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異世界革命の戦乙女~ヴァルキリー~  作者: 北斎 侑紀
第一章 湖の女神
3/6

 ウサギの耳を掴み上げているジークが、

 不思議そうに首を傾げた。

 こう言う、食料のない状況で我が儘言ってられないのは分かるけど…………。ウサギはないでしょ!!

 あの、可愛らしいウサギちゃんですよ!?



「何を驚いている?」

「いや、驚くでしょ! てか、

 そのウサギ何処にいたの!?」



 この辺り、獣が隠れそうな草影なんてどこにも見当たらないけど…………。



「知らないのか? ウサギは地面に潜るんだぞ。

 特に、ここナガルガ平原のウサギは潜る事に優れている」

「はぁ…………、よく捕まえたね。

 地中のウサギを…………」

「そう難しい事ではない。こいつらは音に敏感だ。

 大きな音を立てて誘きだし、

 地上に出てきた所を捕まえただけだ」



 いやいや、ウサギって相当俊敏だよ? 

 誘きだしたからって、

 素手で捕まえるなんてどんな身体能力してんの。

 ジークは捕まえてきたウサギを地面に置き、刃渡り十二センチぐらいのナイフを懐から取り出した。



「え、嘘だよね? 本気で食べる気!?」

「食べるに決まってるだろ。なんの為に捕まえて来たと思ってるんだ。

 嫌なら食わなきゃいいだろ」



 ジークが、手慣れた手付きで可愛らしいウサギちゃんを部位ごとに捌いていく。



「ウソォォォォォォォッ!?」



 ウサギちゃんが、どんどん肉塊に変わっていく。

 ああ、ダメ!! 見てらんない!

 元いた世界でも、何度か鹿とかの解体を見たことあるけど…………。無理!! グロすぎる!!

 どうして、ああも平然と捌くことが出来るんだジークは! 凍てつくハートの持ち主か!?



「よし、出来た!」

「うぅ、…………気持ち悪い。…………うぷっ」



 岩の上に並ぶ、ウサギだった肉塊達。

 あの衝撃的な場面を見ていると言うのに、吐き気はあるが容赦なく食欲が襲い来る。

 食材の準備が出来、次にジークは長方形の小さくて黒光りする物体を懐の巾着袋から取り出した。そして、黒光りする物体を先程集めた枝に向ける。

 すると、物体から不思議な円状の模様が現れ火が発生した。



「な、なにそれ!?」

「これは、火を起こす魔導具(ツール)だ。

 見たことないか?」

「うん、僕のいた世界ではないよ。

 似たような道具ならあるけど」



 一応、ライターならどう言った原理で火が着くか分かるんだけど。今のは全くなにも無いところから発火した。意味が分からない。

 さっきの不思議な円状の模様、

 あれって魔方陣ってやつかな?

 僕が、呆気にとられているうちにジークはウサギの肉を焼いていった。



「サオトメ、君は食べないのか? 

 ウサギを食べる事に抵抗があるようだが…………」

「うっ…………」



 食べたくない。でも、お腹は空いている。他に食べる物なんか無いし、ああどうしたら…………。

 良心の呵責(かしゃく)と空腹感の板挟み。どんなに嫌だと拒んでも、身体は正直な物で勝手に手が香ばしく焼けた肉に伸びていた。



「なんだ、やっぱり食べるのか」

「こ、これは手が勝手に動いているのであって、

 僕が動かしているんじゃない!! 食べたくないけど、

 一度手にした食べ物を粗末にする訳にもいかなし、

 仕方なくだよ? 

 仕方なく食べるだけだからね! 分かった!?」

「はい、はい」



 僕の言い分に苦笑を浮かべるジーク。内心を見抜かされているみたいで、不愉快だ。

 ウサギちゃん、君の命はありがたくそして美味しく頂くよ。僕は、両手を合わせ心からの感謝の言葉を述べる。



「頂きます!!」



 一口、咀嚼する。すると、口の中に肉の香ばしい味わいが広がった。約丸一日、なにも食べていなかったからかとても美味しく思えた。ただ、焼いただけなのに高級レストランに出てくるステーキのようだった。



「うぅ…………美味しい…………美味しいよぅ」

「おいおい、泣くほどか?」



 ジークには、分かるまい。今僕は、

 この肉を自然のありがたさ命のありがたさを噛み締め味わっているんだ。ああ、生きていることにそして生きとし生ける生命に感謝を。

 ーーハレルヤ!!

 綺麗に残さず僕らは、ウサギの肉を平らげた。日も暮れ始め、

 昼間燦然(さんぜん)と輝いていた太陽と得って代わり、

 空には綺麗な月が昇っていた。

 

 夜間の行動は危険と判断し、僕らは野宿することにした。こんな何もない場所で野宿する方が危険じゃないかと思ったが。ウサギを狩る最中、空き家を見つけたらしい。こんな平原に家を建てるなんて、余程の物好きだったんだな。


 今現在、僕らはその空き家に向かっている。



「こんな何もない平原で、

 よく家なんか建てたもんだね」

「多分だが、元は狩人たちの詰め所だったんだろう。

 中に必要最低限の毛布等が置いてあった」



 毛布か。夜は冷え込むかもしれないし、寒さから身を守る為にもあった方がいい。そうこうしている内に、例の空き家が見えてきた。



「あれだ」

「え、嘘…………」



 空き家と言うか、家と言うには(いささ)か無理がある。屋根は無く、元は外壁だったであろうそれは朽ち果て見る影も無くなっていた。辛うじて家の面影が残っていると言う状況だ。

 殺風景な景色にポツンとあるそれは、

 過去に悲惨な出来事があったと窺える。

 


「ほ、本当にここで、一夜を過ごすの?」

「そうだ。何もないよりはましだろう」

「…………ジークって、本当に騎士?」

「なんだ藪から棒に…………」

「だって、騎士っぽくないと言うか。

 貴族って野宿とか嫌うでしょ? 

 なのに、ジークは妙にこう言った状況に馴れていて、

 落ち着いてるし。それに、騎士特有の堅苦しい性格でもないからさ」

「俺は、歴とした騎士だ。まぁ、元は平民だがな」



 ジークが頬をかきながら言う。



「平民からでも騎士になれるの?」

「ああ、国軍の兵士に志願し数多くの武功をあげ、

 品位を国王様に示し騎士に相応しいと認めて貰う。

 それが、唯一の方法だ」



 武功をあげるか…………。妥当な方法だな。

 力無き者に騎士は務まらない。実力主義ってやつだ。

 


「もう一つ聞いてもいい?」

「なんだ?」

「ジークは、騎士になる前は何をしていたの?」

「親父と狩人(ハンター)をしていた」



 道理で、野ウサギを食べたり野宿することに抵抗が無いわけだ。

 納得した。



「ほら、話しはここまで。

 今日はもう寝るぞ。そして、

 明日、夜明けと共にここを出立し、

 日暮れまでには『ノルンの町』に到着するぞ」

「はぁい、僕もう疲れた。おやすみぃ…………」



 ああだ、こうだ文句を言う気力すら無くなり今は眠気が襲い来ていた。気を抜けば重い目蓋が降りてくる。無駄に抗うと疲れて来るから、僕は素直に寝ることにした。

 使い古された毛布を被り、

 僕は夢の世界へダイブした。

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