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第六話―深雪―

―深雪―

雪の美称。

深く積もった雪。深雪。


目が覚めた。

カーテンを開けると外は白銀の世界になっていた。

すぐに付けたテレビのニュースでは数年ぶりの大雪と告げていた。そして、数年ぶりのホワイトクリスマスだと…

「雪か…」

そう発して俺は深く考えた。

雪…

今、窓の外で降っているもの…

違う…

「何だ…」

深く考えるものの、ぽっかりと穴が開いてしまったかのように思い出す事が出来ない。

台所に向かうとそこには朝食が置いてあった。

誰が準備したかなんて分からない。しかし、思い出す事の出来ない"あの少女"が作っておいた物という事は理解できた。

台所の片隅には小さな植物が置かれていた。


俺は朝食をテーブルに運ぶと、一人で食べ始めた。なぜか一人の食事はとても久しぶりのもので、寂しさまでも感じてしまった。

「ごちそうさまでした。」

そして、俺は知らず知らずのうちに呟いていた。

「美味しかったぞ。」

俺は立ち上がり、後片付けを終えると着替え始めた。その時、棚にある写真立てが目に入った。その写真立ての中では二人が俺に笑みを向けていた。俺は倒そうと手を伸ばした。しかし、伸ばしかけた手を途中で止めた。その手に触れたのは白い一枚の羽根だった。

「あれ…何で羽根が…?」

その羽根は俺を不思議と温かい気持ちにさせてくれた。

「…え!?」

何故か俺の頬は濡れていた。

俺の目から溢れ出した物は頬を流れ、顎の先から滴り落ちていった。

「何でだ……」

俺の呟きは窓の外の白い雪の世界にへと消えていった。

「動かなきゃ……」

俺は目を軽く擦ると、顔を洗いに向かった。

顔を洗った後、鏡の向こうでは俺が俺自身を見つめていた。

俺はそのまま身支度を整えた。

いつものジャケットを羽織り、畳まれて置いてあった白いマフラーを首に巻いた。

引き出しの中にしまわれていた腕時計を取り出した。

あの時から止まっていた俺の中の時は動き始めたのか…

いや、まだ動いていない。この腕時計を俺の手首に巻いたからといって、動き始める事はないだろう。

俺は昔の俺から少しも成長してないんだから…

―変わってますよ―


―私はずっと見てきた訳じゃないけど多分変わって、優しくなって、強くなって、温かくなって、かっこよくなってますよ―


―だって…今、私がそう思ってますもん―


―それじゃダメですか?―


「そうだったな…少しは変わってるかな…今の俺なら彼女に会えるかな…」

窓の外の君に尋ねてみたが言葉は帰って来なかった。

そんな時、俺はマフラーの下に置かれていた手紙を見つけた。

震える手で便箋を開いた。

便箋の中からは一枚の手紙が出てきた。



こんにちは

何か手紙ってちょっと照れくさいです・・・・

もうあなたは私の事を覚えていないかもしれませんが、あなたは私に色々な思い出を残してくれました

私はあなたには私といた記憶も残せません

だから、このマフラーと私の一部・・・・神様の翼の一部を残しておきます


あなたはあなたが後悔してる程、冷たい人間ではないですよ

あなたの優しさ、温もりは今でも私の中でずっと、ずっと残っていてくれます

もう後悔しないで下さい

もう迷わないで下さい

もう悩まないで下さい

あなたは彼女にとって今も大切な人のはずです

しっかりと隣にいてあげて下さい


短い間でしたが、本当にありがとうございます


12/25 Merry Christmas....

あなたと彼女が幸せになりますように....

