洞穴で金の算段
「で、城を出てきたは良いけど……」
「ん?」
「……どうすればいいんだろうな。こんな山の中で」
「はっはっは。結果オーライってことで良いだろ」
「言い訳あるか馬鹿」
城は木が鬱蒼と茂る山の中に建っていたのだ。
しかも雷が鳴るような豪雨の中。
非常に危険だ。
何時辺りの木に雷が落ちるとも分からない。
これで死ねれば本望だと、先ほどまでは思っていたわけだから、俺としては構わないのだが。
「きっとコウが怒るんだろうな……」
「あ?何か言ったか?」
「別に。何も」
何となくコウの行動が分かってしまう。
途轍もなく分かりやすくて、真っ直ぐな奴。
そんな奴だから、少しくらい一緒に居ても良いかもしれない、って思えた。
きっと嘘とか付けなくて、いくら自分が損をしても、皆から愛されてるような性格なのだろう。
ほんの少し、相手の話を聞いて、ほんの少し、自分の話をした。
それだけ。
たったそれだけなのに、何故こうまで馴れ合えるのか。
自分でも不思議な程だ。
「とりあえず……お、岩陰はっけーん!あそこで休もうぜ」
「あぁ」
コウが目ざとくちょっとした岩陰を発見したおかげで、今日は野宿が出来そうだ。
中はそれなりに広く、ちょっとした洞穴のようになっていた。
時折、激しい雷の音を聞きながら、俺たちはこれからの事を話し合った。
「これから……どうする?」
「そういえばケイってさ。高校生くらいだろ?高校行かなくて良いのかよ」
「あのな、俺は頭が良いから、高校なんて必要ないの」
「うっわ。自慢かよ」
「自慢だよ」
「さいてー」
実際、城にこもって何をしてたかと言うと、もっぱら勉強。
大学レベルなんて日常で、実を言うと科学の分野なら博士号を持ってたりする。
頭に入ってる知識としては、勉強のことばかり。
流行の歌も、面白いテレビゲームも、楽しい遊びも、何も知らない。
本当は、もっと遊びたかった。
周りの同じ年の子が、遊んでいる間も、ずっと部屋から出してなんかもらえなかった。
今では、それもかなわない願いだ。
無一文で飛び出してきてしまったため、手元には一銭もない。
遊びたい、楽しいことをしたいのはやまやまだが、とりあえずは食いぶちくらいは稼がなくてはならないだろう。
「とは言ったものの……。そんなにすぐにどこかに就職できるわけでもないし……」
「……」
「ケイ?」
「……お前、人前に出るのは好きか?」
「はぁ?」
「目立つのは好きかって聞いてるんだ」
「まぁ、嫌いじゃないな」
「ならいい。明日一日くらいの食費くらいは稼げるだろ。幸い、お前も目立つ格好そしているんだしな」
「……はぁ……」
「実行は明日。明日が楽しみだ」
こいつにしか出来なくて、手っ取り早い商売を見つけた。
これでまぁ、最低でも明日の食料には困らなそうだ。
上手くいけば、しばらく食っていける。
これでもう、あんな部屋に戻らなくていいんだ。
部屋で、膝を抱えなくてもいいんだ。