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異界の旅人 ~己が為に彼らは旅をする~  作者: 鈴風飛鳥
第1章 「遭遇」 ~そして物語の幕が上がる~
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第12話 「初めての異界の旅2 『亀裂』」

 異界調査のために聞き込みをするアスカと奏多。


 今回は短めです。

 追記:誤字を訂正しました。

 市場には数多くの店が並んでおり、果物や野菜を扱っている店、小さな修理店、土産物屋、その場で料理を作ってくれる屋台などが国の通りの一角を占領していた。


 異界調査のために市場の人に聞き込みをしようと、アスカと奏多は一軒の店に立ち寄った。店は布の屋根で日の光を遮っており、商品が置かれている台には花瓶やら骨董品やらがズラリと並んでいる。店の店主は男のようで、アスカと奏多が近づくとお客様専用のスマイルを見せる。


 「いらっしゃい!! 珍しい格好だね、あんたら。何処から来たんだい?」


 しっかりしたガタイで強面の顔だが、笑った顔が可愛らしい男店主は二人の恰好を見て珍しそうに質問する。


 「あ、俺ら他の世界から来ました!!」

 「はぁ?」


 馬鹿正直に答える奏多に困惑する男店主。男店主には見えない角度から奏多の隣に立っていたアスカは、肘で彼の脇腹を小突く。


 「う゛っ」


 ドスッという鈍い音がした直後、短い呻き声をあげて黙りこんでしまった奏多。アスカに肘で突かれた脇腹をさするようにしている。どうやら『小突く』という可愛らしい表現ではなく、『ど突く』に近い力だったようだ。


 「すみません。この人、時々変なこと言うんで気にしないでください」

 

 力で奏多を黙らせたアスカ。突然呻き声を挙げた奏多を見て怪訝な顔をした男店主だったが、アスカは何事もなかったかのように振る舞いながら店の店主に尋ねる。奏多は脇腹を押さえたままだ。


 「私たち、色んな地域を観光しているんです。ついさっきこの辺に来たばかりで……おじさん、この辺の事詳しく知りませんか?」

 「あぁ、観光客ね」


 アスカの言うことに納得した男店主は、店番用の椅子に腰を掛けながら語り始める。


 「ここは『ラパーシ』という国でね。海に面した国だから他の国から珍しいモノが輸入されてくるんだよ。ここはそんな輸入品が数多く並ぶ市場って訳だ。ちなみにうちは他の国から輸入した珍しい陶器や骨董品を扱っているよ! お土産にどうだい?」


 この国の説明をしながら、ちゃっかり自分の店の宣伝をする男店主。どうやら店の品物は全て輸入品らしい。もっとも、異界からこの世界に移動してきた奏多たちにとっては珍しいもなにもないのだが。


 「いえ、荷物はなるべく増やしたくないので遠慮しておきます。海……ってことはこの国には港があるんですか?」 


 買い物を進められたアスカだが、できるだけ失礼のないようにやんわり断ると話題を変えた。何かを買うにしても、この国の通貨を持っていないので買い物はできない。


 「――あぁ、あるよ。ここからじゃ見えないけど、市場からずっと東に行くと大きな港が見えてくる。そっちだと魚市場もあるし、船も出ている」


 店主はアスカが買い物をしないと分かると少しだけそっけない態度になるが、説明は続けてくれる。本来店側からしてみれば営業妨害もいいとこだが、話に付き合ってくれるあたり意外といい人らしい。


「ありがとうございました。色々と参考になりました」


 さすがに何も買わないのは失礼にあたると思ったのだろう。アスカは店主の態度の変わりようを察すると早々に話を切り上げ、お礼を言ってこの場を離れようとした。

 すると、店を立ち去ろうとするアスカたちに男店主は声をかける。


 「あぁ……。なぁ、あんたらしばらくこの辺にいるんだろ? 西の方にはあまり近づくんじゃねぇぞ」

 「えっ? 何でですか?」


 男店主の警告に奏多は立ち去ろうとした足を止め、疑問を投げかける。


 「……実は、数十年前からこの国の治安が悪くなってなぁ。特に貧困層が集まる西側は盗みや殺人が多発しているんだ。だからこの辺の奴らは近づかねぇようにはしてるんだが。……あそこは人が住むような場所じゃねぇよ」


 貧困層が集まる場所。その言葉に、奏多はテレビで見た海外のスラム街を思い浮かべた。

 道にはごみが散乱し、異臭が漂い、怪しげな人がうろつくような所。これといっていいイメージは浮かばなかった。

 アスカは少し考えるような仕草をした後、男店主に尋ねた。


 「……それって他の国との貿易が始まってからですか?」

 「その前から貧困層はあったんだ。でも、ひどくなったのは他の国との貿易が始まってからだなぁ……」


 貿易が始まってから。そう聞くとアスカは納得したように頷き、男店主にお礼を言う。


 「わかりました。ご忠告感謝します」

 「おう。暇ができたら立ち寄ってくれや」


 そこそこ人のいい男店主は、その場を後にしたアスカたちに向かって手を振りながら別れを告げる。

 男店主からアスカたちが見えなくなったところで、二人は市場を行き交う人々の邪魔にならないように通りの端に移動すると、


 「あ、ん、た、ね!! あんな馬鹿正直に普通答える!? 前もって忠告はしたわよね!?」


 奏多にご立腹な様子のアスカ。どうやら骨董輸入品店の男店主に会った時の奏多の対応に怒っているようだった。

 奏多は建物の壁を背にしながらアスカの迫力にひるんでしまう。


 「いやだって、他に言いようがないし……」

 「そんなのは嘘でごまかしなさいよ! ここは魔力がない世界なの! 異界から来たと言ったところで信じてもらえるわけないでしょ!」


 初めてのことで、どうしてよいか分からなかった奏多。とっさに嘘をつくということが頭になかったらしい。やっていいことと悪いことの区別がついていない子供を叱るように、いつまでも耳元で怒鳴るアスカに、耳を塞ぐ仕草をした。


 「わかった、わかったよ。だからそんなに怒らないでくれ」

 「まったく……次からは気をつけなさいよ」

 「……へーい」

 「……」


 生返事の奏多に怒る気にもなれないアスカ。微妙な沈黙が二人の間に流れた後、

 

 「はぁ……、もうこっちの方はいいから東側に移動しましょう」

 「あっ、おい!」


 アスカはため息をつくと奏多を連れて市場の東側、港がある方へと向かった。


 ここまで読んでくださっている方々、ありがとうございます。短くて申し訳ないです。次はもうちょっと長いはずです。でも、あまりにも長すぎると返ってダレるので2000字以上、5000字ちょい位までには毎回収めると思います。

 

 前回と同じような終わりですが、明らかに不機嫌なアスカ。少し波乱の予感がしますね。

 次も早く投稿できるように頑張ります。

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