神様の翼より


俺はすぐに家を飛び出した。

震える程寒かった。もう冬の夜が訪れていた。まだ雪は降っていた。

寒くないと言ったら嘘になる。けれども、優しく誰かが俺を包み込んでくれているような物があった。


俺は約束の場所にたどり着いた。

周りは煌びやかな電飾、愉快なクリスマスソングが流れ、たくさんの恋人達が幸せな一時を過ごしてあた。

「はぁ…はぁ…」

荒い呼吸を整えながら周りを見回す。しかし、俺は視界に彼女の姿を捉える事は出来なかった。

(やっぱり…いる訳ないよな…)

溜め息を一つついた時、後ろから声がした。

俺は急いで振り向いた。しかし、そこに彼女の姿は無く、別の待ち合わせをしていた一組の恋人達が巡りあえたらようだった。

「くそっ…」

自分自身が悪い事くらいは分かっている。こんな約束だって破られて当然って事も分かっている。

彼女は来る訳がないんだ…


白い雪が舞う中


約束の時計台の下に一人


満月が一つの影を照らし出す


「はぁ…来る訳ないよな…

結局、俺が悪い訳だし、あの約束だってなきっと覚えてないだろうし…」

俺は腕時計を見た。時計の針は両方共12の数字の近くだった。体はとうの昔に冷え切っていた。肩の部分には雪が少し積もりかけていた。

夜になり、雪は更に激しさを増していた。

(もう帰ろうか…)

一瞬そんな考えも浮かぶ。しかし、俺は動かなかった。贖罪のつもりかもしれない、独りよがりな考えかもしれない。けど、それでも俺はここで彼女を待つしかなかった。

せめて、今日という日の間は…


街は電飾も少しずつ消え、静まり返り、恋人達も少しずつ減っていく。

「くそっ…あの時…もう少し俺が大人だったら…もう少し俺が成長していたら…もう少し…もう少し…」

今まで降り注いでいた雪が急に止んだ。

いや、正確には俺の周りだけ止んだ。

俺の頭上には赤い傘があった。


彼女がいつも使用していた傘…

大切な人のお気に入りの傘…

昔、俺が彼女にあげた傘…


「間に合ったー…はぁ…はぁ…まだ12時過ぎてないからまだクリスマスよね?だからセーフで大丈夫よね?

ごめんなさい…遅くなってごめんなさい…

でも傘も差さないでこんな雪の中にいたら風邪ひいちゃうわよ?」


俺は振り返る。そこには昔から見ていた笑顔、大好きだった笑顔、優しさが満ち溢れていた笑顔があった。

「さ…桜…?」

「あら?恋人の顔も忘れちゃったの?」

彼女が少し怒ったように頬を膨らます。俺の頭の中で思考が止まった音がした。

「恋人…?お、俺…が?」

「こないだの事は許してあげる。」

「こないだ?」

「私、ちょっと時間が止まってたみたい。やっと動き出したのよ。あなたもそうでしょ?」

彼女がウィンクをする。俺の思考回路はまだしっかりと作動しない。

「え?あ?う…うん…」

「今度はもう離さないでね。」

彼女が俺に手を差しのばす。

「俺…俺ずっと後悔してた…

まだガキだけど、まだ大人に多分なれてないけど…それでも、もう迷わないよ…

桜をずっと、ずっと見続ける。」


彼女は笑顔でこう答えた。


「ありがとう…冬馬…」



『神様の翼が舞う日』をここまで読んでいただきありがとうございます

これが最終話です

とりあえず一言言わせて下さい…


終わったー


いや、本当に長かったです

正直、二回程間に合わない事覚悟しました

正直、何回も諦めかけました

それでも、それでも何とか終わらせる事が出来ました

色々な小説を書いていますが、よくよく考えると最終話は初めてです(放棄したんではなく、まだ執筆中ですよー

本当に今、感無量です

今回は色々な事に挑戦してみました

今まで以上に"日本語"について考えましたし、前書きと後書きを抜いたのもそうですし、もちろん小説の内容も考えました(その結果が主人公の名前が最後の最後まで出てこないとこと主人公の彼女の名前が出てこないとこです


本当にここまで読んでいただきありがとうございます

本当はもっともっとお話ししたいのですが12/26になってしまいそうなのでここで終わらせる事とします

本当にありがとうございます


最後に…


Merry Christmas


2007.12.15 23:59


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