二つの力の有効利用
俺が考えた『金稼ぎ』の方法。
「さぁさぁお立会い!!この世のものとは思えない、奇術をご覧にいれましょう!」
いわゆる、大道芸だ。
「まずはあちらをご覧あれ!渦高くつまれた椅子柱!さぁさ、目を見開いて、しっかり見届けて下さいな!!」
そういった瞬間、コウは雷獣の力を発揮し、一瞬で椅子の天辺に座ってみせる。
観客にはトリックなんて分かるはずもなく、しかしトリックの使いようのない移動手段にただただ驚くばかりだった。
「さぁ、ご覧に入れなさいませ!」
コウはその場を縦横無尽に飛び回る。
幸い、目立つ格好をしているために、人の集まりも上々だった。
「以上の奇術、お気に召された御仁は、この帽子にどうか恵みを!!」
華麗にシルクハットを取り、紳士のようにお辞儀をする。
辺りからは歓声と一緒に硬貨がバラバラと飛んできた。
「ま、これで今日明日くらいは食えるかな」
「ケイ!テメェ、もうぜってー俺やんないからな!!」
「いいじゃないか。結構調子乗ってたろう?」
「良くねぇ!全然良くねぇ!!これかなり恥ずかしいし、体力使うんだからな!」
しかし、コレで何時までも稼いでいけるわけではない。
もしトリックが公開されてコウがどこかの研究所につれていかれるのも真っ平御免だ。
「さて、次はどうやって稼ごうか……」
「なぁなぁ、さっきからお前、適等に歩いてるけど……ここ、どこ?」
「……お?」
「ケイ、変なところで抜けてるよなぁ……」
何時の間にか、裏路地に入ってしまったらしい。
大通りたは違い、道路は汚く怪しい店が多い。
娼婦宿、闇医者、酒場……。
……酒場?
「いいことを考えた。良かったなコウ。お前はしばらく静かにしているだけでいいぞ」
「……何する気?」
「頭を使ったゲームは得意なんだ」
「コール、キングの4カードだ。コレならお前でも勝てねぇだろ?」
「残念、こっちも4カードだ。……エースのな」
酒場といったら賭け事。
カードゲームで負けた記憶はない。
よく屋敷内の色々な者と対戦してきたが、まるで相手になる奴が居なかった。
「ケイ、異様に強くない?イカサマ?」
「失礼なこと言うな。実力だよ」
全て実力。
カードを読み、相手を読み、賭け金に注意を払う。
しかし、相手が弱すぎる。
こっちがイカサマをしても全く気がつかない。
ちなみに俺の自論は『イカサマも実力のうち』。
見抜けない相手が悪い。
コウにイカサマということがバレたら、きっとうるさく騒ぎ出すから隠しておこう。
「もう一回!!次は必ず勝つ!!」
「もうお開きだ。またたまには顔を出すさ」
しばらく食べていけるだけの金は手に入った。
コレが一番手っ取り早いのかも知れない。
「コウ、出るぞ」
「お、おぅ」
店からコウを連れ出す。
まだぽかんと間抜け面で僕を見ている。
しばらくはコレで食べて行けそうだ。
ただ問題もある。
「さて、一つ問題が有る」
「何だよ」
「そろそろ俺を探して追手が迫ってきている頃だろう」
そう、俺を探している筈の、心配性の両親。
さて、彼等をどう撒こうか。