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魔境探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
妖精迷宮攻略編
18/82

17.妖精迷宮

 妖精女王の後ろ盾を得るため、俺たちは迷宮に挑むことになった。

 しかし、せっかくこれを見越して最強メンバーを揃えてきたというのに、キョロ、シルヴァ、バルカンの参加は禁止されてしまう。

 上位精霊クラスの彼らを使えないというハンディを抱え、残りの仲間だけで攻略するはめになった。



 最初に出迎えてくれた戦鬼妖精スプリガンのレヴィンに案内され、俺たちは妖精迷宮へ向かった。

 おそらく転移魔法の1種であろう不思議な扉を抜けると、薄暗い空間に出る。


「ここが迷宮の入り口だ。ここから先に1層が広がっていて、そのどこかに2層へ続く階段がある」

「分かった。案内感謝する」

「フッ、じっくり観戦させてもらうから、簡単にリタイアなどしてくれるなよ」


 俺たちの迷宮攻略を観戦しようと、今ここに多くの妖精が集まってきてるそうだ。

 もちろん妖精女王も、サキュバスクイーンと一緒に観戦している。


 俺たちは改めて装備を点検し、いよいよ妖精迷宮に踏み込んだ。

 迷宮の中は、ゴツゴツとした岩壁に囲まれた洞窟だった。

 そこら中に光を放つ鉱石みたいなのが埋まってるので、行動に困ることはない。

 しかし遠くまで見通せるほどではないし、あちこちに枝道があって油断はできない。


「それじゃあ、手はずどおりに進もう」


 あらかじめ決めてあった陣形は、カインとサンドラが前衛、俺とレミリアとリューナが中衛、リュートとジードが後衛だ。

 この迷宮はあちこちに枝道があるので、後ろからの攻撃も考慮しての陣形だ。

 そしてこの中で最も感覚の鋭いレミリアが敵を探知し、チャッピーも魔力の流れを見てそれを補佐する手はずになっている。


 しばらく進むと、レミリアが何かを感知した。

 さらに進むとカタカタいう音が聞こえてきて、前から白骨戦士スケルトンが3体現れた。


 どれも骨だけの魔物だが、剣と盾を装備している。

 その武装に最初は警戒したのだが、カインとサンドラのひと薙ぎであっさりと砕け散った。

 どうやらそれほど強くはないらしい。

 まあ、まだ1層だからな。


 砕けた骨はすぐに黒い霞となって消え失せ、後には魔石が残されていた。

 小指の先ほどの魔石を拾い、探索を再開する。


 その後も現れたスケルトンを片端から薙ぎ払って進むと、2刻ほどで下への階段が見つかった。

 ガルド迷宮に比べれば、ずいぶんと狭い造りだ。

 まあ、この迷宮は10層まであるらしいから、これぐらいでないと時間が掛かってしょうがない。




 2層にも同じような洞窟が広がっていた。

 適当な方向に進んでいくと、チャッピーから警告が発せられる。


「何か来るぞ」


 立ち止まってしばらく前方を窺っていたら、なにやら黒っぽいものが4つ現れた。

 それは黒いローブを来た人型の魔物で、宙を飛んでこちらへ向かってくる。


「おそらく悪霊レイスじゃろう。物理攻撃は効かんから気をつけい」

「物理は効かないってことは、魔法が必要か。魔力斬ではダメージ入らない?」

「多少は効くじゃろうが、核を砕かんと倒せんぞ」

「よし、とりあえず前衛は魔力斬で攻撃。リュートとジードはリューナを守ってくれ」

「「了解」」


 俺、レミリア、カイン、サンドラはそれぞれの魔剣に魔力を通し、迎撃態勢を整えた。

 リューナは後ろに下がって雷撃の杖を構え、リュートとジードが彼女の両脇を固める。


 先頭のレイスがサンドラに襲いかかったので、彼女が剣で薙ぎ払った。

 しかし剣がレイスの頭部らしき部分を直撃しても、手応えなくすり抜けてしまう。

 とはいえ、魔剣に込められた魔力が多少は効いたのか、レイスが後ずさった。


 続いて別のレイスが迫ってきたので、俺は炎の短剣を振るう。

 俺の場合は短剣とはいえ、火魔法で小剣並みの炎の刃を形成していた。

 この刃はまさに魔法攻撃に相当するので、魔力斬よりよく効いた。


 身悶えして固まったレイスを、さらに踏み込んで大上段で斬り捨てる。

 すると胸の中心辺りを薙いだ時に、パキンッと何かを砕いた感覚があった。

 レイスはそのまま悲鳴を上げて消え去り、後には魔石だけが残された。


「今の見たか? 胸の中心辺りに核があるみたいだ」

「了解です」

「了解じゃ」


 アドバイスに従ってサンドラがレイスの胸を切り裂く。

 さすがに1発では当たらなかったが、何回目かの斬撃で核を砕いた。

 その横でレミリアも、水の双剣でレイスを切り刻んでいる。

 手数が多い分、彼女の方が早く核を潰していた


 しかし、カインは苦労していた。

 彼なりに風の魔槍を振るっても魔力斬が不完全なのか、なかなか核を壊せない。

 リューナもそれを援護しようとしていたが、雷撃はレイスをすり抜けるだけでダメージになっていない。

 じれったいので、俺の近くに寄った時に核を潰してやった。



 初めての対霊戦闘で混乱していたので、しばし休憩を取る。


「さっきはすみませんでした。せっかくの魔槍なのに、俺はまだ使いこなせません」

「うーん、カインはやっぱり肉体派だから、魔力を使うのが苦手なのかな。レイスに対しては、手数を増やせるメイスで戦った方がいいんじゃない?」

