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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
第2部 海中探索編
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4.人魚女王からの依頼

 船の遭難問題が落ち着いてしばらく後、カガチを人魚女王マーメイドクイーンが訪れていた。

 彼女は最近、俺たちの出すお茶に味を占め、しばしば訪問するようになってるのだ。

 最初は人魚が地上でお茶を?と思ったが、彼女は女王というだけあって平気で地上でも活動できるんだな。


 別にいつも俺が相手をするわけじゃないんだが、今日はたまたま暇だったので茶飲み話に付き合う。


「最近の海の中はどうですか? カガリの奴がまた迷惑を掛けてないといいんですが」

「いいえ、最近はカガリさんも友好的ですよ。暴れん坊さんたちも、すっかりおとなしくなっちゃって」

「そいつはよかった。ならこの辺の海は、なべて平和ってことですね」


 すると女王は、何か気に掛かるような顔をした。


「それが必ずしもそうじゃないの。最近なんだか、普段はあまり見かけない魚を見るようになったのよね」

「へー、海流の変化でもあったんですかね?」

「うーん、その可能性もあるけど、どちらかというと何かから逃げてるような感じね」

「それは、何か危険な魔物とか、大食らいの魔物が近くに来たとか?」

「その可能性はあるわね。まだ私たちの活動範囲には入ってないけど、来たら困っちゃうわぁ」


 そう言いながら、上目遣いに俺を見る女王。

 瞳の白目部分がなかったりと、人間の美女とはけっこう違うのだが、媚の売り方はなかなか堂に入ったものだ。

 豊満な体をくねらせながら俺を誘う仕種が、またあざとい。


「ははあ、今日はやけに俺に会いたがると思ったら、その話でしたか?」

「うふふっ、そんな実も蓋もないこと言わないの。ただちょっと、力を貸して欲しいかなあ~って思って」


 ペロリと舌を出す仕種がまたかわいいのだが、それぐらいで便利に使われては敵わない。


「まあ、原因が分からないんじゃ、どうしようもないですよね。何か事が起こったら、相談に乗りますよ」

「え~っ、のんきに構えてて被害が出たら嫌じゃない。だからお願い。手を貸して」

「手を貸すって、何するんですか?」

「ちょっと北の方へ調査隊を出そうと思うの。だけど私たちだけじゃ心細いから、護衛をお願いしたいのよ」


 そう言う女王自体はそこそこの強者だが、並みの人魚や半魚人サハギンは弱い部類だ。

 女王自ら調査に出るのも不用心なので、カガリの配下を護衛に欲しいって相談だった。

 さて、どうしようかね。


「うーん、カガリを護衛に出してもいいけど、あいつは食いしん坊だからなぁ。何か報酬を……」

「もちろんそれは考えてるわ。最近、真珠を集めてるから、それを20個でどう?」

「調査が終了した時点の成功報酬ですか? 何日掛かるか分かりませんよね?」

「うーん、それなら5日で引き返すとして、それ以降は1日につき真珠5個でどう?」

「ふむ……まあ、いいでしょう。カガリに相談してみますよ」

「よろしくね」



 その時は気楽に引き受けたが、思わぬ障害があった。


「だからさ、戻ってきたらいっぱい食わしてやるし、遊んでやるから」

(嫌だ。ご主人と一緒じゃなきゃ行かないもん)


