表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

借景

作者: 兄連

 一匹のコリー犬が芝の上を勢いよく駆け上がっていく。若い女の飼い主がはずした遣り縄を手に後を追っていく。


 「ラッキー!ラッキー!」

 アパートのベランダから男が叫ぶ。男は幼い女の子を両腕で抱えている。

 低い丘の中腹に整備された小さな公園。この近隣の犬の散歩コースとなっている。犬同士の衝突を避けようとしているうちに、飼い主たちは相談するともなく、それぞれの時間になるとやってくる。

軽量鉄骨のアパートが丘を背に建っている。男はその二階のベランダにいた。

 「パパ、あのワンワンの名前、ラッキーって云うの?」

 女の子はびっくりした顔して尋ねた。

 「そうだよ」

 「でも、どうして知っているの?今日ここに来たのに?」

 「洋子は頭がいいな。実はね、預けてるんだよ」

 「えー、じゃ家のワンワンなの」

 「そうだよ。でもアパートじゃ飼えないからずっと預けているんだよ」

 「だから、ここに来たんだ。撫ぜ撫ぜしに行きたい!」

 「ごめんね。それは駄目なんだよ。あのオネエさんとの約束なんだよ」

 「つまんないの」

 「でも、いないよりいいだろう。ラッキー!」


 「ゴン、行くわよ」

 若い女は怪訝な顔をして遊び足りなそうな犬に遣り縄をかけて公園を出て行く。


 「つまんないの」

 女の子は残念そうにつぶやく。

 「また、来るさ。ほら、あれは豆ちゃんだ」

 「豆ちゃん?」

 パグを連れた親子連れがちょうどコリー犬とすれ違うように公園に入ってくるところだった。

 「豆ちゃん!」

 男と女の子の声が響く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