「それもそうですね。しかし俺もデイル様のように、槍から魔法を放ってみたいものです」

「まあ、得手不得手はあるからね。後で少し見てやるよ」

「ぜひお願いしますっ!」


 ガルド迷宮で風の魔槍を手に入れたカインだが、いまだに魔法は上手く使えていなかった。

 今までは必要な場面がなくて放っておいたが、今後を考えるとしっかり指導した方がいいのかもしれない。


「兄様、私はどうしたらいい? 雷撃だと上手くいかないのです」

「うーん、レイスとは相性が悪いみたいだな。少し範囲を絞った散弾の方がいいんじゃないか? 以前、1角餓鬼オーガに撃ったようなやつ」

「あっ、そうか。最近使ってないから忘れてたのです」


 そう言うとリューナは前に手をかざし、壁に向かって散弾を放った。

 ズバンッという音と共に、人の頭ぐらいの範囲が無数の小石に抉られる。


「うーん、もうちょっと範囲を広げてもいいかな。さっきのレイスを想定して少し調整してみろ」

「はいです、兄様」


 しばらくリューナに練習をさせると、使い勝手の良さそうな耐霊散弾がほぼ完成した。

 目処が付いたところで、再び探索を始める。


 その後も間断的にレイスの襲撃を受けたが、すでに対処法ができていたのでわりと簡単に殲滅できた。

 リューナの対霊散弾も絶好調だ。




 休憩を挟みながら進み、3刻ほどで3層への階段を見つけた。

 階段を降りて3層の探索を始めると、前方からパカラッパカラッと蹄の音が聞こえてきた。

 やがて黒馬に乗った首無し騎士が、俺たちの目の前に現れる。

 2騎の首無し騎士が剣を振りかざし、凄い勢いで突っ込んできた。


 しかし、カインとサンドラがそれを受け止める。

 どうやらこいつには実体があるようなので、レイスよりはやりやすい。

 馬上から打ち下ろされる剣をカインたちが盾で受け止め、逆に攻撃を放つ。

 しかし馬上の騎士との戦闘は若干不利だったので、俺とリューナが強魔弾で援護した。


 弾が当たって怯んだところを、カインとサンドラが騎士を馬から叩き落とす。

 そこへリュートとジードも混じって袋叩きにした。

 やがて胸の辺りを破壊された首無し騎士が、魔石だけ残して消え去る。


「フウッ、なんとか倒せたな。ところで、あれってなんて魔物だ? チャッピー」

無首騎士デュラハンじゃな。アンデッドの1種らしい」

「デュラハンねえ。まあ物理攻撃は効くから、レイスよりはやりやすいのかな。でも馬上からの攻撃は強力だから、油断しないよにな」


 その後、1刻ほどの間に何回もデュラハンの襲撃を受けたが、全て撃退した。

 最高で4匹同時に出てきた時は、リューナの竜人魔法で暴風を起こした。

 これで態勢を崩した騎士を、各個撃破でなんとか殲滅する。



 とりあえず今日の攻略はここまでだ。

 妖精女王との取り決めで1日の攻略は6刻までとし、食事や休息も女王の館で与えられることになっている。

 女王から預けられた水晶をその場に置き、”戻せ”と唱えると、次の瞬間には女王の館に戻っていた。


「まあ、皆さんお帰りなさい。ずっと見てたけど、デイル様って本当にお強いのね?」

「いえいえ、まだ3層ですから」


 リビングに着くやいなや、サキュバスクイーンのミレーニアが抱き着いてきた。

 相変わらず目のやり場に困るような肢体を、グイグイと押しつけてくる。

 あっ、またレミリアの機嫌が……


「私も楽しく見させてもらったわ。ちょっとミレーニアさんがうるさくて困ったけど」

「だってぇ、私のデイル様が魔物に取り囲まれていたんですもの。おケガはありませんか?」

「ええ、まあなんとか……すみません、疲れてるんで放してもらえますか」

「あら、気が利かずにごめんなさいね」


 案の定、女王たちは俺たちの攻略を楽しんでいたらしい。

 まあ、こんな見世物、めったにないだろうしな。


 その後、俺たちは装備を外し、汗を流してから夕食をご馳走になった。

 当然、その場は迷宮の話で盛り上がる。


「デイルさんたちはお強いのね。規格外なのは使役獣だけかと思ってたけど、あなたたちも十分規格外だわ」

「そうですかね? 低層のわりにはけっこう苦労したと思うんですけど」

「初見でレイスとかデュラハンを倒しちゃうんだもの。それって凄いことよ」

「そうね、パーティ内に魔剣が4本あるのも驚きだわ。もっとも、デイル様以外は、まだまだ使いこなせてないみたいだけど」


 ミレーニアが魔剣に興味を示しつつも、使いこなせていない仲間を揶揄する。


「この魔剣は、向こうの迷宮で階層を初攻略した時の報酬だったんですよ」

「なるほど。魔剣なんてお金で買えるものじゃないものね」

「そうですね。しかしおっしゃるように、まだまだ使いこなせてないのが悩みなんですが」

「フフフ、魔剣には大きな可能性が秘められているから、いろいろ試してみるといいわ」


 そんなことを話しながら夜は更けてゆく。

 とても迷宮を攻略している途中とは思えない状況だが、明日からはまた気を引き締めて頑張ろう。

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新作始めました。

新大陸攻防記 ~精霊はフロンティアに舞う~

インディアンの境遇に似た先住民を、日本から召喚された主人公が救います。内政もする予定。

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