?)

(違うよ、ママ。ご主人にはバルカンっていう飛竜ワイバーンの眷属がいるの。そいつに乗って飛ぶんだよ)

(あら、そうなの。それならわたくしより速いかもしれないざます。でも、別々に行って、どうやって連絡を取るざますか?)

「このつなぎ石ってのを持ってると、遠距離でも念話ができます。これがあれば、向こうでも連絡取れるでしょ?」


 俺はレミリアに預けてあったつなぎ石を取り出し、差し出した。


(あっ、それならあたしがもらう~。あたしもママと一緒に行くから)

「お前、大丈夫か? 足手まといにならないだろうな」


 なんかちょっと心配だったのだが、ママは大喜びだった。


(それはナイスなアイディアざ~ます。死んだと思っていた娘と旅ができるなんて、今日はなんて良い日ざましょう)

「あ~……分かりました。カガリに持たせますね」


 俺は即座に反対は無意味だと悟り、カガリにつなぎ石を預けた。

 それから少々、細かいことを伝えると、カガリとママは嬉しそうに旅立った。

 あまりに喜び過ぎたせいか、凄まじい衝撃波を残して。


 あれって、周辺海域にかなり影響を与えてるんじゃなかろうか。

 深海の女王を名乗るぐらいなら、もっと落ち着けと言いたい。

 まあ、そうは言ってもカガリのママだからな。

 あまり深く考えてないんだろう。





 それから3日間は、カガチの拠点で仕事をしていた。

 さすがにカガリを連れてると速度も落ちるのか、それなりに時間が掛かったからだ。

 そして翌日には到着するだろうと念話で聞いたので、俺もバルカンに乗って飛び立った。


 同行者はレミリア、リューナ、チェインに加え、サンドラにシルヴァ、キョロまで付いてきた。

 まあ、何があるか分からないので、戦力は多い方がいいだろう。

 バルカンの抱える飛行箱に乗って1昼夜も飛び続けると、魔大陸の反対側へたどり着いた。


 海岸に着陸してカガリに念話を送ると、返事が返ってきた。


(あ、ご主人、久しぶり。あたしたちはカメさんの所に向かってる途中だよ)

(今、どの辺にいるんだ?)

(ん~とね、もうじき魔大陸の最東端だって)

(ふ~ん、もっと北みたいだな。俺たちもそっちへ行くよ)

(りょうか~い)


 つなぎ石のおかげでなんとなくカガリのいる方向は分かるので、俺たちもそちらへ移動した。

 しばらく海岸沿いに飛び続けると、沿岸ではしゃいでいるシーサーペントを見つけた。


「メルディーヌさん、こんにちは」

(あら、思ったより早かったざますね。そのワイバーンがあなたのペット? なかなか可愛らしいざ~ます)

(ふん、ペットではない。主の忠実な戦士だ。丸焼けにしてやるぞ、この海トカゲ)

(お~ほほほ、できるならやってみるざます、この空トカゲ。その翼膜を切り裂いてやろうか)


 案の定、バルカンとメルディーヌがいがみ合いを始めた。

 亜竜同士でライバル意識があるのか、カガリとバルカンも仲が悪いのだ。

 俺はため息をつきながら仲裁をする。


「はあ……あまり煽らないでくださいよ、メルディーヌさん。バルカンも気にするな。それで、くだんのカメはどこにいるんですか?」

(ふふん、まあいいざます。ポッポスはここから少し東に行った所にいるざます)

「分かりました。今から向かいましょう」


 ポッポスってのが、海神ネプタルノスに仕えていたカメらしい。

 それからメルディーヌの案内で、沖合へ向かう。


 上から見てると、カガリが嬉しそうにはしゃいでいるのが分かった。

 ママの周囲をバッシャンバッシャン跳ね回り、大きな波を引き起こしている。

 おい、周りに迷惑だろうが。


 たぶん、ここに来る間もあんな感じだったんだろう。

 被害にあった生物には、申し訳ないとしか言いようがない。

 犠牲者が少なければいいのだが。


 そんなこんなで1刻ほど東へ向かうと、やがて小さな島が見えてきた。

 小さなと言っても、バルカンが何匹も休憩できるような広さがあるし、ヤシの木も生えている。

 俺たちがそこへ着陸して顔を出すと、ふいにメルディーヌが尻尾を振るい、ビシャーンと島をはたいた。


(起きるざます、ポッポス。久しぶりに会いにきたざ~ます)


 一体、何をするのかと思っていたら、ズゴゴゴゴッと島が振動し始めた。

 やがて島の脇から何かが浮上してきて、海上に浮かび上がる。


(なんじゃ、メルディーヌ。騒々しいのう)


 それは、巨大なカメの頭だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