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異界の旅人 ~己が為に彼らは旅をする~  作者: 鈴風飛鳥
第1章 「遭遇」 ~そして物語の幕が上がる~
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とある旅人の日記2

 とある旅人の視点から見た話。まとめみたいなものです。 前回と同じく、本編としての話ではないのでご自由にお読みください。


 追記:日記の最後の方のセリフを修正しました。呼び方が変わっただけで物語に支障はありません。

    「あいつ」→「あの人」

 『旅に出て3153日目。


 今回から奏多が旅の同行者として加わることになった。彼は異界を旅することに憧れていたようだけど、それがどれだけ大変かを彼はまだ知らない。


 テュフォンがいた世界から次の異界に移動した私たちは、『ラパーシ』という国に辿りついた。ここは海に面した国で他の国との貿易が盛んらしいのだけれど、またしても魔力がない国だった。これで4回目。テュフォンに再会できる日はそう遠くないかも。

 この世界が魔力のない世界だと私は奏多に伝えた。彼は残念がっていたけど、異界の旅なんてそんなもの。確かに私の知り合いには猫耳の子やリザードマンとかいるけれど、圧倒的に人間の方が多いのは事実。何回か旅をすれば奏多も会えるかもね。


 それはそうと、市場で異界調査を開始した矢先に奏多がとんでもないことをやらかしそうになった。なんと聞き込みをしようとした相手に自分たちが異界から来たことをバラしてしまった! なんとか観光客で他の国から来たってことで誤魔化したけれど、これには私も呆れた。そもそも魔力のない世界で異界の旅人を名乗ったところで信じてもらえるわけがない。奏多には注意したけれど、彼は無関心といった様子だった。これがどれだけ重要かを彼は理解していない。


 次に港の方を調査したのだけれど、彼はまたしても無関心。聞き込みもほとんど私がしたし、彼はまだ旅人としての自覚が足りない。周りの状況を把握することは、私たちの身の安全に繋がることを分かっていない。

 そこで私は奏多を試すことにした。まだ知り合って間もない彼がどういう人物か。私がいない時でも様々な出来事に対応できるかどうか。


 聞いた話によると、『ラパーシ』は貿易船が来るようになってから西の区域の貧困層が増えたらしい。しかも怪しい人物の出入りも増えたそう。私は奏多を一人残して西の区域へ行くことを彼に伝えた。しばらく帰ってこない私を捜しに、西の区域へ行くように仕向けたのだ。まぁ、来なかったら来なかったで次の機会にでも持ち越すだけの話。

 西の区域に行く間、今夜泊まるための資金を調達して、周辺の住民に西の区域の状況を聞いてみた。やはり『麻薬』が絡んでいた。でも、それはこの世界の出来事であって私たちには手の出しようがない。まぁ、組織一つ潰したところで変わりもしないし。

 西の区域に着くと、噂の怪しい人物を見かけた。周りの人がボロボロの服なのに対してそいつらの服は比較的きれいだった。分かりやすい。


 私は、そいつらから見えない位置で奏多がやってくるのを待っていた。そしたら、奏多は少年に連れられて西の区域にやってきた。ちょっと意外。どうなるのか途中まで見ていたけれど、多勢に無勢の状況になっても彼は逃げなかった。……勇気と無謀は違うのに。結局、私は奏多の助けに入った。私に助けられるのはこれで二度目。奏多はこれをどう思うか。

 奏多を助けた後、私は正直に自分がやったことを話した。隠しても仕方ないし何より奏多の為にならない。彼は何も知らなさすぎる。よほど平和な世界に生まれたんでしょうね。……ちょっとだけうらやましい。それでいて帰りたがらないなんて贅沢と言えるけど。それよりも自分の居場所探しの方が大事らしい。私的にはさっさと彼とおさらばしたいのだけれど。


 話は戻って、彼に対しての評価。旅人に向いていない。人を信じすぎ。いつか人に騙されて死ぬタイプね。正直に言ったら教えてくれないだの言ってくれないだの始まったけれど、それで通じるほど異界の旅は甘くない。一応諭したつもりだけれど、きっと本当に伝えたいことを彼は理解していない。まぁ、初回から厳しすぎたかもと私も反省した。


 そういえば奏多を西の区域へ連れてきた子、痩せていて左腕が無かった。切られたのでしょうね。周りの勝手な都合で。でも、私にはどうすることもできない。だから彼女(・・)にお願いして代わりを用意(・・・・・・)してもらうことにした。彼は戸惑うでしょうけれど、後は彼が今後どうしたいか次第。未来を切り開けるのは自分だけ。今まで必死に生きてきた彼ならきっと……。


 全て終わって、宿屋に行ったのだけれど、一人部屋しか空いていなかった。仕方なくそこを借りた。そしたら今度は、奏多がベッドの方がいいって騒ぎ出した。でも、私もふかふかのベッドで寝たかった。これだけは譲れない。そこで、奏多の世界で伝わる由緒正しき決闘法『ジャンケン』で決着をつけることにした。簡単ね、あれ。十回やってすべて勝ったわ。奏多はありえないって顔していたけれど。結局、私がベッドで彼が布団になった。

 寝る間際になって奏多が、私と部屋が一緒なのが気になるって言い出した。私は気にしないけど。結界張って寝るし、一々気にしていたらキリがない。彼も男ね。聞いてみたら全く同じ歳。子供っぽいから年下かと思ってた。


 今日はこれでおしまい。明日は朝から次の異界へ向けて出発する。


 ……この世界でもあの人(・・・)は見つからなかった。奏多を元の世界へ帰すが先か、あの人(・・・)を見つけ出すが先か――なるべくなら、奏多を先に元の世界へ帰せるといいけど』


 ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。本編で見られなかった彼女の行動や心情は主にこっちで伝えてます。本編はどちらかというと奏多よりの視点に近いですね。


 次の話もおまけ話となります。第2章はもうしばらくお待ちを。

 次の話も早く投稿できるように頑張ります。

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