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異世界革命の戦乙女~ヴァルキリー~  作者: 北斎 侑紀
第一章 湖の女神
2/6

「ううぅ…………っ」



 こんなことがあって良いのか。

 ある日、唐突に異世界へ飛ばされ更に性別が女になっていたなんて。

 なんの冗談だよ、これ。夢なら覚めてくれ!! お願いします神様、五円あげるから男に戻して!!



「ど、どうした? 大丈夫か?」



 ピクリとも動かない僕を心配して、

 ジークが顔を覗き込んできた。

 


「う、うん…………大丈夫」



 錯乱する脳を落ち着かせる為め、

 大きく深呼吸をした。

 空気が肺を通り、脳へ必要な養分を送っていく。落ち着きを取り戻し思考がクリアになった。

 まずは現状把握と、自分の身体に目線を落とした。元々、体格は大きい方ではなかったが今は着ていた服が少しブカブカになっている。その服の襟首から柔らかそうな膨らみが見えた。

 試しに、掴んでみるとーー低反発な柔らかい感触が掌に伝わった。


 続いて、もっとも重要な部分を確かめる。ゆっくりと着実にそこへと手を伸ばす。触れたそこには在るべき物が存在していなかった。十七年間連れ添った相棒が行方不明になっていたのだ。

 改めて確認すると、

 言い知れぬ喪失感に苛まれた。


 

「ううぅ…………、

 この現実を受け入れるしか無いのか」

「何だか知らないが、元気だせよ」



 ジークの優しい言葉が身に染みる。



「ありがとう、ジーク。

 何か色々吹っ切れたよ」

「そ、そうか。じゃあ、さっきの質問に戻るが。

 サオトメは何故こんな森の中にいるんだ?

 見た目からして狩人(ハンター)でも(ウッドクラフト)でも無さそうだし」

「うーん、自分でも分からないんだ。

 気が付いたら森の中に居たんだ」



 事の経緯を事細かく説明する。と言っても、僕自信理解しきってないので分かってる事を説明した。

 僕が異世界の人間で、家を出たらこの森の中に居たことすべて話した。

 


「なるほど、サオトメは所謂、

 “異世界人”と言う奴だな?」

「うん、まあそう言うこと」

「なるほどな、サオトメ、君が異世界人と言うことはわかったが、

 この先どうする? 元の世界に帰る宛はあるのか?

 俺は自国に戻るが…………なんなら一緒に来るか?」

「え、良いの?」

「ああ、助けて貰った礼だ。ここで、恩人を見捨てては騎士の名が廃る。

 それに、サオトメが元の世界に帰る術が見つかるかも知れないしな」



 これぞ渡りに船。ジークの申し出に僕は喜んで乗っかった。宛もなく森の中をさ迷い歩く羽目にならずに済む。それに、この世界がどう言った世界なのか知るためにもジークの国に向かうべきだ。

 話も纏まり、僕とジークはヘリック共和国に向け森を抜ける事にした。道中、ジークがこの世界の事について少し説明してくれた。

 

 この世界には、六つの大陸があり。今僕達は六つの大陸の一つコウラリア大陸に居るそうだ。

 コウラリア大陸には、二つの大きな国がありそれぞれが世界の半分を掌握している。一つがジークが属している『ヘリック共和国』、そして、もう一つが『ガガリア帝国』だ。

 その傘下には、他の大陸に存在する国々が入っている。

 二つの大国は傘下の国々を引き連れ、

 かれこれ九九年間争いあっていた。今年がこの戦争の百年目だそうだ。

 よくもまぁ、長い間歪み合ってるものだ。百年も経てば、妬み嫉みも薄れるだろうに。巻き込まれる国民も災難だな。

 

 この戦争の発端、それは些細な事だった。

 二つの大国は、もともと友好国であり共に発展した国だった。しかし、ある日、ヘリック共和国の王女リリアンがガガリア帝国へ友好の証にと第一皇子ディルムの元へ嫁いだ。政略結婚ともあり始め二人の仲はあまり良いものでは無かった。だが、次第にリリアンとディルムは心を通わせ国一番のおしどり夫婦となる。そんな二人の間に皇子が誕生した。国中大層喜び、連日連夜のお祭り騒ぎが一週間続いた。