 カガリが俺にも付いてこいと言うのだ。

 なんかまた、俺と一緒に冒険がしたいらしい。

 しかしそんなことに5日も付き合うほど、俺も暇じゃない。

 なんとか説得しようと試みたが、難航している。

 するとチャッピーが面白いことを教えてくれた。


「そういえば、リューナとチェインが水に潜る魔法を研究しとったぞ。デイルと一緒に海に潜りたいとか言っての」

「へー、そうなのか? そういえば、魔盾イージスを貸してくれとか言われたな。ちょっと聞いてみるか」


 リューナたちを探して、話を聞いてみた。


「リューナ、チェインさん。海に潜る魔法って、もう使えるのか?」

「え、なんで知ってるの? あ~、チャッピーが喋ったのね。兄様を驚かせようと思ったのに~」

「そうだったのか? ちょうどデイルがまた潜りそうだったので、喋ってしもうたわ」

「えっ、デイルさん。また海に潜るのかい?」

「ああ、マーメイドクイーンから北の海の調査を頼まれたんだ。カガリに護衛を頼もうと思ったら、一緒じゃなきゃ嫌だって言われてさ」

「そうなんだ。リューナ、ちょうどいいんじゃないかい?」

「え、まあ、たしかにほとんどできてるけど……」


 なぜか自信なさげなリューナ。


「どんな魔法なんだ?」

「ああ、リューナがイージスの障壁で、水の中に空間を作るんだ。そしてあたしが空気を補給する役目。これなら複数の人間で海に潜れるだろ?」

「へー、面白そうだな。みんなで海底散歩と洒落込むってわけか」

「そうなんだよ。これをカガリの上で実現できれば、調査にも役立つんじゃないかな?」

「よし、それなら試してみようぜ。とりあえず外へ行こう」


 俺はリューナ、チェインを港まで連れていくと、カガリを呼び出した。


(なになに~、ご主人。一緒に調査に行ってくれるの~)

「ああ、実はリューナが海に潜る魔法を開発しててな。これが上手くいったら、一緒に行ってもいいぞ」

(やった~。2人っきりじゃないのは残念だけど、ご主人と冒険できるならいいよ~)

「よし、それじゃあリューナ。試しにやってみてくれ」

「はいです、兄様」


 それからまず、リューナがカガリの背中に乗り移って、障壁を展開した。

 ちょっと海に潜ってみても大丈夫そうだったので、今度は複数人が乗れるかを試してみる。

 すると、当然のようにレミリアも加わってきた。


「えっ、なんでレミリアさんが?」

「旦那様の護衛も必要でしょう? 私なら水精霊ウンディーネと契約しているので、いざという時にも動けますよ」


 ニッコリと笑いながら言いきる彼女を止められる者は、そこにはいなかった。

 結局、レミリアも実験に加わることになる。

 カガリの頭部の少し後ろに俺、チェイン、リューナ、レミリアの順に座り、障壁を展開する。


「お、本当に水が入ってこないんだな。しかも障壁がカガリにピッタリくっついて安定してるし」

「はい、カガリちゃんと障壁が共存できるか心配だったけど、なんとかなるみたいです」

「そうそう、そして呼吸する空気はあたしが作ってるからね」

「うん、それじゃあ、ちょっと潜ってみようか。カガリ、頼む」

(きゃっほ~い、それじゃ行くね~)

「馬鹿、最初はゆっくりだ!」


 そんな注意も無視してカガリが急に潜ったが、意外に大丈夫だった。

 水精の衣を着て潜った時は水の抵抗がけっこうあったが、これなら海上と変わりない。

 それからしばし海中の旅を楽しみ、異常がないことが確認できた。


 これだけ快適に旅ができるなら、今回の調査行に加わってもいいだろう。

 結局、夜は最寄りの陸上で野営することを条件に、カガリと一緒に出かけることに決めた。

 まあ、かつてない経験だから、たまにはいいだろう。





 そして翌日、簡単な野営道具を持って俺たちは旅立った。

 メンバーは昨日と同じで、それに複数の人魚や半魚人サハギンと、カガリの手下がいくつか付いてきた。

 今回は探索メインなので、動きのいい針海豹ニードルシール鋭刃鮫ブレードシャーク喋海豚チャットドルフィンが同行している。

 さて、どんな旅になるかな?

こちらの作品もよければご一読ください。(毎日更新してます)

”俺の周りは聖獣ばかり2~世界帝国が攻めてくるようです~”

https://ncode.syosetu.com/n4155eh/

(下のリンクから行けます)

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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