 十数年の時が過ぎ、皇子は立派に成長し成人の時を迎えた。そして、この日、ガガリア帝国の皇帝ディルムは決断を迫られていた。

 ガガリア帝国の皇帝ディルムには、リリアンとの間にもうけた皇子ーージョゼルとは他に、時を同じくして妾のアンナとも子ーーべディアをもうけていた。

 ジョゼルとべディア。どちらを次期皇帝にするか。

 この事案にリリアンの祖国ヘリック共和国がジョゼルを皇帝にと介入する。この出来事が切っ掛けでこの戦争が勃発したらしい。

 戦争が始まる前にも色々と小競り合いがあったみたいだけど、

 主な理由は次期皇帝の座を巡った争いだ。


 世界は違えども、権力争いは変わらないな。

 そう言った小競り合いで滅んだ国は僕のいた世界でも、

 幾つかあった。でも、

 ここまで百年前の後継者争いを続ける国はなかった。


 なまじ尾が引きすぎると、和解と言うのも無理な話か。今日まで争っていた相手、それも百年間もだ。中々和解出来るもんじゃない。ノーサイドとは行かないよな。



「そろそろ、森を抜けるぞ」



 話に夢中になってて、

 いつの間にか森の出口に差し掛かっていた。

 森を抜け、真っ直ぐ突き進む。

 見渡す限り、何もない。峡谷に差し掛かった所で、

 緑が少なくなり土色の地面が露になった。

 谷沿いの細い道を歩く。ふと、谷を覗くと、

 谷底に集落らしき建物群が見えた。

 簡略な構造で屋根が藁で出来ている。あんな藁の屋根で雨露を凌げるのだろうか?

 だが、そこにはしっかりと人の営みを遠目からでも感じることが出来た。

 家から聳え立つ煙突から、煙が出ている。それは、

 人が住んでいる証しだ。



「ん? どうした?」

「え、いや、谷底に集落があったから覗いてたの」

「ああ、ルビット族の集落か」 

「ルビット族?」

「ルビット族ってのは、

 古来から精霊との対話を得意とする種族だ。

 だから、精霊が多く住む自然界を好む。故に、

 ルビット族は人があまり寄り付かない森林の奥地やあの谷底のような場所に集落を作るんだ」



 へぇ、神秘的な種族なんだな。

 でも、そう言う種族ならさぞ閉鎖的なんだろうな。

 

 しっかし…………、精霊かぁ。いるんだな、精霊。まぁ、この世界は僕の常識を遥かに逸脱している世界だし、精霊ぐらいいてもおかしくないか。ドラゴンだって居たんだし。



「サオトメ、興味が湧いたとしても奴等の集落には近寄ろうとするなよ。奴等は精霊に対してはかなり友好的だが、大の人族嫌いだ。近付こうものなら瞬く間に八つ裂きされるぞ」

「ヒィィ!?」



 恐ろしい。閉鎖的であり尚且つ人族にはかなり攻撃的と。僕はてっきりエルフのような存在かと思ってたけど、危ない種族だったとは。



「他にもそう言った種族っているの?」

「いや、そうはいない。が、人族をよく思っていない種族は少なくはないだろう。表向き友好的していたとしても心の中では、恨み骨髄だろうさ。

 人族が奴等にしてきた行いを考えれば、別段おかしな事はない」


 なんだろ、人族が他の種族に何をしたのか気になるけど何故か聞いてはいけない気がする。

 渓谷を抜け、やっと歩きやすい足場となった。もう、

 かれこれ六時間歩いてる気がする。流石に空腹も限界で目の前がグラグラと揺らぎ始めた。

 

 グゥーーッ、ギュルルルルッ。


 腹の虫が抗議の声をあげる。



「そろそろ、飯にするか?」

「ご飯!!」



 ジークの「飯」と言うワードに、少しだけやる気がみなぎった。空腹の限界で、地面に落ちてる石がおにぎりに見えてしまう程僕は追い詰められていた。

 何せ、朝からなにも食べて無かったんだから…………。


 ジークは、「ここで待ってろ」と言い残し、

 物凄い速さで何処かへ行ってしまった。

 残された僕は、座るのに丁度いい岩に腰かけた。

 待つこと数十分。

 ジークが手に何かを持ち帰ってきた。


 それは、黒い何かだった。長い耳に丸みを帯びたフォルム。そして、赤い瞳。



「…………って、ウサギィィィィ!?」


 

 嘘でしょ。ウサギ食べるとか勘弁してください…………。

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